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War31:Under One Roof⑦

 ピロンピロン。ベッド脇から鳴り響く着信音で目が覚めた千遥。音の出処を探して周りを見渡す。 すぐ真横に奏の寝顔あって、ハッと驚きながらも何故かその場から離れられず奏の長い睫毛(まつげ)に見入っていると、バチっと開いた目と目があった。  「……おはようございます。そんなにジロジロ見られると恥ずかしいですよ」  『ちょ、、起きてたの?』  「はい、少し前から。」 ニンマリと意地悪な顔した奏に出し抜かれた。その間も着信音はまだ鳴り続けてる。  『だったら、早く電話出なよ』  手を伸ばしてスマホを取り画面を見ると通話ボタンを押し布団を捲りあげた。  「はい。もしもし。姉ちゃん?」  "奏ー!今どこにいんの?" 「えっと、、事務所の人の家だけど。」 チラッと千遥を見ると電話の内容を知りたそうにこっちを見ていた。  "よかったー。帰って来ないからどこかで野垂(のた)れ死んでるかと思ったわ"  「大袈裟(おおげさ)だよ、1日帰らないくらいで。、、ところでお父さんはいる?」  "お父さんとお母さんはしばらく家にいないよ"  「え!?しばらくいない?」 静かな部屋に電話相手の声が漏れて聞こえて耳を傾けていた千遥。  "うん。今日から旅行に行ったから確か5日間は帰らないはず。ほらっ年末行くって行ってたやつ"   「旅行?……そうだったかな」  "だからそのままその人の家にしばらくお世話になってて"  「帰っちゃダメなの?」  "二人がいない間は彼氏を家に泊めるから帰ってこないでねー!"   『ちょっ、貸して!』 一部始終を聞いていた千遥が慌てながら奏から勢いよくスマホを奪った。  『あのっ、お姉さん!?』  "あ?事務所の方?すいません、しばらく奏をお願いします〜それじゃ!"  『あっ!切れた……』  画面を見つめる千遥からスマホを取る奏。 帰る気なんてそもそも無かったけどこれは好都合。まだ家に居られる、一年の締めくくりの日に千遥と過ごせる嬉しさが顔に出てしまいそうなのを堪えて冷静を(よそお)う。  『はぁ。全く……高校生の息子が家出してるって時に旅行に行ける神経を疑うよ』  「だから行ったじゃないですか。俺に興味ないんです、心配なんてするわけない」  『……心配しない親なんていないでしょ』 呆れてるのか同情してるのか分からない感情で言葉に出した。  「じゃぁ今日どうします?家には帰れないし、、せっかくの大晦日だしどこか出掛けませんか?」  『まー…家にいないなら説得にも行けないしいいけど。』  「美味しい物食べに行きたいです。あっ!その前にこの間言ってた映画観に行きませんか?片桐隼斗の!」  『あー…いいけど。少し仕事残ってるからそれで終わらせてからでいい?』  「はい!待ってます」  リビングに行く千遥の姿を布団の中から目で追う奏。まだ二人分の暖かさが残るベッドの中で残り香を抱きしめるようにもう一度毛布を被った。

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