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第17話(8)

「ちゃんと説明しろ!俺のこと嫌になったならちゃんと言えよ!」  勢いのまままた襟元を掴んでしまうと創介はダランと腕の力を抜いた。 「……お前キスしたの覚えてる?」 「は?」 「今日の飲み会でキスしただろ?」  ……キス?飲み会で?え!?俺、やっちまったのか!? 「……みんなの前……で?」  俺の声が震える。  首を振る創介を見てホッとはするがその険しい顔を見て俺も手を降ろして床に座った。 「ビール零しまくったからトイレ連れて行こうとして廊下で。……でも、莉音先輩と大和先輩に見られた」 「え……?」  一瞬頭が真っ白になる。  莉音先輩はびっくりしたかもしれないけど、俺たちが付き合っているのは知っているし……そもそも色々やられてるって付き合う前も相談していたから大丈夫だろう。  でも、大和先輩は?  莉音先輩がキスしちゃって拒絶されたって言っていた。  男同士には抵抗があったんじゃないか?  立ち上がって創介がキッチンに消える。  混乱してうまく頭が回らない俺はとにかくパニックを落ち着けようと何度も息を吐き出した。 「ほら、水」  ガラステーブルを挟んで創介が腰を降ろしたのを見て俺もそっとグラスに触れる。いつものレモン水のはずなのに全然スッキリしない。

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