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War21:DeeperZ Debut!⑤
夢を見ていた。寒い冬の雨の中で僕はステージの上に一人。客席には誰もいない。出そうとしても声は出ない、音も何も聴こえない。
次第にまわりが暗闇になり寒さに体が凍えて立てなくなる。
すると目の前に小さな男の子が傘を持って近づいて傘をくれた。男の子は僕にキスをすると耳元で……
「……るさん……千遥さん!」
ハッと目を覚ました千遥は体に掛けられたジャケットに気づいて状況を整理しようと周りを見た。ボヤける視界に徐々に誰かの顔が浮かび上がる。
『……奏くん…?、、、あれ?』
「千遥さんやっと起きた。バスで眠ってたんですよ。お酒結構飲みましたよね?」
『あっ……もしかしてお酒飲んで……寝た?』
「そうですよ、だから起こしにきました。もおこんな寒い中いたら風邪引きますよ」
『あっ、、うん……なんだか今夢見て……』
奏の顔をじっと顔に穴があくほど見る千遥。
「えっ?ちょっと夢って…?何言ってるんですか?寝ぼけてる場合じゃないですよ!もう戻りましょう、打ち上げも終わると思います」
『うん。ごめんね…』
「大丈夫ですか?立てます?ホントに言ったそばから千遥さんは…」
ブツブツ言いながらも千遥との秘密ができた事が嬉しくて、千遥をお世話しているいつもと真逆の状況も嬉しかった。奏は千遥の腕を支え歩きながら最高のプレゼントをサンタに感謝しバスを降りた。
「あっ!戻ってきた!」
部屋に入るや否 や心配な顔で二人に近寄ってきたメンバー達。
「ずっとどこ行ってたんだよ!二人して」
「あれれ?もしかして大庭さん、酔って寝てたんですかー?」
『ち、違うよ!暑くなったから外の風に当たってだけ。ねえ奏くん!』
「いや、寝てましたね」
それからはお察 しのとおりみんなに揶揄われ金輪際 、仕事場でお酒飲むのは絶対に辞めようと誓った。とくに戸川さんのいる場では絶対に。
デビューイベントも終わりひとまずここ1ヶ月間の目まぐるしい日々もひと段落し、僕や日高さんDeeperZの6人も二日間のお休みをもらった。
久しぶりにゆっくりと一日中家から出ないで寝て過ごした。時折開くSNSで"DeeperZ"の文字をよく見るようになり彼らが既に注目されてる事を痛感した。
この二日間で世間は一気にクリスマスから年末の風景に模様替えされていた。
デビュー後、休み明け一発目の仕事は音楽番組収録でテレビ局はいつも以上に出演者やスタッフの出入りが激しく殺伐としていた。
その雰囲気に飲まれそうになりながらスタジオ入りをする。
「今日は一日長いけど頑張ってね!」
「日高さん、大丈夫ですよ!二日間しっかり休んだんで気合いも体力もバッチリ元気です!」
「ふーん光、アレだろ?元気なのはMIYUさんに会えるからだろ?」
「MIYUってシンガーソングライターの?」
「そう。確か光は昔からファンだったじゃん」
「なるほど。だから光くんはやけに張り切ってるのね!」
「いや、違うって!……確かにMIYUさんのファンだけど今日は大きな歌番組だし初めて生放送だからだよ!ってか朋希はいつも緊張しないからいいよな」
「うん。別にしない」
モデル経験のある朋希はステージ慣れしてどの現場でも冷静沈着で見てるこちらも安心させられる。
『いつも騒がしい凌太くんも今日は静かだね』
「ホント年末恒例の大きな番組にDeeperZが出してもらえるなんてね。たくさんの先輩アーティストもいるし、私も緊張してる。」
控え室でリハーサルの順番を待ちながら突然来たこの大舞台で緊張の色も隠せない様子のメンバーと、まだ経験の少ない那奈。
『大丈夫だよ。いつも通りにすればいいだけだから。デビューイベントの時を思い出して、あの時のようにすればいいだけだよ!』
千遥の言葉に頷きはするがちゃんと届いてるのかどうか分からないまま、準備を着々と進めていった。
〈DeeperZさん、移動お願いします!〉
スタッフが呼びに来て、千遥と那奈そして6人がステージの方へ移動を始めた。移動中の廊下にもリハーサル中の音が耳に入って緊張感が膨れ上がりそこに会話はない。
〈もうすぐ終わるのでここで待機してて下さい〉
そう言われて前のグループのリハーサル真っ最中のステージを袖から6人はただただ黙って食い入るように見ている。
『日高さん、このグループ知ってます?』
「はい。1ON1 ですよ。今飛ぶ鳥を落とす勢いの7人グループです」
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