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War9:Encounter⑦

 デビューを一週間後に控えたDeeperZメンバーが事務所に集まり、デビュー当日に行うデビューイベントの最終的なミーティング。ステージセットやイベントの内容までメンバー自ら意見を出しながら最終的な準備は着々と進んでいた。  「やっぱりデビュー当日はクリスマスだしサンタの格好はしないとじゃない?」  「あ〜いいね!でも普通のじゃつまんないから少しアレンジするとか?」   「あ〜いいね!朋希アイデアある?」  「うーん、、あるちゃある」  オシャレ番長の朋希が画用紙に絵をすらすら描き始める。通常のサンタのコスチュームに少し手を加えてDeeperZ風サンタを一人一人のイメージに合わせたデザインを書き上げる。  みんなそれぞれの特技を活かして自分達のイベントを最高なものにしようとしている。そんなメンバーの姿を見て戸川と那奈は満足そうな顔。  「なんかデビューが近づく度に成長しているような気がするな」  「そうですね、私もそう思います!きっとみんなもデビューへの実感が湧いてきてアイドルとして自覚してきたんじゃないですかね」  「いい事だな」  『すいません、遅れました!ちょっと前の仕事が長びいちゃって』 息を上げながら千遥が部屋に入ってきた。  「あっ大庭さん、お疲れ様です」  『日高さんお疲れ様です。ミーティング進んでますか?』  「はい。順調ですよ」  『デビューもうすぐですもんね』  「いま戸川さんとメンバーみんな成長したねって話してたんですよ」  『確かに。若い時って吸収が早くて羨ましいです。……ん?あれ?奏くん、、は?』  「奏くんは学校なので今日は来ません。今期末テスト中なんですよね」  『あぁなるほど、仕方ないですね』  なぜか部屋に入るなり自然に彼を探していた。よく考えれば高校生だし、時期を考えれば分かる事なのにそのまま声に出してつい聞いてしまっていた。  ミーティングを進めていくと担当のスタイリストが大きなをラックを引きながら入ってくる。ハンガーにかかった二種類の(きらび)やかな衣装が6人分並んでメンバーの目も同じくらい光っていた。  《わっ!衣装だ!》 ステージでデビュー曲を歌う際の大事な衣装。メンバーも初めてみる衣装に興奮気味。駆け寄って自分の名前が書いたハンガーを探して手に取る。  《カッコいい!!》  《めちゃいいじゃん! 》  5人も思わず感嘆の声を出した。そして衣装合わせが始まった。それぞれの自分の衣装に袖を通して鏡の前でチェックする。スタイリストが隣について裾の長さをチェックしたり、軽く動いて踊りにくさはないかなどをチェックしていく。  衣装に身を包んだメンバーは普段とは違うアイドルの自分を鏡の前で知る。衣装はスイッチを入れる大切なアイテムでもある。  「あの〜奏くんの衣装はどうしましょう?」 スタイリストがラックに残った一着を指差して戸川さ言った。  「うーん、、あっそうだ!千遥くんこれ着てみてよ!」  『はっ!?僕がですか?』  「だって千遥くんと奏くん、身長も体型も同じくらいだしピッタリじゃない?」  『いや!それはちょっと……!』  「あーいいですね。大庭さんの衣装姿も見てみたいかも!」  戸川に続いて那奈も追い打ちをかける。 やめてくれ、27歳が17歳のアイドルの衣装なんで着ていい訳ない。ちょっと揶揄(からか)うような口調で含み笑いしてる戸川。  「千遥くん、頼むよ!君なら着れるだろ」  「じゃ、大庭さんお願いしますか?」  『あっはい……』  スタイリストに(うなが)され断りきれなくなった千遥はマネキンのようにじっとしているとテキパキと着せ替えられる。  スタッフ、メンバーみんなでニヤニヤと口角をあげて見ている。これは何かのバツゲームか?いやバツゲームなんて言ったら彼に失礼だけど。  「ほら千遥くんジャストサイズだよ!」  《大庭さんカッコいい!》  「大庭さん似合ってます!」  戸川や那奈、メンバーみんなが口々に褒めるから恥ずかさが増して正面が見れない千遥。  「大庭さんって顔もイケメンだし雰囲気もアイドルっぽいですよねー」  「それ分かる!俺も最初会った時から思ってた!」 光が千遥を上から下まで舐めるように見ながら言うと、凌太もそれに続いて場は大盛り上がり。  『何言ってんの!!もう27歳のおじさんだよ』  「27歳なんてまだ若いじゃないですか」  「今からでもアイドルになったらいいんじゃないですか?」  『もう、大人をからかうんじゃない!』  突然アイドルの衣装を試着なんて、なんだか変な気分だった。もう二度と着ることはないと思ってたアイドルの煌びやかな衣装をこんな形で着る事になるとは。 だけど時間が経つにつれメンバーみんなと冗談を言い合える程、距離が近くなっているのを感じて少し嬉しかった。  「それじゃ全体的な雰囲気を見たいので集まって下さい」 スタイリストのその言葉でメンバーと千遥が真ん中に集まると、少し下がって全体的なバランスを離れて確認しながらスタイリストと戸川がああだこうだと話をしている。  その後ろで那奈はそっとスマホを取り出し写真をパシャっと数枚撮った。5人に挟まれてぎこちなく立ってる千遥を見てクスッと笑いながら。  「じゃもう1つも試着お願いします」

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