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War36:Under One Roof⑯

   「千遥さん……ずっと好きでした」  不意な告白。見つめる瞳の中は一寸の曇りもなくピュアだった、、彼に呑まれていく。 その先の展開を受け入れるように目を閉じた千遥は口唇と口唇が触れるのを感じそうになった。  「ふっふっ、くっ!」 千遥の顔の横で肩を震わしながら苦笑する奏の声で目を開いた。  『ちょ、っ、何が可笑(おか)しいの?』  「アレですよ一昨日観た映画のシーン!」  『えっ!?』  「映画の再現ですよ。あれ?忘れました?本当にちゃんと観てました?」    一緒に観た隼斗の映画の終盤、ヒロインに想いを伝えたシーン。確かに感動して泣いたくらいだから覚えてはいるけどまさかこの状況でそれに気付くわけない。  『あぁ……そうゆう事ね』  「なかなか上手いでしょ。俺も俳優出来るかも!」 なぜか意気消沈した様子の千遥。考えてみればあんな告白、ドラマの世界でしか存在しない。  「それとも、、何か期待したんですか?」 急に恥ずかしくなって隠すように声を上げた。  『はぁ?そんなわけないじゃん!もうどいて!!』  思い切り奏を押して床に落ちたスマホを拾い上げキッチンへ向かった。彼はふざけたつもりなんだろうけどあの告白は胸に突き刺さったのは間違いない。  奏は想像に反して全然笑わないむしろ機嫌悪くなったように見える千遥を不思議に思ったが、あの時確実に自分を受け入れてくれたのは嘘じゃない。あのまま冗談じゃなくキスしていたら、、    キッチンには作りかけの夕飯の材料がそのまま残って、奮発した高いお肉が調理を待っているかのように置かれたまま。  『あー…そっか。途中だった。作るメニューは何だっけかな?』  ジュージューとお肉を焼ける音が鉄板から湯気と共に出て部屋に匂いを充満させる。  「今日は焼肉なんですか?」  『そう、予定変更!作る時間もないし作る気力も無くなったから簡単に済まそうかなって」  「ん?気力がなくなったのは俺のせいですか?」  『さあね。とりあえず座って!食べよっ』  結局高いお肉はそのまま鉄板に焼かれ2人の胃袋へ。  「これ超美味しいお肉!」 何でも美味しいと食べてくれる奏を見ているだけで十分。一緒に生活してそれだけで満足で他には何も求めていないんだ。  『ん、そうだこれ』 目の前に置かれたの風邪薬に奏は首を傾げる。  『もしかして風邪引いてない?』  「えっ、どうして?」  『今朝、部屋のゴミ箱にティッシュがいっぱい捨ててあったし、生放送でもクシャミしてたから』  「番組観てたんですか?」  『うんたまたま事務所でね。まぁタレントの体調管理も仕事のうちだしね』  「なんか嬉しいです!細かい所気にかけて気付いてくれて!」  たかが風邪薬でそんなに喜ばれるなんて思わなかったけどまだまだこれから忙しくなるのも知ってるし体調崩されても困る。  あんな茶化されて恥ずかしい思いしたのに料理して薬まで渡して。どんだけお人好しというかバカなんだか。とりあえずさっきの一部始終を頭から削除して忘れたいのに残って消えない。  『そう言えば明日は約束があって帰り遅くなるから』  「えっ、約束って?」  『んーと……仕事関係の人とちょっとね』  「仕事の人って俺たちの関係?」 探究心が強いのはいいけど、何でも知りたがるのは最近の若者の特徴なのか。  『内緒!はい、もう質問はなし!』  食事も済ましシャワーから出てきた千遥はソファーに毛布と枕を運んでいる奏に気づく。  『ん?何してんの?』  「あーいや今日は風邪っぽいしソファーで一人で寝ようかと」  『だったら僕がソファー使うからベッドで寝ていいよ。全く、、またそんな変な気遣いするんだから』  「だって千遥さんに風邪うつしたら申し訳ないし」  『いいから』  ベッドルームに移動して布団をかけ子どもの様かに奏を寝かしつける。  「なんか千遥さん、お母さんみたい。」  『何それ?そんなにお母さんと会いたいなら家戻ればもうすぐ会えるけどね』  「もう意地悪言わないで下さい!」  『ふふっ。さっきの仕返しね』  部屋のライトを薄暗くし加湿器をつけた。奏は真っ暗だと眠れないとここ数日は完全に消灯はしない。   「おやすみなさい」 そう言いあって千遥は部屋を出た。何だ言っても17歳の高校生はまだ親が恋しい時期。結局まだ子どもなんだ。  一人のソファーはいつもより硬く冷たく感じる。最近はずっと寝付きがよかったのだが今日は何故かなかなか眠れない。 だけどその理由は寒さのせいにしておこう。

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