169 / 203
第23話(6)
肩を叩きつつ抱き起こすと大和先輩は莉音先輩にペットボトルを渡してゆっくり飲ませた。背中をさすって頭をくしゃっと撫でるとさっさとトレーも片付ける。
何となくその光景が羨ましい。
「悪いな。世話かけて」
大和先輩は莉音先輩のリュックも肩にかけて立たせると俺のトレーまで持った。
「あ、それは自分で……」
「ついでだし。気にするな」
大和先輩がそのまま歩き出すと、莉音先輩は引きつりつつ笑って手を振る。
俺も手を振り返すと、急に寂しくなって何もなくなった机に両手を伸ばして顎を付けた。
「いいなぁ……」
まだ見える2人の後ろ姿を見て呟く。
「何が?」
不意に頭の上に何かを置かれて起き上がると、通路には創介が居た。
「あ、おかえり」
頭に乗せられたペットボトルに手を伸ばすと創介はポケットからスマホを取り出す。
水滴だらけのペットボトルを見て頭を気にしつつ、フタを開けるとプシッと音がして炭酸が抜けていく。
一気に飲めないし、こんなん温くなったら不味くないか?とフタを閉めようとすると、創介は俺の手からペットボトルを持っていってそのまま口をつけた。
動く喉元を見るだけで何かドキッとする。
「お前、本当ズルいよなぁ」
「は?だから、何が?」
俺ばっかりドキドキさせられている気がしてその脇腹に拳を入れてやった。
ともだちにシェアしよう!