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War61:Secret Lovers⑦

 『冗談やめて、今こんな事してる場合じゃないでから!』  「こっちの方が大事なんで」  腕を振り払おうとする千遥の体を寄せて、グッと引っ張り顔を近づけて口を塞ぐ。空いた手を千遥の後頭部をしっかり掴んで逃げられない様に固定する奏。 無我夢中で息する余裕もないキスを受け入れる。  ジリジリと壁に追いやられドンっと背中が当たるとウッと千遥の声が漏れた。手に持ったCDがガチャンと大きな音を出すと2人は床に視線を落した。ひび割れたはCDケースを見つめながら肩で呼吸をしている2人。  『ハァ…ッ……ちょ、やめて。…こ、ここどこだと思ってんの!?』  「知ってますよ。誰もいない事務所の部屋で隣にはメンバーとスタッフがたくさんいて、でも千遥さんがそんな態度とるなら関係ありません」  奏の真剣な眼差しに刺激され、さすがに千遥も(ひる)んだ。壁の冷やっとした感覚さえも背中にダイレクトに肌伝るほど敏感になっている。  『……分かったから、、言うから』 そう言うと奏の顔もすっと冷静を取り戻し掴んでいた手を離した。  『……昨日、、家に女の子来てたよね?制服着てた子。それ見ちゃって……』  「えっ!昨日家に来たんですか?」 コクンと頷き、モジモジしながら首に手を添えたり瞬きの回数も増える千遥。  『そうしたら奏くんがその子とすごく親しくしてたと言うか……くっ付いてたみたいな、、』  少しずつ状況が飲み込めてきた奏の表情が緩み始める。つまり女の子と一緒の状況に嫉妬したって事?そう確信すると怒りもどこか遠くへ吹き飛んで嬉しさが込み上げてきた奏。こんな千遥を見るのは初めてで笑みを漏らした。    『、、何が可笑しいの?』  「千遥さん違いますよ。その子は従兄弟です。昨日法事で親戚みんなが家に集まってたんです」  『えっ?、、従兄弟?』  「はい。確かに同い年の子で仲はいいですけど制服違ったでしょ?それに車もたくさん止まってたはず」  確かに車は何台も止まっていた。だけど豪邸にあれだけあっても不自然ではないし、あの平静でない時に制服の違いに気付ける程の余裕なんて無かった。 千遥は早とちりの勘違いが分かると、次第に恥ずかしさが増し頬を赤らめて顔逸らした。  「髪に付いたゴミを取ってくれただけだし、彼女は刺激し合う同士みたいって言うか、兄弟みたいなものなんで」  『そ、そうだったんだ……』  「えっ?千遥さん、、もしかして俺が浮気でもしてるとでも?」  『いや、別にそうじゃないけど!奏くんが僕がいない場所で女の子と2人といるのを見てちょっと……妬いた』  一人で騒いで嫉妬して怒ってバカみたいだ。 アイドルの彼は色んな場所で声をかけられて黄色い声援も浴びて好かれて愛される人。 これからもそんなシーンにいくつも出くわすすだろう。その度にこんな風な思いをするのかな。  そんな事考えながらやきもきする千遥を見て察した奏がギュッと抱きしめた。  「千遥さん、、可愛いすぎます。でも心配しないで下さい。何があっても俺には千遥さんだけですから」  『……うん。僕もだよ』  「じゃぁ!一つお願い聞いて下さい!」  『何いきなり!?』  「仲直り記念って事で、エッチを解禁……」  『あーー!!』  大きな声を上げて体を離した千遥。ひび割れたCDケースを拾って中身の状態を確かめる。  「良かった〜中身は無事だ。って言うか、いい加減戻らないとまずいよ!」  そう言ってバタバタと部屋を出て何事も無かったかのように隣の部屋に入り、打ち合わせに混ざった。ひび割れたCDケースもまた2人の痴話喧嘩(ちわげんか)の思い出として大事にしまっておこう。 ◆◇◆◇◆  家に帰宅した奏はベッドに横たわりスマホの待ち受け画面を見つめていた。ラスベガスで撮った千遥とのツーショット写真。 画面の千遥を指でなぞりながら今日の出来事に顔の筋肉は緩みっぱなし。  着信音と共に待ち受け写真がパッと消えて表示された名前を見て電話に出た。  「もしもし?夕菜どうしたの?」  「奏ごめん。昨日リビングに忘れ物しちゃったかもしれなくて、今家なら見てもらえる?」  「いいよ。ちょっと待って!」 ベッドから飛び降りると小走りで部屋のドアノブに手をかける。そして一瞬考えると手を離した。  「あっ、、夕菜。その前に一ついいかな?」  「えっ?何?」  「ごめん。嘘付いてた事あるんだ。」 しばらく沈黙が続き電話の向こう側の反応はない。  「昨日さ告白された時、こうゆう仕事してて恋愛出来ないから付き合えないって言ったじゃん」  「…ちょっと更に傷を(えぐ)る気?」  「違う!夕菜には嘘つきたくないから言うんだ……本当は好きな人がいて、、その人を大切に思ってる。それが本当の付き合えない理由」  小さく溜め息のような呼吸音が聴こえて夕菜の心情が感じられる。  「そっか。でもホントの事言ってくれてありがとう。深くは問い詰めないけど、その人の事絶対泣かしちゃダメだからね!」 声のトーンが戻っていつもの強気の夕菜の言葉に安心した奏。  「それともし変なファンに付き纏われたりしたら言って!やっつけてやるから。」  「ハハッ。それはすごく助かる!」  「私は奏の一番の理解者でもありファンの一人だから!」  いつまでも変わらない友情と変わらない関係。 そして変わっていく愛情と変わっていく関係。 そのどちらも必要不可欠でそこに位置付けはない。

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