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第25話「現実」
ため息ばかり吐いている後ろ姿を見つけてパッと後ろから両手でその目を隠してみた。
「え!?何っ!?」
慌てる莉音先輩を見て笑いが止まらない。
「ちょっ!!誰!?」
不安そうな声を聞いてさすがに手を離すと、
「雄吾かよー。マジでやめろ」
莉音先輩はちょっと目を細めつつホッとしたように息を吐いた。
「いや、めっちゃ深刻な顔してたんで……そんな難しいことしてるんですか?」
「いや……レポートとかも全部終わって俺としてはもう何もないんだけど……」
「え!?大和先輩が何か単位マズいんですか!?」
「あいつは忙しそうだけど……大丈夫だろ。頭ムカつくくらいいいし」
「じゃあ……あぁ!エロの悩み?」
ニヤニヤしてしまうが、莉音先輩が否定をしない。
「あ、ガチでした?」
少し軽く言いながら隣のイスに座ると、莉音先輩はギュッと膝の辺りで手を握ったまま黙り込んだ。
「莉音先輩?」
顔を覗き込むと、先輩はちょっとだけ顔を上げる。
「俺、春休み中、結構レッスン持つからほぼ家なんだよ」
「はぁ。4月から4年ですもんね。就活行ったりしてる先輩もかなり居ますしねぇ」
「……大和が一人暮らしするって」
「え!いいじゃないですか!てか、一緒に住んじゃえば……」
言いかけて俺はゆっくり口を閉じた。
莉音先輩の眉がかなり寄っている。
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