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第25話(4)

「ちょい、こっちにちゃんと座れ」  トントンとラグを叩いて場所だけ示して創介は立ち上がる。  すぐに戻ってきた創介はテーブルにクロスを置いてティーポットを乗せると、カウンターからカチャカチャとカップを下ろした。 「莉音先輩、悩んでた?」 「うん。実家の教室継ぐのは先輩しか居ないし先輩は継ぎたいけど家を出るのはって……」  聞いたのをほぼそのまま伝えると、創介はカップに紅茶を注いでちらっとこっちを見る。 「……何だよ」  創介が何かを言おうとしていることは気づいて聞くと、創介はポットを置いてふんわりと湯気の立っているカップを見つめた。ゆっくり1つを俺の方にくれて自分のカップに両手を添える。 「お前は?将来どう思ってんの?」  真剣な顔。思わずドキッとしながら小さく息を吐いた。 「……正直、わかんない」  莉音先輩の話を聞いて、俺もこれまでほぼ考えてこなかった将来を帰って来る間に考えてみた結果。  これ!というものもなく、でも、実家の酒屋は頭から消えず……もう何を考えていたのかもわからなくなった。 「なぁ、雄吾。……俺とあの酒屋継がね?」  スティックの砂糖に手を伸ばしていた俺は手を中途半端に浮かせたまま創介を見る。  ん?今、何て言った?

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