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War51:Las Vegas⑨
朝から快晴で壮大な自然が味方してくれた撮影もとうとう最後日となった。今日のスケジュールは比較的ゆったりで早起きもなし。
撮影場所も宿泊していたロッジからすぐで、みんなもバッチリ目が冴えている。残っている撮影はもう1パターンのジャケット撮影と新しいアー写撮影だ。
「はい!奏くんは終わりだから次は、朋希くんね!」
順番にメイクや着替えをしている6人の後ろで慌ただしくスタッフも最後の撮影の準備に取り掛かっていた。
「千遥さん、昨日の夜どこ行ってたんですか?」
奏はメイクを終え衣装の上着を羽織りながら撮影進行表をパラパラと捲っている千遥に話しかけた。
『えっ?昨日?』
「はい。夜、間宮さんと帰ってくるのが部屋から見えたので」
『あー…夜はちょっと飲みに行ってて』
「2人で夜中に飲みに?ホントにそれだけ?…なんかやらしい。」
少し鼻につく言い方に視線を進行表から奏に変えた。
『ちょ、やらしいって何?そうゆう変なお店じゃないから!って言うか、その言葉2回だよ!やめてよ変態扱いするのは』
一夜開けて奏の様子に変化はなく、千遥は安堵 の表情を見せた。きっとキス自体に大きな意味はなかったんだろう。あんな軽いキス…だってそれ以上何か言われたわけでもないし。
「それで飲みながら2人で何を話したんですか?と言うか、いつのにそんなに親しく?」
『それは、、えーっとー…内緒!』
「あーほらやっぱり、いやらしい!」
そう言えば昨日、間宮さんはキスの事には触れてこなかった。見られてはかったのは幸いだった。10年ぶりに会う先輩にあんなとこ見られていたら言い訳のしようもない。
『もういいから最後の撮影頑張って!今日終わらないと明日の自由行動も無しなんだから』
「それは困ります!だって千遥さんとデートと約束したし。もう行きたい場所もリストアップ済みです」
『デートって、、まぁいいけど行きたい所って?』
「まぁ、ラスベガスの街が一望出来る絶景スポットとか有名な噴水とか…まぁ色々です」
遠足前のワクワクを隠しきれない子どもの様に無邪気な笑顔を見せた。
現地スタッフと打ち合わせを終え戻ってきた間宮はメイク部屋で談笑している千遥と奏が目に入ってじっと二人を見ていた。
「あっ!間宮さん、今日の撮影の順番なんですけど!、、間宮さん?どうしました?」
「あっいやあのー日高さん。あの2人って以前から仲がいいんですか?」
那奈は間宮が指差す方を見と近い距離で話す千遥と奏がいる。
「え?大庭さんと奏くんですか?うーん、取り分け仲良しって訳ではないですよ!大庭さんはメンバーみんなと仲いいし、好かれてると思います」
「……好かれてる、、か。」
「でもどうしててですか?」
「いや、別に。あっ、撮影の順番は――」
間宮の直感が2人をえ捉 えて疑惑が確信に近づいた。
最後の撮影にもなるとメンバーにも余裕が出来、現地スタッフとの呼吸も合ってくる。全てが順調で余裕を持って終わりを迎えられそうだ。
「無事に撮影今日で終わりそうですね」
『はい。あっという間に終わりましたね、ホント完成が楽しみですね』
千遥と那奈は初めてのDeeperZの大きな撮影を振り返ってマネージャーと担当者と誇らしく顔を見合わせた。
「あっ!そうだ大庭さん、明日の自由時間どうするんですか?今スタッフとミュージカル観に行こうって話してて、人気のミュージカルだから先にチケット取っておこうって言ってるんですけど」
『あー…明日は、ちょっと行こうと思ってる場所があって、、』
「そうですか。分かりました!それじゃみんなで楽しんで来ますね」
反射的に一人単独行動かのように言ってみたけどそれ以上問われる訳でなく会話は終わった。
残すところグループ写真を撮れば終わりという所まできた。岩に持たれたり寝転んだり、レンズに差し込む光はスタジオ撮影では出ないような有機質な絵を生み出す。
「OK!もう少しだけ後ろに下がって!」
カメラマンの声が飛んできて6人が下がる。
「わっ、、!!」
その声と共に後列の端にいた卓士の姿が消え、3メートル下まで滑り落ちた。スタッフも慌てて駆け寄り下を覗くと尻もちをついた形で倒れた卓士の姿があった。
〈 卓士!大丈夫!?〉
メンバーやスタッフ全員が心配する中、なんとか自力で上がってきたが足を軽く引きずっていた。
「すいません!……何とか、、大丈夫です」
『卓士くん、もしかして足を挫いた?』
「うーん……少し痛みはあるけど大丈夫です、撮影は続けられます!」
一旦休憩を挟み、卓士の汚れた衣装をきれいにし撮影は再開された。多少の痛みを抱えながらも持ち前の集中力で見事に切り抜けた。
そして無事に全ての撮影スケジュールを終えた。
〈 ありがとうございました!〉
スタッフ全員で撮影を終えた6人に拍手が送られ現地スタッフも含め全員での記念写真。
初めての海外撮影に不慣れな面もありながらも、ここでしか撮れない映像や写真をファンに見せたい一心で力を合わせ挑んだ撮影。
全員それぞれ感慨深いものがあった3日間が終わった。
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