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War60:Secret Lovers⑥

 速度を落としてゆっくりと近づく車。 いないと分かっていながら結局少し寄り道とばかりにレコード会社から奏の家まで車を走らせた千遥。  出会ってすぐ一度彼を送りにここに来た事がある。その時は時間も夜遅くて辺りも暗く家全体が分からなかったけど、改めて見てもやっぱり豪邸のお屋敷だ。 庭には見るからに高級車といった車が数台。綺麗に磨かれたボディが太陽の光を反射させている。  『うわぁ、やっぱりお金持ちって車を何台も所有するのは共通なんだな……』  車や家に見入っているとすっと動く人影が見えた。自然に視線が動いた物体の方に目を追った。  『あれ、、奏くん?』  車内のフロントガラスから見えた奏の姿。  遠くてはっきりと分からないけれど、誰かと話している。しかも向き合ってかなり近い距離の様に思えてスカート姿から女性だと判断出来た。  "お姉さんかな?"と少し身を乗り出して前屈みで覗き込む様にハンドルに:もたれ掛かる。パッと見えたブレザーの制服姿の女の子の手は奏の頭に触れていた。 その瞬間ドクンッと聴こえてきそうな心臓の音。それ以上見ていられず逃げるようにその場を去った。  彼の家に女の子がいた。お姉さんと思いたいけど高校の制服着ていたし、明らかに違う事も分かっている。"誰?どうゆう関係""何してたの?"クエスチョンマークだらけの頭の中はパンクしそうでアクセルを強く踏んだ。  『わっ!!』  考え事していたら赤信号に気付くのが遅れて急ブレーキをかけた。体が前に乗り出して助手席の鞄が下に落ちる。鞄の中から飛び出した出来上がったばかりの新曲サンプルCDが床に散らばった。  自宅マンションの駐車場についてもなかなか車から動けずにいた。同世代の可愛い女の子、、正直すごくお似合いで釣り合うとはこうゆう事って見せつけられた気分だった。  アイドルなのは置いといて、17歳高校生の正解の恋愛の形。しばらく車のシートに体重を預けて頭の中を整理していた。 ◆◇◆◇◆  「おはようございます!」 翌日事務所のデスクにいる千遥に声をかけた凌太。いつもより早く出勤し、デスクでボケっとしてるうちにメンバーやスタッフが徐々に集まり始めていた。  『あれ?、、凌太くん今日は?』  「えっ?今日は事務所で打ち合わせですよ。ほらサイン会とイベントの。あと衣装合わせって聞いてますけど違うんですか?」  『あぁー…そうだったよね!いや合ってるよ!たぶん奥の部屋に日高さん達いるはずだから』  昨日は自宅に戻ってからも、あの事ばかりが気になって今日の業務内容もすっかり忘れていた。 時間差でメンバーが入ってくるが、奏だけの姿がまだ見えない。チラチラ入り口の方に気を取られながらデスクで仕事をしている。  『そうだ、、資料忘れてた……』  立ち上がりコピー機のボタンを力なく押した。これからの打ち合わせ資料の印刷すら忘れていた。機械の隙間から漏れる光が眩しく感じて目を細める。  「千遥さん!おはようございます!!」 すぐ後ろから聴こえた奏の声にピクっと小さく反応した。  『あっうん、、おはよう』  目を合わさずコピー用紙が出てくるのをただ見ながら背中で答える。  「あれ?何か元気なくないですか?って言うか、昨日何度も電話したのに何で出てくれなかったんですか?メッセージもスルーだし」 声で拗ねているのに気付いたが振り返らず話を進める。  『あー…昨日は家帰ってすぐ寝ちゃって。ごめん、、なんかバタバタしてたから』  「それなら朝返信してくれたらいいのに」  『……それに奏くんも昨日は色々と忙しかったんじゃないの?誰かと会ってたりとかさ!』  嫌みたらしく強く口調で言ってしまった。こんな風に言うつもりはなかたのに、思い出せば出すほど嫌な気持ちになって。イライラしてきて、、何だろうか……これはもしかして嫉妬?  「えっ?誰って?」 声色も変えずそう返した奏に更にいい返す。  『別にお取り込み中だったならわざわさ連絡とかしてくれなくてもいいよ』  「ちょっ、千遥さん!何言って……」 肩を掴んで千遥を振り向かせようと手をかけた。  「大庭さーん!コピー出来ましたー?」 少し離れた廊下からスタッフの声が響いて2人でそちらに顔を向けた。  『あっ、はい!今行きます』 印刷された用紙をサッとまとめて小走りで走って行った千遥。  椅子とテーブルが並んだ打ち合わせルームに全員が適当に席につくと千遥も端っこに腰掛けた。奏も隣にやってきて弱い声を出した。  「……千遥さん、あとで話がした…」   「あっ、サンプルCD忘れちゃった!」  那奈が辺りを見回しながら言うのを聞いた千遥がすぐさま声を上げる。  『あっ、僕が取ってきます。始めてて下さい』  そう言ってデスクまで取りに席を立った千遥。  ガサガサと鞄の中にCDを探して手に数枚を持って出て行くと、ドアの前に奏が立っていた。深刻な面持ちで視線が鋭く突き刺さる。  「奏くん…何してるの?」  『ちょっと千遥さんと話がしたいです』  『べ、別に話す事ないけど、、いいから部屋戻って!今打ち合わせ中でしょ』  奏の横をすっと通りすぎると千遥の手をガシッと強く掴んで引っ張って大股で歩いていく。誰もいない静かな隣の部屋に入るとガチャと鍵を閉めた。  『ちょ、、っと何!?』  「何で無視するんですか?言いたい事あるなら言って下さい」  『……とりあえず痛いから手離して。話は後にして』  「嫌です。話してくれるまで離しません」  

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