60 / 67
War59:Secret Lovers⑤
奏の自宅の広い庭にずらりと並んだ車。
祖父の法事で久しぶりに集まった親戚達との会食に、気が乗らない奏も渋々 父親に参加させられていた。
祖父の思い出話をする大人達の傍 らで時間を過ぎるのを待ちながら、目立たぬよう静かに黙々と食事をしている。視線を感じて真正面に座った制服姿の夕菜 と目が合った。
「そう言えば夕菜ちゃんと奏くんは同じ歳だったかしら?」
「はい!春から高校3年生です」
同い年の彼女は父親の姉の娘、つまり従兄弟 になる。夕菜はいまいち知らない親戚の誰かの質問攻めにも愛想よく答えて会食の空気を和ませている。奏はそれにチラッと目線を向けた。
「2人は進路はもう決めてるの?」
「私はずっと中学から陸上部でまだ続けたいので体育大学を目指してます」
進路の話になるとますます黙り込む奏。
芸能界という特殊な世界になかなか理解を求めるのは難しい。真面目に語った所で笑われるのがオチだ。このまま何事もなくやり過ごして時間が過ぎるのを待つ奏。
「それで奏くんは、やっぱりお父さんと同じお医者さんを目指してるのかしら?」
「えっ?あの、俺は、、まだ……」
絶対来ると思っていた質問だが答える準備が出来ていない。
「あー…奏はお父さんみたく賢くないので無理ですよ〜!まだ高校生だしこれからゆっくり考えるんじゃないですか」
隣に座っていた姉の碧が察して空気を変えようとフォローするように言った。
「ちょっとすいません、、トイレに」
そう言って席を立った奏の背中を見ていた夕菜。案の定居心地が悪くて堪らなく抜け出してきた奏は庭のベンチに腰かけた。
このままこの場から逃げ出したい気持ちで溜め息が止まらない。
「奏!何してんの?こんな所で」
「夕菜……そっちこそ何で来たんだよ」
「私もトイレにねー」
「嘘つけ」
同い年と言う事もあり子どもの頃からそれなりに仲良かったが成長するにつれ会う事も減り数年ぶりの再会だった。
「そう言えば12月デビューライブ行ったよ!」
「はっ?デビューしたの知ってたわけ?言えよ来たんなら」
「うん。碧さんから聞いたから。だって観に行くなんて言ったら絶対嫌がってたじゃん!」
「まぁそうだけど……なんか恥ずかしいな。そうゆうの夕菜に見られんの」
夕菜は少し距離を置いてベンチに座った。心地よい風が夕菜の肩までの髪とスカートゆるく揺らす。
「なんかさ、どこの学校に行くだとか就職どうすんの?とか正直うざったいよねー」
「いやだって、夕菜はちゃんと進路決まってんじゃん。それ俺が言うセリフだから」
「私はむしろスポーツしかしてこなかった人生だからそれしか出来ないわけ。今更勉強したくないし」
スポーツばかりしてきた夕菜はいつも肌は日に焼けていて会う度ショートカットの髪にボーイッシュな格好だった。だけど今日は少し伸びた髪に化粧もして、高校の制服が今までの雰囲気と全く違って見える。
「私に陸上しかないのと同じで、奏もそうなんじゃないの?歌とダンスしかないんじゃない?」
「えっまぁ、、そうだけど」
「じゃ自信持って言えばいいじゃん」
「、、なんかさアイドルやってます!って自信持って言えない自分にも腹が立ってさ。そんな周りに言えなくて隠さないといけない事してんのかって」
「なるほどね。でも、少なからず私はライブ見て感動したし元気もらったけどなぁ。人をそんな気持ちにさせられる仕事って立派じゃん!」
その言葉に夕菜の顔を見た。数年会わない間に大人になっている夕菜に励まされてなんとも言えない気持ちになった。子どもの頃から一緒に駆けっこしたり夏休みの宿題をしたり、いい意味で競い合って刺激を受けていた夕菜の言葉は胸に響いくものがあった。
「……なんか、、ありがと」
照れ臭さと嬉しさが入り混じって小声でボソッと言った奏。
「あっ、!髪の毛何かついてるっ」
距離を縮めて奏の髪の毛についたゴミを手で取って払う夕菜。向かいあった2人の距離は近いままで、顔を逸らさず何か言いたげな夕菜の表情を隠すように髪の毛が風に靡 いた。
ともだちにシェアしよう!

