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War62:2nd Single OUT
4月、新生活が始まり暖かい気候と桜が街を彩 っている。そんな中CDショップには女の子達の長い行列が出来ていた。
「DeeparZのシングル購入列はこちらでーす!!」
店員の声が響く発売日当日。店内にはポスターやパネルが並び、どのショップでも大きく展開されていた。初めてのサイン会に応募する為、一度に数枚買うファンの事も多くイベント効果がここぞと表れている。
「絶対サイン会行きたいよね!」
「そう言えばSNSの写真見た?これ」
レジに並ぶファンの会話。スマホの写真フォルダには通学中の卓士と奏の姿が数枚保存されていた。
学校名こそ明かされてないが調べればすぐに特定出来る。制服姿の奏はなおさらだ。
「制服姿も超かっこいい〜!なんか見た事ある制服なんだよねー!」
アイドルとは言え一般の学校へ通って普通の学生生活を送っている。人気が出てくるとそう言った私生活まで追うファンも少なからず出てくる。SNS時代の人気者ゆえの悩みだ。
「初回盤売り切れです。再入荷待ちになります!」
発売されたシングルは前回を上回る勢いで売れていく。デイリーランキングも1位を獲得し、テレビやお店など流れる機会も増えればDeeparZの知名度も急激に上がった。
仕事のオファーも日に日に増えメンバーも多忙スケジュールのピークを迎えていた。
◆◇◆◇◆
この日やっと久しぶりの休日を取った千遥は隼斗の家に招かれてやって来た。部屋に入ってトンっとテーブルに置いた袋に疑問の顔で近づいた隼斗。
「えっ!何これ?」
『ラスベガスのお土産だよ!撮影で行って来た時のやつ』
袋を中をガサガサと出てきた物を見つめながら顔を引き攣らせて首を捻 った。
「これは……大統領のフィギュア?、、センスのかけらも無いな、、」
『ちょっと!頂き物に対して酷い言い方だな。わざわざ買ってやったのに〜』
「あぁ、悪い!あっ千遥もビールでいいか?」
冷蔵庫からビールを出して千遥に手渡すと積まれた段ボールの間を擦り抜けてソファーに座る隼斗。
『サンキュ。それにしても引っ越しなんてどうゆう心境の変化?あっ!分かった!いよいよ……結婚!?』
「ブー!はずれ」
『じゃぁ何?前のマンションそんなに長く住んでないじゃん』
「あー…俺さ今の事務所離れて独立するんだわ」
突然の告白にゴホッゴホッとビールを喉に詰ませて咽せた千遥。
『んん''?……何それ?知らなかったよ!!』
「うん。だから今言ったじゃん」
溢れた水滴をティッシュでささっと拭き取るとグッと隼斗に近寄る千遥。
『えー!いつ?何で!?』
「今のドラマの撮影終わるまでだから来月いっぱいの契約かな。まぁ2年前くらいから何となく考えてたんだけどさ」
『理由は?事務所に不満がある、、とか?』
「それはない。すごく良くしてくれていい事務所だよ!だからこそ甘えて居座ってしまいそうなんだけど、自分の力を試したいって言うか。もう一皮剥 いて挑戦したくて」
隼斗とは最近も何度か会ってるのに全然知らなかった。順風満帆で不満もなくて居心地いい環境を変えてまで、更に上を目指そうとする。隼斗の見ている世界はいつも遥か上の方にあって、僕には想像出来ない。
そんな事を思いながら隼斗の顔をじっと見つめる千遥。
「ん??」
『よーし!今日は独立祝いパーティーだ!お寿司の出前頼んでやる!』
「はっ?何それ?」
『安心して、僕の奢りだから!』
「千遥、それ自分が食べたいだけだろ?」
スマホで寿司店を検索しすぐさま電話をかけ始めた千遥の横で"やれやれ"とビールをグイッと飲んだ。
それから5時間ほど男同士のサシ飲みもどんどん加速し空き缶がテーブルを覆い尽くす。完全に酔い潰れて睡眠モードに入った千遥の顔を覗き込んでペチペチと叩く。
「おーい!勘弁しろよー寝るなー!」
『……うぅん、、』
一向に起きる気配がない千遥をそのままソファーに寝かせてすっと立ち上がり、布団を持って戻ってきた。スーッと寝息を立てながら気持ち良さそうな千遥に掛けるともぞもぞと動いて、隼斗の腕を掴んだ。
『……か…なで…』
小さく聞こえた寝言を聞き逃さなかった。
「……奏??ったく一体どんな夢見てんだよ。隠してるつもりだろうけど、本当詰めが甘いって言うか何て言うか。すぐバレんぞ、まったく」
掴まれた手を布団の中に戻して夢の中で幸せそうな千遥を残して邪魔はしないよ。と隼斗は新しいビール缶を開けた。
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