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War43:Las Vegas

 ラスベガス マッカラン国際空港。 空港に降り立つとすぐにずらりと並んだスロットマシーン。"Welcome to Las Vegas"の大きな文字が目に入ればアメリカにいる事を実感せざる得ない。  出国手続きを済ませると送迎車が数台が到着していた。メンバー6人と千遥、那奈、戸川そして十数人のスタッフが分かれて車に乗り込んだ。 初めて6人がアメリカの地に足を踏み入れる。  「やばいっ!!」  車を走らすと6人は口々に感嘆の言葉を自然に漏らした。気温12℃。特に雨が降る事が少ない2月は野外の撮影にも影響はなく東京に比べて快適な時期。 窓から外を見ると何車線あるから分からないくらいだだっ広い道路、走る車内にギラギラした大きな英語看板のネオンが目に入り10代の心をときめかすには充分過ぎる材料だった。  『風が気持ちいいな』 少し開いた窓の風を浴びてボソッと行った千遥。  「ねぇ、千遥さんってもしかして海外初めてですか?」 ひょいっと後ろの座席から顔を出した奏。  『はっ?えっ、いや、あ、あるけど何で?』  「ふーん。それにしては綺麗なパスポートだし、あんまり入国手続き慣れてない感じだったんで」  鋭い目で見つめられて思わず視線を窓の景色に戻す千遥。  『いやー…そ、そうゆう奏くんこそ高校生なら初めてだろうけど、海外だからってくれぐれも羽目はずさないようにね!』 ズバリいい当てられ照れ隠しのように大人気(おとなげ)なく言い返した。  「いえ、海外は10回目くらいです。子どもの頃から親に連れられて行く事多かったから」  『あ、10回……ね。さすがお金持ち…でも子どもの頃って今もまだ子どもなんだからさっ!』 ポンポンと頭を触ると嬉しさと悔しさを混じった顔を見せる奏。 "まだ子ども"は奏にとっては(こく)な言葉に聞こえた。 「とりあえずホテルにチェックインしてから今夜はみんなで食事ね」 すでに外は薄暗く今日はゆっくり体を休める事に専念して明日朝早くから撮影開始。 今回の5泊6日のスケジュールは多忙な彼らのギリギリのスケジュール。 そして車はどんどんラスベガス中心部へと進んで行った。  ホテルに到着しチェックインを済ませる。 豪華なホテルはフロントだけでも華やかで一階フロアにカジノが当たり前のように設置されていて行きかう人々の波に早速ラスベガスの世界感に圧倒されていた。 「部屋割りは2人で一部屋だからどっちかにルームキー渡すわね」 部屋割りは光と卓士、凌太と朋希、旬と奏。ルームキーを那奈から受け取るとエレベーターの上ボタンを押して待つ。  「あ〜カジノにはいつ行けるかなー!」  「は?卓士、何言ってんの?カジノは21歳からしか無理なんだぞ。そんな事も知らないのかよ、国立大生のくせに。20歳の俺だってダメなんだからな。」 "えー!"とショックを受ける卓士を最年長の光が一喝してみんなで笑っている。  「ちょっとちょっと!遊びに来たんじゃないのよ。年齢が過ぎていてもカジノしてる時間はありません!」  「そんな事言って日高さんと大庭さんは大人だしこっそり行くつもりなんじゃないですか〜?」 那奈と千遥を交互に指さして茶化して言う。  『僕らは別に……そんなつもりは』  2人は意味ありげに顔を見合わせた。エレベーターのランプが点滅し一階に止まり扉が開く。ゾロゾロと入り込むと大きなキャリーケースを引いた6人で中はいっぱいになった。  『あ、僕らは隣のエレベーターで上がるから行って!』 千遥と那奈を残して扉が閉まった。  停止階を押すと6人だけになったエレベーター内は思春期らしい話題になる。  「なぁ。日高さんと大庭さんって本当に何もないのかな?」  「えー、なんだよ急に!?」  「いやだってさ歳も近いし、言っても大庭さんイケメンだし日高さんだってそこそこ可愛いだろ」  「おい!そこそこって怒られんぞ。ってまぁあり得ない話じゃないかも。別に2人がそうゆう関係だったとしても問題はないし、、」  「あり得ない!!!」 黙って聞いていた奏が突然声を上げた。  「ビックリした!急にどうした?」  「2人はそんなんじゃないし、今は俺らの事で忙しくてそんな暇はないから」  「いや分かってるよ。もしもって話!」  「そうだよ。そんな大声出さなくても」 少々ムキになって場を乱して、みんなに変に思われたかも、、奏もそれ以上何も言わなかった。  英語のアナウンスが流れ扉が開く。エレベーターを降りて6人は左右をキョロキョロ見回してそれぞれの部屋を探した。  「俺達はこっちかな。奏こっち!」 旬に呼ばれ付いて行こうとすると、隣のエレベーターが止まり千遥と那奈とスタッフ達数人が降りてきた。千遥に気付いて奏は歩みを止める。  「あっ!千遥さん、部屋何号室ですか?」  『んーっと、3016だからあっちの奥かな』  「だとしたら俺たち同じフロアの端と端ですかね」  『日高さんの部屋も隣だから何かあったらどちらかに連絡してね。また夕食でね』  「……はい」  並んで歩く千遥と那奈の後ろ姿を見ていた。 あんな事言っておきながらエレベーターでの会話を気にしない訳はない。むしろ色濃く頭に刻まれた。  "確かに彼女はいなくてももしかして好きな人がいるかもしれない" さっきの会話を思い出してよからぬ想像をしてしまう奏。一緒にいられるのは嬉しい反面、不安な気持ちも湧いてくる。  「おい!奏、早く!」 旬の声に小走りで千遥の部屋の方を後ろを振り返りながら部屋に入った。

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