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War45:Las Vegas③
「すごっ!今までで一番リアクションある!」
朝7時、集合時間のロビーで数人のスタッフとメンバーが集まっていた。
「凌太、元気だな。朝苦手だろ?」
「見て!!昨日の夜載せた写真の反応すごいんだって。一日でこんなに!」
みんなでスマホの画面を覗き込みコメントをスクロールしていく。
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"ラスベガスで何してるの?撮影かな?"
"私服もカッコいい♡いっぱい載せてー!"
"新曲〜!?"
いつもに増して反応が多く鋭 い観察眼でファンのコメントは話題でいっぱいだった。
クリスマスのデビューからイベントやテレビ出演、雑誌、ラジオ等に出ずっぱりの2ヶ月を終えしばらく制作期間に入った6人。
その間もSNS等で日々の生活の投稿でファンとの交流も欠かさない。着飾らない普段のメンバー達を見られる場でもある。
大きなバックを抱えた千遥と那奈がエレベーターから降りてきた。みんな揃ってスマホに夢中で2人に気付かない。
「みんな、どうしたの?」
「日高さん!見て下さいよ。昨日のレストランの写真の反応すごいんですー」
那奈に画面を見せるとドヤ顔で言ってみせた。
「そうね。まぁ載せるのはいいけどまだ新曲の撮影って事は口外禁止だからね!」
「分かってまーす!」
『おはよう……ん?何?』
一人輪から外れてただ千遥をじっと見つめる奏と目が合った。
「寝癖ついてますよ。ここ!」
はねた髪をフワッと触った。千遥のパーマでふんわりした髪からピンと飛び出した後ろ髪。
『えっ!あー、起きるのギリギリになって直す時間なかったから』
「ふーん。昨夜、日高さんと部屋で夜遅くまで打ち合わせしてたからですか?」
『えっ、うん……まぁ、、』
「なーんか、やらし」
嫌味ったらしく言うと、膨れっ面で拗ねた顔を見せる奏の頬を抓 って顔を近づけた千遥。
『これから撮影なのにそんな顔しない!今日は楽しい撮影なんだからね。それに日高さんと何かあるって思ってるんだったら誤解だから』
「別にそんな事思って、、」
『そう?顔にそう書いてあるけど!』
抓った千遥の手をぎゅっと強く握り何かを訴える様な目で見てくる奏。
「だったら部屋に行ったりしないで」
混沌 とした空気。奏の表情がかつて無いほど悲しく見えて、酷い罪悪感に襲われる。握った手に力か入って頬から下ろす。
『……ごめん』
かける言葉が見当たらなくてただ謝った。
そうこうしていると戸川が小柄な男性と一緒に何やら話しながら革靴をコツコツ音を立てて向かってきた。
《おはようございます! 》
スタッフとメンバーの声がロビーに響く。
「おはよう。よく眠れたかな?撮影初日、気合い入れて頑張ろう!」
そう言って戸川が目で合図すると隣の男が一歩前に出た。
「初めまして。今回撮影に立ち合わせていただくコーディネーターの間宮尊 と言います。よろしくお願いします。」
アメリカでの撮影は規制が厳しい。撮影許可を取っても映せない場所や立ち入り禁止の区域もある。土地勘があって通訳も出来るコーディネーターは海外撮影には必須だ。
ふわっとした優しい雰囲気でギラギラしたラスベガスの街には些 不似合いとも思える大人しい若い男性。
「間宮くんは撮影中は常に同行して何かとお世話してくれるからよろしくねー」
間宮の肩にポンと手をかけた戸川。
「はい。それじゃドライバーが待ってるので行きましょうか!」
ホテルの外に数台の車が待機していた。全員がそれぞれに数台の車に分かれぞろぞろと乗り込む。
「あっ、千遥くんはこっち!間宮くんと同じ車に乗って」
『えっ?あっ、はい!』
メンバーと同じ2台目の車に乗ろうとした瞬間、戸川に静止された。"何でだろう"と考えながら前の車に移動した。戸川はスタッフの車に乗り、那奈とメンバーは一緒の車へ。
フロントミラーで乗りこんだ千遥を確認すると助手席の間宮が振り向いて微笑んだ。
『どうも、間宮です。大庭さんですよね?』
「はい。お世話になります。大庭千遥です。」
『会えるの楽しみにしてましたよ。あなたに』
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