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第20話(6)
「先輩は?どんなのが買いたいですか?」
「どんなって……大和甘いのダメだし」
ちょっとシュンとした莉音先輩を俺は思わず抱き締める。
うっわぁ……かわいっ!大和先輩、ずっりぃ。
しっかり力を入れていた俺は周りの女の子たちの好奇の目を感じてハッと冷静になって莉音先輩を離した。
でも、先輩のかわいさを目の当たりにしてちょっと不安にもなる。俺なんてそんなかわいらしさなんて皆無だから。
創介……本当に俺でいいのか?
1人で落ち込んでいると、トントンと肩を叩かれた。
「この時期に男の子が来てくれるなんて珍しいね?何をお探しかな?」
真っ黒なコックコート。見たことのあるその顔は雑誌でも取り上げられていたこの店のショコラティエだ。
うわっと軽くミーハー心は出たが色々視線に耐えられないのもある。
「甘めの、でも、他にはない遊び心あるのがよくて……先輩は?」
人酔いでもしていそうな莉音先輩を見下ろすと
「甘くないチョコ……」
ぽつりと呟いてギュッと俺の袖を握った。
くっそかわいいけど!?
微笑むショコラティエに贅沢にもアドバイスをもらって無事にチョコをゲットした俺たちは色んな意味でドキドキしながら大学に戻った。
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