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War56:Secret Lovers②
帰国から3週間が経った。しばらく捻挫治療の為、休暇を取っていた卓士も来週からの新曲プロモーション活動に参加する。最後の検査として千遥は仕事の前に卓士を病院に連れて行った。エコー検査の画面を見ながら足に直接触れていくつかの質問に答える。
「よし。うん、経過もいいしもう完治だね。」
「ホントですか?じゃもう踊っても大丈夫ですか?」
「もう平気だよ。」
かかりつけ医の言葉に笑みが溢れて足取り軽く病院を出て駐車場の車に乗り込んだ。
「大庭さん、病院付き合ってもらってありがとうございました!」
『ううん。僕も卓士くんの怪我気になってたし、とりあえずこれで安心だね』
事務所に向かう車の中で助手席の卓士は笑顔を見せた。
『そう言えば卓士くんとこうやって2人きりでゆっくり話すのは初めてかな?』
「そうですね、、なんだか照れ臭いです」
少し照れた素振りを見せてポリポリと頬を掻いた卓士。
『しばらく自由に動けなかったから体が鈍 っちゃったかな?少しずつ戻していかないとね!』
「はい。僕みんなの中で一番ダンス下手なくせに怪我で更に遅れをとって少し焦ってたんですけど、今日から挽回 します!」
彼はメンバーの中で一番ダンス経験が浅いけれど、一番真面目で努力家なのは知っている。自分の意志で有名な大学に通いながら仕事もこなして、なかなか真似できる事じゃない。
『なんとなく、僕がDeeparZのファンだったらきっと卓士くんを好きになってるね』
「えっ!?急に何ですか?」
『うーん。なんかこう、応援したくなるって言うか一生懸命さが伝わるって言うか。ファンの子達は上手い下手だけじゃなくて、そうゆう部分を見て好きになるんだよ』
「……僕この仕事するまではこの女の子みたいな顔は好きじゃなかったし、チビだから子どもの頃から女子だ!ってずっと揶揄 われてて」
下向き加減で自信無さげに言う卓士をハンドルを握ったまま静かに聞いていた。
「だけど戸川さんにアイドル界ではそれは大きな武器になるって言われたんです。それまでいい大学を出て普通に就職する事しか頭に無かったけどそうゆう道もあるんだなって」
本当に戸川さんは何人の人を救ってきたのだろう。かくゆう僕もその一人だけどやっぱり頭が上がらなくて業界人としても男としても尊敬出来る人。
『じゃ頑張って行こうね!僕も全力でサポートするからさっ』
「はい!」
事務所に着いて部屋に入ると那奈の明るい声が飛んできた。
「あっ!大庭さんお疲れ様です!あれ?卓士くんも一緒?」
『さっき病院付き添ってきたんですよ』
「皆さん、ご心配かけました。もう治ったのでまた頑張ります」
那奈や周りのスタッフに迷惑かけた事を申し訳なさそうにペコっと頭を下げた。
「全然よ!治ったなら良かったね」
そう言った那奈はパッと千遥の顔や服を見た。
「あれ?何だか大庭さんがハイネック着てるの珍しいですね。しかも眼鏡かけるんですね?」
さらりと那奈に言われてドキッとした。
『えーっと、、何だか今日首元寒くて……』
まさに昨日彼に吸われた首元、、今朝、鏡を覗くとしっかり跡になっていて慌てて隠すようにクローゼットの奥から引っ張り出してきた服。眼鏡は連日の寝不足の充血隠し伊達メガネだ。
彼は朝早くから元気に学校へ行ったけど、付き合って早々17歳の彼氏にアサラー男子は体力の違いを見せつけられた。
「あっそうだ!今見てた所なんですけどDeeparZの新しいアー写とホームページが完成したので見ます?卓士くんも一緒に」
画面に映し出されたのはもちろんラスベガスで撮影した写真。期待以上の仕上がりになっていてとても行った甲斐を感じた。きっとファンの子達も見た事ない新しいDeeperZを気に入ってくれるだろ。
「わ〜すごくいい!」
『本当だ。写真どれも素敵ですね』
ホームページに年齢順に並んだメンバー個別のプロフィールを一人ずつ開いていく。写真はもちろん生年月日や趣味特技なども表記されている。
"栗栖 奏 5月29生まれ"
そう言えば彼の誕生日をこの時初めて知った。彼の事知っているよう意外に知らない事ばかりなのかも。自分の話をぺらぺら喋るような子じゃないけど、誕生日も知らなくて恋人と呼べる?
好きな色は?音楽は?アイドルになった経緯 は?
……どうして僕を好きになったの?
そんな事考えながら5月29日を頭の隅にインプットし次のページへクリックした。
「それと今回はリリースイベントでサイン会も行おうと思ってるんです。あっそうだ、卓士くんはどう思う?」
「サイン会面白そう!そうゆうファンの人達との近い距離のイベントは初めてだし僕はやってみたいですね。直接応援してくれてるお礼もしたいですし」
ワクワクした顔で心の底から素直にそう答えた卓士を見てやっぱりアイドルの素質を感じた。こうゆう子がいればグループはもっと良くなる。
みんな個性があってみんな違ってていい。
ただ目的はや目指す場所は同じじゃないといけない。それがグループである難しさでもあるが、グループの最大の魅力なんだから。
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