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War46:Las Vegas④
晴天のラスベガスの街を車で走る。
右を見ても左を見ても巨大なビルやホテルが隣接し毎日がお祭りの様で、見ているだけで気が大きくなってしまいそう。
朝からラスベガスは変わらずフル稼働している。
「今日の撮影現場は近いのですぐですよ!」
『はい。よろしくお願いします』
「戸川さんにイケメンの担当マネージャーがいるって聞いて会ってみたかったんですよ。話してた通りかっこいい人ですね!」
『戸川さんそんな事を……恥ずかしいです、、間宮さんはずっとこっちでお仕事を?』
「この仕事始めて7年になります」
『7年なら、僕と同じですよ。けど、こんな派手な街は僕には不釣り合いで。こんな凄い街でお仕事してる間宮さんを尊敬します』
「いえ、尊敬なんて。僕もこの街に馴染めてるか分からないですし。派手だけじゃない、ここは色んな人間の夢や希望や欲望が犇 きあって合ってる場所ですから」
30分ほど車を走らせて着いのはダウンタウンと呼ばれる街。長いアーケードに何万個のLED電球がスクリーンに映し出され華やかさを更に演出させる。
今日の撮影はダンスシーンはほとんどなく街を歩いたり6人が和気藹々 と楽しんでるシーンの撮影がメイン。そのほか何パターンかあるCDジャケット撮影の予定だ。
撮影地に着くとすでに現地撮影スタッフが到着し準備を進めていた。現地のアメリカ人スタッフに挨拶し間宮が間に入りながら進行していく。
日本から全ての撮影機材を持ち込むのは難しく、持ち込みは最低限だけ。あとは現地の制作会社に依頼して現地スタッフや機材を揃えて撮影するのが一般的。
《 DeeparZです!よろしくお願いします》
元気な若い日本人の男の子に笑みを浮かべながら拍手をする現地スタッフ達。メイクはホテルで済ませてたメンバーは衣装だけ着替え、いよいよ本格的にラスベガスでの撮影が始まる。
音楽が流されてリズムに合わせて体を動かしながら6人が街を闊歩 するシーン。
ストーリートをイメージした衣装と街の雰囲気が見事にマッチして曲をよりお洒落にクールにさせる。
間宮と千遥は緊張した面持 ちで撮影を見守っていた。
「そう言えば彼らまだデビューして3ヶ月なんですよね?しかもまだ10代とか?」
『はい、僕も日々の成長に驚きですよ。まだ早いって思ってた海外の撮影もいざ始まってみるとすでに板についてるっていうか』
6人を見ながら千遥は出会ってからこの3ヶ月間を思い出していた。
「いいな。僕もあんな風になりたかった、、」
遠い目でボソッと小さく呟いた間宮。
『えっ?』
「あっいえ、なんでも。そうだもし食事するならこの後の現場行く前に食べられる場所あるので寄りますか?」
『そうですね。日高さんに聞いてみますね』
今日メインの撮影は終わり束の間の休憩時間。少しだけ移動して軽く食事したりメイク直しをしたり。そんな間でもメイキング映像を撮るカメラは動いて撮影されている。
慣れてない海外での撮影も思いの外スムーズに進み今日の撮影はジャケット撮影のみになった。
まずは個人ショット撮りから始まった。
動きがあって6人揃っての撮影とは違い、写真撮影は音もなく一人の撮影。大勢の外国のスタッフに囲まれての撮影は普段とは勝手が違うのか思い通りにいかない様子。
時折、英語でコソッと話すスタッフに気を取られ集中出来てないのが見て分かる。
「あれ?なんかみんな緊張してます?」
「まぁ無理もないか。野外撮影だとオーディエンスもたくさんいるし周りの目も気になるんだろうな。ましてや普段絡んでるスタッフじゃないから反応も気になるんだろう」
戸川の言う通り時間が経つに連れ人の流れも多くなり、立ち止まり撮影を傍観 する人達が増えてきた。
「よし!じゃ一旦ストップ!光は朋希と交代して!」
撮影の流れを変えるべく戸川が交代を文字 して朋希の撮影が始まる。普段着る事の少ないストリートの衣装を違和感なく着こなし、カメラに向ける目線もアイドルの息を超えたプロのモデルのよう。
「cool!」「It's so artistic!」
現地スタッフからも声が飛び交った。
朋希の撮影が終わりいい雰囲気に包まれた現場。そのムードに感化されたメンバーも負けじと撮影を進めていく。
"ふぅ"と一息つくと椅子に座って水を飲む朋希。衣装は袖もなく他のメンバーに比べ露出が多くさすがに寒そう。
『朋希くん、すごく良かった!さすがモデルやってる子は違う。ラスベガスの雰囲気に負けてないもんね!』
「ありがとうございます」
『あれ?上着は?』
「あー…車に置いて来ちゃって。でも大丈夫です」
『じゃこれ着て!』
千遥は着ていた上着を脱いで朋希に肩に掛けた。
「あっすいません、、ありがとうございます」
『そう言えば朋希くんはいつからモデルやってたの?』
「中学一年からストリート系の雑誌の読者モデルをやってました。その雑誌を見て事務所から声が掛かったんです。」
『そうなんだ。朋希くんはなんだか他のメンバーとはまた違うオーラがあるもんね』
照れた顔で嬉しそうな反応を見せる朋希。
「だから初めグループで活動って言われた時はちょっと戸惑いしました。ずっと一人だったし、一人の見せ方しか知らなかったから。でも今は6人で良かったって思ってます」
6人それぞれが違った個性と得意とするものがあってそれが混ざり合うからこそグループって面白いんだ。それは一人じゃ表現出来ない。
勢いに揉まれながらも今日は撮影は終了。思った以上にいい出来で戸川も満足気に撮影現場を離れた。
ホテルに戻って今日は各部屋で食事し自由時間。早起きで疲れたメンバーは部屋でゆっくり休んだり、明日のダンス撮影に備えて練習をしたり各自で過ごしている。
部屋に戻った千遥は重いバッグを下ろしバタンとベッドに倒れこんだ。撮影はまだまだ続く、さすがのスタッフ達も疲れ色が見えて各部屋へ。
『食べたらシャワー浴びて早く寝るか』
コンコンとドアをノックする音が聞こえ疲れた体を起こしドアをゆっくり開ける。
『、、奏くん?…どうしたの?』
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