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War34:Under One Roof⑪

 〈あけましておめでとうございます。今日のMUSIC BANGはお正月3時間生放送スペシャルです。何組かのゲストに来ていただいて歌とトークたっぷりでお届けしまーす!〉  事務所の自席に座ってキーボードをカタカタ鳴らしながらパソコンとテレビ画面を交互に視線を向ける千遥。  「あれ、千遥くん来てたの?」  『あっ、戸川さん。あけましておめでとうございます。仕事残ってたし家居てもやる事ないので。戸川さんこそ元旦から事務所に来るなんて』  「おかげさまで彼らのお陰で忙しくしてるよ。そうだ、手空いたらちょっと部屋来てくれるかな?」  『分かりました』  戸川の部屋に入ったとたんデスクに企画書がたくさん並んでいた。  『わっ、何ですかこれ?』  「DeeperZの今決まってるの今年の仕事!」 たくさんありすぎてどこからページを開けばいいのか分からないがCM、バラエティーのレギュラーなど大きな案件の文字が目に入る。  『ちょっといきなり凄いですね』  「それだけ注目と期待されてるって事だ!」 デビューからまだ間もないのにどんどん仕事が舞い込んでくる。  「それと3日間のライブをやろうと思ってるよ。その前にもう一曲新曲をリリースする!」  これだ!戸川さんが勢いづくと止められない。まぁ僕のあの時期はこんなに順調に仕事が入ってくる事はなかったけど、何とか売り出そうと頑張ってくれたあの時と似ている。  もう10年も前の話だか昔の僕らと今の彼らを重ねてあの時出来なかった夢を彼らに(たく)しているような気もする。 戸川さんが僕に彼らの担当をつけた理由はそこもあってのことかもしれない。もう一緒に夢を見ようと。    自席に戻ると凛々(りり)しい袴姿の彼らが画面に映っていた。客席からはキャーと黄色い声援が止まらない。  〈続いてのゲストはDeeperZの皆さんです!〉  《よろしくお願いします!》 司会者と楽しげにお正月トークや今年の目標を語ってゲームなどで盛り上がっている。  「ハクション!……あっすいません!」  〈奏くん大丈夫?〉  「はい。たぶん誰かが噂してるんですかね」  笑いで場が(なご)み番組は進んでいく。既にテレビ番組出演にも慣れてきた気さえした。  『バカ。あんな寒い中で花火なんかしてるから当たり前』 千遥はフッと微笑んでスマホのカメラフォルダを開いた。あの時なぜか自然に押したシャッター。暗さと煙たさでブレた写真だけどなぜか消さないでいた。  『……一応風邪薬買って帰るかな』  元旦なのもあり仕事は早く終わった。スーパーの袋を抱え帰宅すると電気をつけ冷え切った部屋に暖房を入れた。  『ただいま……まだ帰ってない、、か』  いつもより奮発した高いお肉が袋から覗いている。普段自分だけの為にこんな買い物はしない。誰かと一緒に住むってのはこんな行動もさせるものなのか。  スマホでレシピを検索する。よし、作るメニューは決まった。奏からの連絡はまだないし帰宅するまでに終わらせられそうだ。 料理は嫌いじゃないが忙しさにかまけてキッチンを汚す事はしばらく無かった。    スマホを立ててレシピを映す。奏が帰宅するまでに作り終えようと手際よく進めていく。着信音が鳴って手の水分をタオルでパッと拭き取り通話ボタンを押した。  『もしもし。美織(みおり)?』

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