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第23話「どうしてる?」

 週明け、来年度の映画制作のためにいつもの動画を編集するパソコン室とは違う教室に近いフリーのスペースでキーボードを打っていると、隣に人が座る気配があった。  特に資料を広げてはいないが一応ノートとスマホをコンパクトにすると、その人はトンとそこにミルクチョコの箱を置く。 「あ、莉音先輩!」  不思議に思って顔を向けると、笑っている莉音先輩がヒラヒラと手を振った。 「先輩はレポートですか?」 「ゼミのやつがあって今のうちに直して出しちゃおうと思って」  パソコンを立ち上げている先輩を見てチョコを見ると、なぜかこの前口移ししていたそれをリアルに思い出してニヤけてしまう。 「え、何だよ」  眉をひそめる先輩にイスを近づけてチョコを突付くと、先輩は首を傾げた。 「ああやって食べたら、もう普通に戻れなくないですか?」 「バッ!!これはそういうつもりじゃっ!!」  耳まで真っ赤になって慌てる先輩がかわいい。  でも、創介は俺でいいって言う訳だし、そこはもう気にしないようにしようとは思うけど……やっぱりこうなりたいとも思ってしまう。  あーぁ、サラッとスマートにこなすイケメン目指してたのに、どうしちゃったかねぇ。俺。

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