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War52:Las Vegas⑩
『大丈夫?ゆっくりでいいから。 』
体を支えながら足を引きずって歩く卓士を千遥達の車に乗せる。
「ホントすいません……最後の最後に、、」
『何いってんの。最後の最後だったのが不幸中の幸いだったよ。とりあえず明日は自由行動の日だから安静にして足休めて』
ここから4時間半再び来た道を走ってラスベガスへ戻る。応急処置は擦りむいた箇所の傷に薬を塗る程度しか出来なくて、万が一を考えてちゃんと病院で診てもらうべきと判断した。
『すいません間宮さん、病院って行けそうですか?』
「あっち着く頃にはもう遅い時間だし、今日は厳しいかも。けど明日なら病院いけますよ。行くなら僕も付き添います」
『あっ、いえ!間宮さんの仕事は今日までなので付き添いは悪いです』
「こっちの病院は外国人だと手続きがややこしいし通訳も必要でしょ?」
『えぇ……まぁ』
足を摩 りながら卓士は千遥の顔を見た。卓士の顔を見ると余計に心配が増して放っておけなかった。
『、、すいません。じゃ明日お願いします!』
ただひたすらに真っ直ぐな道に少しずつ夕日が落ちてきて成功を労 うかのように深いオレンジが車を照らした。
初めての経験と挑戦と出会いに感謝しながら大きく深呼吸をする。体全身に潤いを満たしてくれた2日間は過ぎていった。
◆◇◆◇◆
「はぁ〜終わった〜!」
ラスベガスのホテルに戻り食事も終え、それぞれの部屋で疲れた体を休めると共に撮影を終えた達成感と充実感でベッドにボフッと同時に飛び込んだ旬と奏。
「ってか奏は明日どうすんの?」
「ちょっと出掛ける予定だけど。旬は?」
お互い埋めた顔を枕から半分だ覗かせて見合った。
「ちょっと、、俺も行きたい所あるから……」
今日一日ずっとスマホを気にしていて、誰かと連絡を取りあっていたのを奏は知っていた。
「ふーん。誰かと会うとか?」
「は?べっ、別に!一人で行きたい場所に行くだけだし!」
「一人行動はNGだって言ってたけどな〜」
明らかにキョドりだした旬をおちょくって楽しんでいる。旬は顔を上げて奏にブンッと枕を投げた。
「……ってか日高さんとかには言うなよな」
奏もそれ以上深くは詮索 しなかった。知られなくないのはこっちも同じだから。
「そういえば、凌太達は買い物行くって。カメラマンさん連れてプライベート映像撮りらしいけど、卓士は大庭さんと病院行くから無理かな?足そんなよくないのかな?」
「えっ?、、誰と病院行くって?」
「いや、だから大庭さん。あっ!あと間宮さんも一緒かな」
「ちょ、それいつ言ってた!?」
「えっ?さっきご飯食べてる時言ってたけど。聞いてなかった?」
奏のスマホがベッドの上で揺れてゆっくり画面を確認した。タイミングを見計らったかのように、、名前を見て嫌な予感は的中した。
"奏くんごめん。明日卓士くんの病院に行く事になってしまって"
こんなにも千遥からのメールを開くのが怖いと思った事はない。
「……奏?どうしたの?」
きっと悲痛の顔をしてであろう顔を旬に見られたくなくてスマホで覆うように顔の前に持ってくる。何て返事返せばいい?
"仕方ないです。俺は大丈夫なので行って来て下さい"
力なく打ったメッセージをしばらく見つめて送信ボタンを押した。本心は違う、大丈夫な訳なんてない。
"本当にごめんね"
返信はすぐに届いた。その7文字を読むとすぐスマホを伏せて枕を横に投げるように置いた奏。
たった数メールの距離にいるのにすごく遠い。今すぐ会いたくて顔が見たくて抱きしめたい。
だけどそんな事出来る訳もなく…こんな酷い仕打ち、、辛すぎる。
「シャワー浴びてくる!」
カバっとベッドから降りてお風呂場へズカズカと入って行った。
「えっ、待って!俺が先に行こうと……」
旬の言葉も聞く耳持たずガチャッと強く鍵が閉まる音が響いた。
「何だよ、訳わかんないやつ!」
シャワーの量を最大にして温度も上げ体に打ち付けるように浴びた。髪に付いたスタイリング剤やメイクと同じようにこの歯痒い気持ちも簡単にこの水で剥がせられたらいいのに。
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