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War16:Encounter⑭

 12月24日、街はクリスマスイヴの独特の雰囲気をまとっていた。そんな中デビューを翌日に控えたDeeperZは朝早くからテレビ局へ来ていた。  〈さて今日は明日デビューするグループD eeperZのみんなに来てもらっています!〉  《初めまして!DeeperZです!!》  いくつかの番組に生出演、その後収録。その他雑誌撮影などで一日中、隙間なしのタイトなスケジュールで大忙しの6人。 初めてのグループ全員での番組出演だけあって緊張も垣間(かいま)見えるがそれでも楽しく収録をこなしていた。  〈明日デビューイベントを行うそうですがどんな気持ちですか?〉  スタジオにはクリスマスツリーが飾られ電飾でピカピカ光るその横で番組用衣装でバッチリ合わせた6人が司会者のインタビューに答える。   「そうですね。やっとみんなに僕らを見てもらえるんだなってワクワクしています。」  「いいものを見せたくてたくさん準備したので楽しみにして欲しいですね。僕達のクリスマスプレゼント受け取りに来て下さい!」  《明日会場で会いましょう〜!》  那奈はスタジオ袖で内心ハラハラしながら収録を見ていたがホッと肩を撫で下ろした。デビュー前にも関わらずこんなに出演依頼がある事に注目度の高さを実感した。  不安だった生放送も何事もなく終わり、次は少し移動して違うスタジオで音楽番組のインタビューと歌収録だ。  〈本日はデビュー曲を披露してくれるDeeper Zの皆さんがゲストです!〉  《 よろしくお願いします!》  〈クリスマスにデビューってなんだかロマンチックだよね!〉  「そうなんですよ!僕らも初めて聞いたときそう思いました。忘れないデビューになりそうです!」  〈クリスマスの思い出は何かある?〉  司会者が質問を投げてメンバーが一人一人、クリスマスの思い出や貰ったプレゼントの話を進め盛り上がってる。  〈それじゃ〜アイドルのみんなに禁断の質問をしちゃおう!すばりクリスマスデートはどこ行きたい?〉 「俺は遊園地です。ジェットコースターが好きだから一緒に乗って騒ぎたい!」 「旬は絶叫系が得意だけど、旬はノンストップで乗り続けるから女の子がかわいそううじゃん!」 「僕は雪だるま作りたいです」 「卓士、それは雪がないと出来ないから」 「そっか。じゃ北海道に行きます!」  〈あははっ!みんなそれぞれだね!じゃ奏くんは?〉  「えっと俺は、、お家デートがいいです」  〈ほぉ一番若いのにすごく現実的だねー〉  「家でまったりするのが好きなんです」  〈じゃぁ奏くんの好きなタイプはどんな人なのかな?〉  「それは……年上でちょっとお|節介《せっかい》な人かな。困った人をほっとけなくて、、ちょっと謎めいた人が好きですかね」  〈何それ?ずいぶん具体的だねーもしかしてそうゆう相手がいるとか?〉  「あっいや!いつか出会えたらいいなって思ってます」  少し焦りながらも笑みを浮かべながらしっかりとした口調で答える奏。誰かを思い浮かべながら昨日の出来事がフラッシュバックしていた。  二人は昨日のアレ以降とくに話もしていないし、何もなかったように変わらずお互い仕事をしている。やっぱり頭から離れない、、だけど今は明日の事だけ考えようと奏は気を引き締めた。  それからもいくつかの仕事をこなし今日一日のスケジュールは全て終了した。最後の雑誌撮影スタジオの控え室でやっとメンバーとスタッフ全員がゆっくり出来る時間が出来て私服に着替えてメイクも落とす。  「お疲れ様!みんな今日一日朝から頑張ったね、疲れたでしょ?はいこれ戸川さんからクリスマスケーキの差し入れ」  《わー!美味しそう!》 疲れていてもケーキを見るとそんなもの関係ない。飛びつく勢いでお皿に取り分けたケーキを食していく。さっきまでのアイドル達はどこへやら、すっかり無邪気などこにでもいる10代の男の子の姿に戻っていた。一番早く食べ終わった奏はお皿を置いて外に出ようした。  「あっ、奏くんどこへ?」  「ちょっとトイレへ行ってきます」  控え室を出てトイレまでの間、大きな窓ガラスで見晴らしのいい場所にある撮影スタジオからは東京が一望出来た。クリスマスイヴの夜を祝うように窓から星がくっきりと見えていた。  引き込まれる様に思わず扉を開け広いベランダに出た。"寒っ"上着は控え室に置いたまま、体に冷たい風がビシビシと突き刺さる。だけどそのまま立ち止まって空を見上げた。 星を見つめながら頭に浮かんだのはなぜか"シリウス"と言う言葉。ふとポケットのスマホを取り出して考えた、、、そして意を決したように電話をかける。  "もしもし?"  「千遥さん…?まだ仕事中ですか?」 "うん、そうだよ。どうしたの?" 「いや……何もないんですけどなんか急に電話したくなって」  "何それ?そっちこそ撮影全部終わり?"  「はい、さっき終わってこれから帰ります」  "忙しい一日だったよね、お疲れ様。明日はいよいよデビューだね。きっと人生な大切な忘れられない日になるよ"  「はい、、楽しみです」  "じゃ今日はもう帰ってゆっくり休んで。あっあげた薬ちゃんと塗って寝てね" 「わかりました」  "それじゃ明日会おう。おやすみ"    奏はかじかむ冷たい手で電話を閉じた。奏は色んな意味で明日が楽しみになって"早く明日になって会わせて下さい"とクリスマスイヴにサンタクロースへプレゼントを強請(ねだ)る夜はいつまでも灯りが消えずにいた。  そして明日いよいよDeeperZはデビュー日を迎える。

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