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War41:Under One Roof㉑

  予期してなかった千遥のひと言。 視線を床に向けたままそれ以上何も言わない千遥を見て冗談ではない事はすぐ気付いた奏。  「……分かりました。明日、出て行きます」  テーブルの教科書を纏めて一秒でもこの張り詰めた空気から逃れたくて、ベッドルームへ向かいドアノブに手を掛けた奏。バシッと音を立てて抱えてた腕からすり抜けるように落ちた数冊の教科書。  「……迷惑って思ってたんなら初めからそう言ってくれればよかったのに、、」 拾いながら顔も見ないで最後の別れの台詞のように言い放って部屋に入っていった。  "言えばよかった? 何て?好きにならないようにせめてもの抵抗だって?" 千遥は唇を噛み締めながら自分にいい聞かせる。  "これで良かったんだ。お互いの為にも"  翌朝、ソファーの上で目が覚めた。ベッドルームには彼の姿はもう消えていて、いつ出て行ったかも分からない。 テーブルにはスペアキーか置いてあって、洗面所の歯ブラシも消えていた。丁寧にベッドも整っていて(はな)から誰も居なかったような静寂に包まれた家は居心地が最悪だった。  それからしばらく彼と会わない日々が続いた。担当者はマネージャーと違って四六時中、側に付いているわけではないし次々来る仕事のオファーの対応に追われて(せわ)しなく時間が過ぎていく。 もちろん彼から連絡もなければこっちからする事もなくある意味、これを平穏な毎日と呼ぶのだろう。  「あっ、お疲れ様です!今から帰りですか?」  『はい。日高さんは?』  事務所のエレベーターで那奈とすれ違う。たまに事務所で顔を合わす2人も最近はお互い別行動が多く久しぶりに会話をした。  「一つ仕事終えて戻ってきたところです。あっ!そう言えば完成した新曲聴きました?」  『はい。すごいカッコいい曲でしたね。』  「そうだ!この後スタジオ練習に行くんですけど時間あれば一緒に来ます?ほら、旬くんの振り付け完成したみたいで!」  『あぁー…ちょっと今日は、予定あるのでやめときます』  別れた学生カップルが学校で顔合わせるのを避けるみたいに変な嘘付いた。大人気ないがまだ平然と彼と接する覚悟も準備も出来ていない。 とりわけ彼とはまだ何も起きてないのに、、もう何か始まっていたように意識して逃げてるのは自分だけじゃないのか。考えれば考える程分からなくなる。  ◆◇◆◇◆  〈いらっしゃいませー〉  一人になった部屋に豪華な食事は並ばない。もっぱらコンビニのお弁当にお世話になって数日が経つ。  今日発売!と書かれた雑誌棚の前例に並ぶ雑誌に気を取られた。"WAG 次くる!トレンド特集""DeeperZの魅力に落ちたい"少し周りを見渡して誰もいないのを確認をし雑誌を手に取る。  ペラペラっとページを捲る。あの撮影現場の光景を思い出して顔が自然と(ほころ)んで読み始めた。  『みんなよく撮れてるな』 カメラマンの腕もさることながらモデルである6人の魅力がはっきり表現出来ている。 〈Q.今年のグループの目標は?〉 〈A.大きな会場でライブがしたい!〉  そう。その夢を叶えてあげるのが自分の役目だって事を忘れるところだったんだ。  『ん?、、電話?』 ポケットの中で振動を感じた。雑誌を棚に戻してスマホを出すと画面の名前を見る。鳴り続ける電話を手にコンビニの外に出るとゆっくり通話ボタンを押して耳元へ持っていく。  「もしもし」  「……もしもし、、奏です」

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