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第25話(2)
「大和にも一緒に住もうって言われたけど……俺、実家が仕事場で将来的にも継ぐつもりでいるのにわざわざ家出るって……おかしくねぇかなって?」
「そうですかね?」
トートバッグを降ろしてゆっくりイスに凭れ掛かると莉音先輩はやっとちゃんと顔を上げた。
「俺の実家って酒屋って言いましたっけ?」
フルフルと首を横に振る莉音先輩を見て微笑む。
「まぁ、酒屋って言ってもうちは製造はしてなくて販売してるだけですけどね」
「そこ……継ぐのか?」
「うーん……俺としては今、高2の弟が居るんでそっちがいいと思うんですけど……父さんは継いで欲しそうでしたねぇ」
正月、実は父さんと少し話したのを思い出した。
父さんは俺に店を任せて、勝に仕入れとか営業を……と考えているみたいだったから。
「雄吾は継ぎたくないのか?」
大きな目でじっと見られてちょっと戸惑う。
「正直、わかんないですねぇ。俺、酒弱いし」
笑って誤魔化すと、莉音先輩も少しだけ笑った。
「……うちは|海音《みお》……あ、俺の姉な!海音が結婚して家を出てるし、もうすぐ赤ちゃん産まれるからさ……俺しか居ないんだよな」
莉音先輩は呟いて机に肘を付きながら顎を乗せる。
先輩の吐いたため息は何か少しずつ俺たちの周りに溜まっていくようだった。
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