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War47:Las Vegas⑤
ドアの前に立っていたのは奏。手には撮影時に朋希に貸した上着を持っていた。
「お疲れ様です、、あの充電器の予備ありますか?壊れちゃってあれば貸して欲しいんですけど?それとこれ、朋希が返し忘れたって」
『あ、うん。充電器あるよ。あー…部屋入る?』
「はいお邪魔します」
『ちょっと待ってね。えっと、充電器の予備は確かここに……』
まだ整理されてないキャリーケースが開いたまま床に置かれ、ゴソゴソと探している千遥。部屋に入ってすぐにあるクローゼットを見つけた奏は手に持っていた上着をハンガーにそっと掛けた。
「上着ここに掛けておきますね」
『あっ、うん。あっ!充電器あった。はいこれね』
「ありがとうございます」
奏は充電器を受け取ってちょこんとベッドに腰掛けた。テーブルには手付かずのご飯がそのままに置いてある。
「千遥さんまだご飯食べてないんですか?」
『うん。奏くんは?食べた?』
「俺もまだです」
『良ければ一緒に食べる?ジャンクフードばっかりだけど思ったより量が多くて。あのーアメリカサイズってやつ?英語分かんなくて適当に注文したら買いすぎちゃったよ』
袋から取り出したハンバーガーやポテトは日本でのサイズを優に超えていて個数もなぜか多い。
それを見た奏は呆れるような愛おしいような表情で笑って大きく頷いた。
「なんか千遥さんらしい。それじゃ遠慮なく頂きます!」
部屋に広がるジャンクフードの匂いも気にしないで口を動かしていく。
「なんかこうやって二人で部屋でごはん食べるのが懐かしいです」
ハンバーガーを頬張りながら遠い昔の思い出話をするような口調で言う奏。
『あぁ家出少年の頃ね、、やっぱり両親はまだ反対を?』
「元々、父親とはあまり会話しないんですけど最近は特に顔合わせる事もなくて。たぶん遊び感覚でそのうち飽きて辞めるだろうって思ってると思います」
食べる手がゆっくりになってテーブルに置かれた。
『そっか、じゃ一緒に今度改めて……』
「大庭さーん!」
コンコンとノックする音と那奈の声が同時にドアの向こう側から聴こえる。
「えっ、約束してるんですか?」
『いや、してない……』
少し考え立ち上がりドアに向かおうとする。すると奏が後を追うように背後からギュッと千遥に抱きついた。驚いた千遥は振り返ろうとするが力強く顔を背中に埋めた奏は動かない。
『ちょっ奏くん、、!?』
「ダメ!出ないで下さい」
背中に奏の体温を感じたまま立ちすくむ。那奈の声はその間も続いて、2人に板挟みになった千遥はただドアの息を潜めていた。
しばらくして那奈の気配が消え立ち去った様子。
『い、行ったよ、、奏くん?』
それでも千晴の腰に回した手の力を緩める気配がない奏。
「……千遥さんと早く2人きりになりたかった。あの時、迷惑って言われてショックで。でも仕事で会うし普通を装わなきゃって思ってたけど、千遥さんの顔見たら冷静じゃいられなくて…」
彼はずっと気にしていたんだ。急に冷たく突き放すようなこと言って、強制的に家を追い出して。でもあの時はそうゆうしかないって幼稚な僕は自分の事しか考えずに。
『あれは、、そのー…咄嗟に出た嘘って言うか。ホントは迷惑だなんて思ってなかったよ』
奏の千遥を抱く手が離れた。振り返った千遥と奏は顔を見合った。
「え…ホントですか?」
『うん。ごめんね。』
久しぶりに彼の喜んだ顔に体にのし掛かった錘 がすっとなくなった気がした。
「最終日、時間あれば2人で出掛けませんか?」
順調に撮影が進めば予備日にしていた5日目は自由行動が許されいる。
『……うん、いいよ。行こうか』
これはあの時傷つけてしまった穴埋めなんかじゃなくて僕自身がそうしたいって思った、本音の言葉。目に見えない葛藤をここで終わりにしよう。
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