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War68:10 years ago④
『えーと……これはその…』
言い訳すら思いつかないくらい思考が停止していて、ただ何かを勘繰 ったような美織の視線が痛い。
「あーー!!もしかしてー!」
マンション中に響くような声を上げると千遥を素通りし中に靴のまま入り奏で前でピタッと止まる。
「DeeperZの奏だよね!?栗栖奏!!」
「えぇ……そうですけど」
キャッキャッとはしゃぎ立てて奏に穴が開きそうなくらい凝視している。
「やっぱり!超カッコいい〜可愛い〜♡って言うか何でここにいるの?お兄ちゃんとどうゆう知り合い!?」
"はぁ。とりあえず助かったか"と千遥はホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、玄関に置かれたスーツケースに気付く。
『美織!それはこっちのセリフだよ!なんでいるんだよ!?これは何だよ?』
「えっ?何ってメールしたじゃん」
『メール?何それ?知らないし!』
「先週したの見てない?一週間、お兄ちゃん家にお邪魔するって」
『何だよそれ?勝手に決めんなよ!』
兄妹喧嘩に入る隙もなく気まずそうに見ていた奏がそろりと声をかける。
「あのー……」
『ん?あー奏くんごめん!あっ、とりあえず服着替えて今日は帰って!』
「えー、なんでいいじゃん!私まだ喋りたい!ってかまだ二人の関係聞いてないんだけど」
『美織は黙ってて』
千遥はそそくさと制服を脱いで着替え終わるとプレゼントが入った紙袋を渡しバタバタと忙しく奏の腕を引く。パチパチと目配せをしてドアをパタンと閉めた。
「えっ!あっ、、待ってちょっと千遥さん!」
ぽつりの玄関前に棒立ちの奏。ただ外に出ても尚、ドア越し二人の言い争いが聞こえて兄妹の仲の良さにクスッと笑ってしまったが少し物寂しくも感じた。
「一週間……しばらくお預けかぁ、、」
だけど一歩進んだ気がした。少し強引なところもあったけど、触れた千遥の肌の感覚を思い出しながら夜の涼しい風が当たる駅までの道を歩いた。
◆◇◆◇◆
翌日は3紙の雑誌撮影で朝からずっとフラッシュを浴びているDeeperZメンバー達。
「それじゃ少し休憩で!」
そう言ってお昼ご飯を渡される。スタッフが立ち去ると食事をする合間に、奏はそれとなくメンバーに昨日の学校での出来事を軽く話してみた。
「何それ?学校に?それヤバくない?」
「学校が知られてるって事だろ?」
「カメラ持ってたって事は……撮影目的?あっ、ちょっと待って!えーっと…あっあった!」
旬は真剣にスマホをいじって何かを探して見せる。スマホ画面には校舎から出てくる制服姿の奏の写真や駅のホームで電車を待つ姿まで写っている。
SNSで拡散され既に広まって、コメント欄に学校名が書いていた。昨日居たファンもこれで知ったのだろう。
「まぁ普通に考えれば学校内の誰かが情報を流したとしか思えないんだけど、見たところ校舎内の写真が無いって事は外部の人間って事になるな!」
「おぉ確かに!光さすが!」
「とりあえず日高さんには言った方がいいんじゃない?」
「いや、それはちょっと待って!まだ言わないで欲しいんだ」
奏が躊躇するには理由があった。
デビューが決まった去年夏頃に一度、事務所から打診されていた。芸能活動しながら普通の学校に通うには何かと大変だからと芸能科がある、いわゆる芸能人が通う高校に編入を勧められた。
そうゆう学校なら学業と仕事を両立させ易いしセキュリティが万全と言う理由もある。
まだその頃はこんなにすぐに忙しくなると思ってなかったし、何より親に隠していたからそんな事を言える訳もなく。そんな事したらますます反対されて活動すら出来なくなるかもしれない。
とりあえずまだこのまま学校には残りたい。
それに那奈に言えば千遥にの耳にも必ず入って余計な心配をかけてしまうと思ったからだ。
「まぁ奏がそう言うなら黙っておくけど……」
「とりあえず学校行く時は気をつけて、何かあったら俺たちに言って。あっ、卓士も大学生行ってるんだから気をつけて!」
「ありがとう」
問題は山積みだけど、とりあえず大事な新曲プロモーション中は仕事の事に集中しないと。
今は大事な時期だし!と気合いを入れ直した。
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