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War18:DeeperZ Debut!②
ステージ横一列に並んだ6人に向けて一気にライトが当たる。暗く静かだった会場内が色づき始めた。ひび割れるような声援が床や壁や天井を跳ねて6人を包み込んでいる。
ゆっくりと歩いて前に出てくる6人の姿に会場にいる全ての視線が向けられて音楽がスタートした。
その様子を戸川と千遥は二階の関係者席からステージを見下ろしていた。
普段接している彼らとは別人のように顔、体、心全てから放たれているものを例える言葉が見つからない。ただじっと夢中に目で追うだけ。
真剣な目線の先にも笑顔の先にも涙の先にもファンがいる事が彼らを幸せする。そしてファンも幸せになる。今日もこの先もずっと。
アイドルとは星のようなもの。
その星を他の星とを繋ぎ合わせて星座にする。そんな役割に自分はいるんだと千遥は僅かながら誇らしく思えた。
サンタさん、プレゼント受けとりました。
「お疲れ様さまー!!」
イベントは大成功で終了しスタッフ全員でステージ袖で拍手で迎えながら、甲高く響く那奈の声の方へ振り向く。汗をキラキラと光らせた終えたばかりのメンバーがステージから降りてきた。完全燃焼した6人は清々 しい表情をしている。
《お疲れ様でした!》
「みんな!すごく良かったよ!最高だ!」
戸川も思わず笑顔で6人に駆け寄って一人ずつ抱きしめた。ある意味このグループの誕生を一番心待ちにしていのは生みの親でもある戸川だろう。事務所のアイドルグループ第一号として温めてきた彼らが世に出た瞬間。
「楽しかったです!」
「めちゃくちゃ最高でした!」
「もう卓士が隣で泣くからつられそうになったよー!」
「泣いてないって!泣きそうなだけ」
やはりメンバーも初めてのステージで感極まるシーンもあった。そして見た事ないDeeperZの新たな魅力に気付いて子どもだと思っていた彼らが大人にすら感じる場面さえも。
『僕も本当に見てて感動したよ!』
「へぇーじゃもしかして大庭さんも泣きました!?」
那奈が茶化すように顔を覗いて涙の確認をしてくると咄嗟に顔を背けた千遥。
『ちょ、、やめて下さいよ!涙はまた別の時までとっておきます』
「あははっ。そうですよね!だってまだ今日がスタートで始まったばかりですからね!」
まだ10代の彼らが背負うものは多いかもしれない。きっとこれから色んな壁にも打ち当たるだろう。だけど今日のステージで彼らなら乗り越えていけると千遥は確信した。そしてその為に自分がやるべき事もたくさんあると。ただ今は終わってホッとしていて疲れた感情を休ませたいと思った。
控え室に戻ってまだホカホカした身体のままみんなの話は尽きない。そして同じように会場外でも興奮冷めやらない様子のファンが集まっていた。
「さっ!今日はクリスマスだしデビュー記念の日という事で事務所に帰ってお祝いだよ」
「はーい!戸川さん、クリスマスプレゼントはありますか??ケーキは?」
「ん?さすが凌太はちゃっかりしてるな。もちろん両方あるぞ」
「やった!!」
「じゃみんな着替えて帰る支度して」
着替えに部屋を出ていくメンバー達。すると奏が千遥の背後にぴたりと寄って耳元で周りに聞こえないくらいの小声で言った。
「千遥さんの泣く姿見てみたかったです」
そう言ってクスッと笑い出て行った奏。
『……なっ、なんだよ』
こんな時にさえ彼にまた調子を狂わされてる。そういつも気がつけば彼のペースで最後まで気が抜けない。だってまだ夜の9時。
クリスマスはまだ終わってない。
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