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第25話(3)

 帰りながらどんどん目視さえできない謎の不安に絡め取られている気がして俺は自転車を引きながら歩く。  将来……大学だって特に考えもなく決めてしまった俺がそんなこと考えている訳もない。  本屋のバイトだって本が好きってだけの理由だし。  アパートに着くと、俺はのそのそと階段を上がる。  リビングのドアを開けて歩いていた俺はドンとぶつかって止まった。 「どうしたんだよ」  言われてやっとハッとする。 「おかえりって言ってるのに反応ねぇし、そのまま突っ込んでくるし」  じっと見られてため息を吐くと、創介は俺の前髪をくしゃっとした。  チュッと軽くキスをされてラグに座らされる。 「で?お前が考えたところでどうせ答え出ねぇんだから言ったら?」  前髪を掻き上げられて目をしっかり見つめられて、俺はそっと創介に手を伸ばして抱きついた。 「……将来ってどうなるんだろうな?」 「将来?」 「俺あんま考えてなくて……今日莉音先輩と話して……」  ぎゅっと力を込めると、創介はゆっくり俺の背中を撫でてくる。 「大和先輩と住むって話か?」 「知ってんのか?」 「大和先輩からずっと相談受けてたし」 「お前、大和先輩と仲いいよな」 「お前に言われたくねぇわ」  俺の鼻をつまんで創介はラグに足を投げ出した。

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