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War49:Las Vegas⑦

 キス……って?聞き間違い? そんな直球を投げつけられ、しどろもどろになっている千遥とは対処的に冷静な奏。  「千遥さん、何そんなに焦ってるんですか?」  『いやだって!キスしながら……とか言うからさ!』  「違いますよ、あっち、」  向いた先にはアメリカ人カップルが仲睦(なかむつ)まじくキスをしながら写真を撮っている。二人だけの世界が広がっているが悔しいけどとても絵になっていて嫌悪感なんて全く抱かない。  『あぁー…そうゆう事ね、、』 アメリカじゃ当たり前に見る光景だろうけどまだそんな免疫力(めんえきりょく)は備わっていない。ましてや彼と一緒に見る光景にしては刺激が強すぎる。  「こんな素敵な場所に一緒に来れて最高な背景で好きな人とキスなんて羨ましいな」  『ダメだよ、子どもが見るもんじゃない。まぁ 奏くんも大人になって、いつかそうゆう相手が出来たらね』  「いつかじゃなくて今がいいです。」 振り向き様に奏の顔が近づくのを確認する余裕もなくキスが唇に落ちた。  ほんの一瞬だった。触れるだけの優しいキスの筈なのに口唇にずっと張り付いて取れない感触。顔を離した彼の表情は柔らく少し紅潮した頬ですぐ目を逸らした。  『ちょ、奏くん…』  「俺……子どもじゃないです、、」 一言ポツリと言った。勢いだけのキスじゃなく、子どもじゃないって証明したいキスなのか。  「あっ!…写真撮り忘れた。」 そう言ってニコリと笑って見せる彼をやはり理解不能と呼ぶしかない。 ここはアメリカでこんな絶景を前に気が大きくなるのも分かるけどそんな簡単にキスなんて。 けれどこのぐらぐらする想いに確信した事が一つだけあった。  「あーいたいた!」 走ってきた間宮の声にハッと現実に戻された。  「どこに行ったかと思いましたよ!」  『あっ、すいません勝手に……ちょっと写真撮りたくて。もう撮れたので大丈夫です』  「じゃ、車戻りましょう!今日のホテルはここから15分くらいなんですぐですよ」  千遥は少し気掛かりだった。もしかして間宮に見られてしまったかもと。だけど特に変わった様子もないし、"大丈夫、見られてない"と頭の中で繰り返した。  「ん?大庭さん大丈夫ですか?ぼーっとしてますけど」  『あぁいや、景色がすごくてただ、、』 チラッと奏の方を見ると何も無かったように涼しい顔をしていた。  ホテルは本当にすぐだった。ホテルと言うよりはロッジという方が適切だろうか。ラスベガスの高層ホテルとは違い自然に解け込むようなロッジが幾つも並んでいる。  「今日は僕らスタッフも数名はここに泊まりますので何かあれば言って下さい。」  〈 わかりました!〉  ルームキーを受け取ってそれぞれの部屋に分かれていく。さすがに疲れた様子のメンバー達を見送ってから自室に行こうとした。  「あっ、大庭さん!』 間宮が小走りで後ろから追ってくる。  「大庭さんってお酒好きですか?」  『えぇ。普通くらいの飲みますけど』  「良かった!じゃこの後少し軽く飲みに行きませんか?すぐ歩いて行ける場所にいいバーがあって」  『あっ、えぇ、いいですよ』  「じゃ30分後にここで待ってますね」  一度部屋に戻って準備をしてロビーに降りると間宮はすでに待っていた。"行きましょう"と付いて行く。歩いて数分のバーはこじんまりとした落ち着いた店内。ジャズの音楽がゆったりと流れ、色んな国からの観光の客の憩いの場のよう。  「Hello.What would you like(注文は何になさいますか)?」    地元のイケメンバーテンダーの言葉にあたふたしながらメニューを見る。間宮はそんな千遥を見ながら微笑んだ。間宮が適当に英語で二人分の注文するとすぐにお酒がテーブルに置かれた。    お酒を手にすると無事に撮影の山を終えた2人は仕事を忘れ同世代の男同士の顔になっていた。  「千遥さん、誘いに乗ってくれてありがとうございます」  『いえ、せっかくだからアメリカで一杯くらい飲みたいと思ってたから嬉しいですよ』  「大庭さんとゆっくり話がしたかったんですよ。あ、とりあえず乾杯しましょう!」 音をさせてグラスを合わせると、グイッと勢いよく飲んだ二人。  「あ〜いい仕事をした後のお酒は美味しいですね!」  『えぇ、ほんとに。特に今日は格別です』 お酒も進んで何が食べようと慣れないメニュー表を眉間を寄せながら見ている千遥。  「千遥くん、変わってないね」  『ん?……何ですか?』 顔を上げてじっと見つめてくる間宮と自然に目が合った。  「僕の事覚えてないかな?千遥くん。」  

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