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War66:10 years ago②

新学期が始まり、高校3年生になった奏も仕事の合間を縫って出来るだけ学校に顔を出していた。  開いた窓から緩やかな風がふんわりと入ってくる。窓際席の特権だ。  窓から外の景色を見てフワァ〜とあくびをした奏。新曲プロモーションもまだしばらく続くけれど、千遥に打ち明けてから数日経ち、2人の仲がより深まったような気がして心も満たされている。  相変わらずキス以上の事はしていないけど。  「それじゃ次のページ開いて」 静かな教室に先生のチョークの音だけがカリカリと響いている。  「ねぇ、栗栖くん!あの子達知ってる子?」 後ろの席の女子に背中をツンツンされて窓の方を見ながら聞いてくる。 彼女の目線の先には、校門の外で数人の女の子達が学校を覗いてた。制服は着ていない。在校生ではない事だけは分かる。 手に持っているのは……カメラ?  「何かね他のクラスの友達が、あの人達に栗栖君の事を聞かれたらしいよ」  「俺の事?」  「うん。何時に学校来るかとか、クラスはどこだとかさ……栗栖くんは休んでたから知らないと思うけど昨日もいたんだよ。ねぇ、もしかしてあれって追っかけってやつ!?」  「うーんー…どうだろ?」  奏の学校はそこそこ有名な進学校だ。 芸能活動は学校の大半の人は知っているが、だからと言って騒ぎ立てるような事もなく平穏に過ごしてきた。特に3年生になった今、そんな事にかまけてる余裕などなくクラスメイトもみんな受験に必死だ。  「何だか友達にも迷惑かけてごめん。学校には迷惑かけないようにするからさ」  見た感じファンの子の可能性が高い。だとしたらどうして学校が知られてしまったのか。 初めての事でどう対応すればいいか分からないまま終業時間になる。  「とりあえず帰りは裏から出るか…だけどその後どうしよう…」 ◆◇◆◇◆  大きな袋を抱えてガサガサと音を立てて自宅に帰宅した千遥。中に入ると制服姿のまま奏がリビングでテレビを見ていた。  『あれ?来てたの?学校帰り?来るって言ってたっけ?』  「おかえりなさい。あーいや、学校帰りにそのまま勝手にきちゃいました」  『ふーん。いいけど、、何かあった?』  「あー…いや別に会いたかっただけです」  千遥に心配かけまいと学校での出来事は黙っていた。本当は学校の最寄り駅も警戒して電車では帰れなくて、ふと思い立ったのが千遥の家。 学校から近いのが幸いでファンにも気付かれず何とかたどり着いた。  『あっ、ちょうど良かった。明日渡す予定だったけどこれ持って帰ってね』  「何ですか?」  『ほらこの間のサイン会のファンの子達からのプレゼントとか手紙。スタッフが一通りチェックしたから安心して。あっ、他のメンバーのも入ってるから名前確認して』  ガサガサと袋の中を漁って中身を出しながら話を聞いている奏。プレゼントは衣類やアクセサリーが多く、中にはかなりの値段がするであろう高級ブランドのロゴ入りの物まで見える。    「あっこれ!黒ひげ懐かしい〜!」 "かなで♡これであそんでください" 明らかに子供の可愛い平仮名文字の手紙。それと一緒に黒ひげのオモチャが入っていた。  「小学生の女の子かな?可愛い〜そうだ!これで勝負しませんか?罰ゲームありで!」  『うーん……罰ゲーム?』  『やりましょうよ〜〜せっかくファンの子がくれたんだし〜ねぇお願い〜』 あまり乗り気じゃない千遥の肩を揉みながら甘えておねだりする。  『……じゃ一回だけね。まだ少し仕事残ってるからやらなきゃなんだ』  「オッケーです!」 2人はソファに向き合って座りオモチャの箱を開ける。  『それで罰ゲームはどうする?』  「じゃぁ、負けた方が勝った方の言うことを聞く!ってのはどうですか?」  『えーなんか……嫌な予感がする』  「決まり!それじゃ〜俺から行きます!」  交互に黒ひげの(たる)に剣を刺していく。あっと言う間に隙間は埋まっていき、徐々に本気になり始めた2人の手元の剣が4本になった。  『よーし!じゃぁ〜ここだ!』 刺したと同時に黒ひげ人形が飛び跳ねた。コロコロと足元に転がった人形を拾い上げた奏。  「はい!千遥さんの負け〜〜!」 不服な顔した千遥は勢いよくソファにもたれ掛かって天を仰いだ。    「じゃ俺のお願いはですね……」 奏は自分のブレザーのボタンに手をかけて一つずつ外していく。意味深な笑みを含んで脱ぐと次はシャツに手をかける。  『えっ、、ちょ、冗談やめてよね』  「、、はい!これ着て下さい!」 ポンッと脱いだ制服を千遥に渡して言った。  『着るってこれを…?』  「そう。制服姿の千遥さんが見たいんです!ほらだって、アイドル時代は今の僕と同じ高校生だったんですよね?だからその時の千遥さんを見たくて」 催促するように制服をポンポンと叩く奏。  『わ、分かったよ……』  観念した様子で制服を抱えて寝室へ走って行った。上半身裸になった奏は辺りを見回し、千遥が帰宅した時に脱いだパーカーを軽く羽織って不適な笑みを浮かべた。 

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