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War37:Under One Roof⑰

 芸能界で年末年始が多忙なのは売れっ子の証拠と言われるように、有難い事に忙しくせてもらっている。と言っても裏方の僕が忙しいのは単に去年の溜まった仕事を片付けてないという理由だけで、売れっ子の人達と対等なんて思ってはいない。  「ごめん、撮影長びいちゃって」 和食レストランの個室の扉を開けると爽やかに平謝りしたイケメン。本当何でも絵になるやつ。  『全然!隼斗の忙しさは知ってるし来てくれただけで感謝だよ』  「それにしても何でわざわざ個室?」  『有名人相手なんだから一応気をつかってるんだよ』  「俺らそうゆう関係ないじゃないくせに。」  "新年会しよう"と千遥からメッセージ送ったのが昨日の事。ダメ元での誘いだったけど"OK"の返事が届いた。コートとマフラーを掛けて椅子に座る。  『そうだ、映画良かったよ。観に行った』  「えっ!珍しいじゃん。というか初めて?どうゆう風の吹き回しなんだか」 今まで出演作を観た話なんて千遥の口から聞いた事なくて驚いたけど素直に嬉しさを隠せない隼斗。  『ヒロインが可愛いから観に行っただけー』 嫌味を言う口調で言うと2人は笑い合った。  「それでどうしたの?悩み?相談?愚痴?」  『ん?何それ』  「だって千遥から誘ってくるのも珍しいし、俺を待たずにもう一杯やってるなんてきっとそんな事でしょ。」 空いたジョッキがテーブルの端にひっそりと置かれていた。  『……よくお気づきで』  「あいにく明日は撮影開始が遅いからお付き合い出来ますけど〜?」  『まぁ悩みっていうかなんて言うか意見聞きたいって感じかな』 いつもよりお酒が多く並ぶ覚悟で秘密の個室の夜は始まった。   ◆◇◆◇◆  シャーペンをくるくる回しながら"むー"と教科書と睨めっこしている奏。テーブルの上は空白だらけの宿題の山が広がっている。家のチャイムが鳴ってムクッと顔を上げた。  「ん?誰?千遥さん?」 シャーペンを置いて小走りで玄関へ急ぐ。鍵を回して裸足のまま扉を開けた。  「千遥さん、思ったより早……」  千遥よりすっとした背丈の男が立っていて見上げた瞬間ハッと声を詰まらせる。  「えっ…?」」 目の前の男も見下げて同じような顔で奏を見ている。  「……君は…?」  「えっ!!か、片桐隼斗!?」 考える隙間もなくすぐに気付いた奏を不思議そうな顔で凝視している。  "ん〜"支えてた右腕から倒れこみ隼斗の胸元でスヤスヤしている千遥に気付いた奏。  「あっ、千遥さん!もしかして寝てる?」  「と、とりあえず中運んでもいいかな?」 必死に千遥を支えもう限界と言わんばかりの隼斗の顔に扉を全開にした。  「あっ、はい!とりあえずベッドに」  "ふぅ〜"2人のため息が重なる。 お酒の匂いもするしこの状況も2度目だから見ればどうしてこうなったかなんてピンとくる。この前は行きつけのお店で飲まずに我慢してたのに、今日は相当羽目を外したのか。 そんな事考えながら、気持ちよさそうに夢の中にいる千遥をベッドに寝かせて部屋を出た。  「ありがとうございます……あとすいません。さっき、、」  「ん??」  「勢い余って名前……呼び捨てしてしまいました」  「あー、そんな事気にしてないよ!」 少しの沈黙が流れ、改めて奏を上から下までじっくり観察するように見る隼斗。それに少し照れた顔で頭をポリポリと掻いてした。  「あっ、時間あれば少しお話ししませんか?」  「んーそうだね!とりあえず君の名前を聞きたいな。あとー…何でここにいるのかもね」  普段使用しないお客様スリッパを持ち出し、テーブルの宿題を(まと)めてソファーの端っこに重ねてバダバタの落ち着きのない奏の動きを目で追いながら苦笑している隼斗。  「あ、ソファー座って下さい!えっと、何飲みますか?コーヒーとかジュースとか……あっ、ビールあります!」  「フフッ。これ以上飲んだらさすがに俺も帰れなくなっちゃうよ」  「あっ、ですよね、、すいません。」  突然の有名人の来客に焦って訳わからない事を発している奏を面白おかしく見て微笑んだ。  「まるでキミの家みたいだね」 冷蔵庫にあったミネラルウォーターを受け取ってぐびっと豪快に飲んだ隼斗。  「あっ、栗栖奏と言います。千遥さんが担当してるグループのメンバーです」  「あー!君があのグループの子なんだ。確か…思い出した!DeeperZ!」 知っていてくれる事に嬉しくて笑顔で深く頷く奏。  「それで君はどうして今日ここに?」  「えっと……それは色々あって…」 どの順序でどう話せばいいか考えながら頭の中を整理してなかなか口に出せずにいる奏。  「じゃーその前に聞いていい?」  「はいどうぞ」  「俺と千遥の関係はどこまで知ってるの?」

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