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War19:DeeperZ Debut!③

 社用バスで事務所に戻るとメンバーとスタッフが全員集まり打ち上げと名のデビュー祝いが始まった。目の前のテーブルにはケーキ、ピザ、チキン、サラダ、ポテト、パン何でも揃っている。  そして聖なる日のシンボル、大きなクリスマスツリーも電飾をキラキラさせお祝いムードだ。   「さぁ、みんなグラス持ったかな!?」  「はい!」  「それでは!!DeeperZデビューおめでとう!!」  「乾杯ーー!!」  グラスがぶつかる音が響いてメンバー6人にスタッフ全員、デビューが決まった日から今日までを|労《ねぎら》うかのように騒いで気持ちも体も解放していた。  「あれ!?千遥くん何でジュース飲んでるの?」  『あっ、いや今日はこれで……』  ジュースを手にピザを食べてる千遥に戸川がニタニタしながら近寄ってきた。  「遠慮しなくていいんだよ。今日は特別な日だから大人はお酒飲んでさ」  『いや、、今日は……』  「えっ!?大庭さんってお酒飲めないんですか?」 凌太が口の中をいっぱいにモゴモゴさせながら聞いた。  『いや飲めるんだけど……』  「それがね、千遥くんは飲めるけど弱くて飲むとすぐどこでも寝ちゃうんだよねー!一度さ路上で寝ちゃってて、たまたま電話したらお巡りさんが出て……」  『ちょっと戸川さん!いや、、その時はたまたまで……いつもはそんな事ないですよ』  「へぇー意外ですね。大庭さんってそんな感じしないけど、その日はそんなに飲んだんですか?」 那奈の質問にみんなが千遥の酒癖に興味津々で聞き入っていた。  「うん、どうやらその日は失恋したらしくて」  『だから戸川さんもうその話はいいですって!』 慌てて話を静止しようとする千遥だが時すでに遅し、酔ってはいないもののお酒の勢いもあり戸川も暴露し始める。  「なんか大庭さんかわいいー♡」  「失恋してやけ酒ってことですかー?」 メンバーみんなも茶化(ちゃか)すように面白がりながら少し顔を赤らめる千遥を攻撃する。  『うるさいよ!10代の坊や達に言われたくない!』    "はははっ"と盛り上がってるテーブルとは対照的にただ一人面白くない様子でジュースを注いでいる奏。さっきまで笑顔で聞けていた話も"失恋"の一言が気が気じゃない。   「なぁ奏……奏?ちょっと聞いてる?」  「えっ、、あっうん?」  「コーラじゃないの?それオレンジだけど」  「あっ……間違えた」  朋希に指摘されて気付いた注ぎ間違えたオレンジをそのまま一気に飲み干し、まだ話が盛り上がっている輪の方へ視線を向けた。  それからしばらく宴会は続きテーブルの料理も空になり始める。お皿をまとめて端に寄せると那奈がスタッフと耳打ちし始め何やら後ろの方でゴソゴソと出し始める。  「はい!それじゃぁこの辺でスタッフからみんなにプレゼントがあるよ。じゃーん!」 用意していた6人へのプレゼントが所狭(ところせま)しと置かれた。期待感を高ぶらかせるように一つずつ同じ大きさの箱に入れられたプレゼント。  「わ〜〜!何だろ〜?」  「じゃ名前言うから一人ずつ受け取って。もらってめすぐ開けないでね」 那奈が名前を呼んで一人ずつにに手渡す。受け取ると耳もとで振って音を確かめたり、隙間から見ようしたり中身が気になって仕方ない様子の6人。  「それじゃ開けていいわよ!!」 "せーの!"で一斉に箱が開けられた。6人の手にはそれぞれが好きな色にローマ字で書かれた名前が入ったマイクが握られている。6人はそれぞれのマイクを見せ合ったり歌う素振りをしてみせる。   「えっ、色違いのマイク?すごい!!」  「めちゃかっこいい〜!!」  「ありがとうございます!!」  ご満悦(まんえつ)な姿を見て嬉しくなった千遥はふとポケットに手を入れた。"ん??あれ?"グラスをテーブルに置き反対のポケットにも手を入れ確かめる。"もしかして?"  「すいません。ちょっとバスにスマホ忘れたかもしれないので見てきます」 そう隣のスタッフに告げてそのまま部屋を出て行った。  20分くらい経った頃、きょろきょろと部屋を見回して千遥の姿が無いことに気付いた奏。さっきまでいた場所に行くと底に少し残ったビールのグラスとその他のお酒の飲んだ後があった。  「あのー…千遥さんはどこに?」  「大庭さんなら少し前にバスに忘れ物取りに行くって出て行ったけど」  「そうですか、、分かりました」  直感的に何かを感じて奏はジャケットを羽織って部屋を出る。部屋と外との寒暖差(かんだんさ)に顔を渋らせながら駐車場へ小走りした。

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