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War23:Show Must Go On②

 モニターに曲タイトルが映ってイントロと共に熱いパフォーマンスが流れ始める。千遥と那奈はモニターの真ん前に立ってじっと見ている。 何万人が観てるであろうこの瞬間に、彼らは自分達を見せつけてやる!という気迫(きはく)がヒシヒシと伝わる。 だけどやはりさっきから気にかかっている千遥は同じメンバーばかりを目で追っていた。  『凌太くん大丈夫かな……?』  「、、えっ?どうしました?」  『さっきのリハーサルでも感じたんですけど、もしかして体調が良くないかなって……?』 そう言われ那奈も少し画面に近づいて凌太に注目した。  「そうですか?……普通に見えますけど」  本番までの時間だって全く喋らずお弁当だってほとんど口にしていなかった。いつもの様子が違っていたのは明らかで、まだ彼ら全員の全てを知ってる訳ではないが明るく元気なタイプの子ほど自分を見せたがらないのは知っている。  そして曲も終わりに近づきアウトロの最後に差し掛かるとふらついた凌太が隣の奏にぶつかり、倒れこんだで起き上がらない。 そのまま曲は終わりCMに画面に変わった。  「えっっ!、、、嘘っ!!」    そのまま千遥と那奈は控え室を出て走ってステージ袖に向かった。大勢のスタッフを掻き分けて、ステージ袖にメンバー達に囲まれてうずくまったの凌太が姿が見えた。  「大庭さん!日高さん!」  「凌太が急に倒れて、意識ないみたいで!」  「どうしよう!!」  「みんな大丈夫だから落ち着いて!」  取り乱すメンバー達を(なだ)めるが正直どうしたらいいか分からずパニックになっているのは千遥と那奈も同じ。  『日高さん!僕このまますぐ病院に連れていきます!』  「わかりました!お願いします!」  突然の状況にメンバー達や番組スタッフも困惑しているステージ袖。千遥が凌太を抱えて去っていく姿を呆然(ぼうぜん)と見ているメンバー達。  「大丈夫かな…」  「さっ、みんなとりあえず控え室戻ろ!大丈夫だから」  マネージャーとしてこの場を何とかしようと一先ず大きな声で言った。集まった番組スタッフに頭を下げて控え室に戻るメンバー達は、何事もない事を信じながら待つしかなかった。  "ちょっと凌太どうしたの?" "最後倒れたみたいに見えたけどホント?" "ああゆう演出なのかな?" "心配。事務所が働かせすぎなんじゃない?"  SNSですぐに色んな憶測(おくそく)が広がる。最後まで歌い切ったのは凌太の精一杯の我慢だったのだろう。その後も番組は順調に進み長い生放送が終わった。  「はい。わかりました。とりあえず良かったです。お疲れ様でした!」 廊下で電話をしていた那奈が控え室に入るとメンバー達は一斉に注目した。  「大丈夫よ。過労による貧血だったみたい」  「あー!よかった!!」  「とりあえず凌太は少し病院で休んでそのまま帰宅するからみんなも帰る準備しましょう。 」  「はい!」  朝から緊張で笑顔がなかった控え室に今日初めてみんなに笑みが溢れた。とりあえず大した事がなくて安心だったが奏だけは浮かない顔をしている。  「あのー…日高さん」  「ん?奏くん、どうしたの?」  「……千遥さんって戻ってきますか?」  「いやもう凌太くんに付き添ったら、そのまま帰るって言ってたけど」  「あ、そうですか、、わかりました」  「どうして?」  「別に何もないです。帰る準備します」  淡々と帰る準備をしながら奏は一瞬ふと千遥に連絡するべきかスマホを見た。だけどそれ以上何をするでもなく鞄にしまった。

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