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War70:Curse of age

 「えっ、マネージャーにですか?」  『うん……3ヶ月だけなんだけどね』  自宅のクローゼットの中で服の間に身を隠しスマホを耳に当てている千遥。美織がいつ帰って来てもいいよう万が一に備えて隠れて奏と通話をしている。  「それじゃDeeperZの現場に来る事も無いって事ですよね?」  『うん……だいぶ減っちゃう、、かな』  「あぁぁ!家には妹さん居て行けないし仕事場でも会えない。おかしくなっちゃいそうです!」  『大袈裟だよ。けど、るりちゃんのオフの日はそっちに行けるし全く会えない訳じゃないよ』  「るりちゃん、、ねぇ」  早くも親密さが伝わる名前呼びをしている事が気にかかって声のトーンを下げる。  「千遥さん、浮気したら許しませんから」  『ちょっと酷いな、する訳ないでしょ!』  バッと立ち上がるとバサバサと頭の上に会った服が落ちて埋もれながら話し続ける千遥。  「えっ、何の音?千遥さん大丈夫ですか?」  『痛……ッ、大丈、、夫』  自分の家の中でもコソコソしないといけないこの状態を早く抜け出したい。  『ちゃんと忙しくても毎日連絡はするから』  「はい。もちろん俺もしますよ!」 そっとボタンを押して通話が終わった。この生活もしばらくの辛抱だが、会えないと思うと会いたい気持ちが(つの)っていくばかりだ。    それから5日経ち千遥はマネージャーとして倉持るりの現場で忙しく動きまわる。久しぶりに若い女の子のマネージャーに付いて苦戦していた。 それは体力の面だけではなく別の意味でも、、    『あーもう2時だね。次の撮影まで時間あるしお腹空いたよね。何か買って来ようか?それとも食べに行く?』  雑誌の撮影を一つ済ませて控え室でスマホを弄るるりに聞いた千遥。  「いえ、太るんで大丈夫です」  『でもほら、まだ撮影続くし何か食べた方かいい…』  「食べるか食べないかくらい自由にさせてくれませんか?」  『……そうだよね、、ごめん。あっそうだ!明日から新しいドラマのクランクインだよね。頑張ろうね!』  まだ慣れない女優業に不安であろう、るりを励ますように言った。  「別に、ただの主人公の友達役なだけなんで」 バッサリと顔の表情一つ変えずに言い捨てて台本を見ている。  『で、でも人気少女コミックの実写化で注目されてるし友達役でもキャスティングされたのは凄いよ!頑張れば評価されるよ』    るりは中学生からティーン雑誌で表紙を飾る10代に大人気の読者モデルだった。21歳になってティーン誌を卒業して次のステップに進む大事な時期とも言える。演技はまだまだだけど来たオファーは積極的に受けていた。女優として新たな道を歩き出す為に。    「あの、評価される事に何か意味ってあるんですか?別に主役じゃないしそんな騒ぐほどじゃないと思いますけど」  『えっ、いやっ、だけど……』 予想外の返答に言葉に詰まっている千遥に冷たい視線に向けるるり。  「そうゆう言葉とかいらないんで。それと台本覚えたいんでしばらく話しかけないで下さい」  『あっ、うん。ごめん……』  そう言って台本を取り出したるり。そっと控え室から出た千遥は自動販売機で缶コーヒーを買い椅子に腰掛けて溜め息をついた。  そういえば戸川からはマネージャーの体調崩したとしか聞いてなくはっきりとした原因は知らないまま。これはもしかしてストレスとか……だとしたらまた厄介な事を引き受けてしまった気がする。  3ヶ月なんて余裕と思っていたけどこれはすごく長い3ヶ月になるかもしれない。 るりとの壁を感じながら考え込んでいると冷たい缶コーヒーが温くなるほど時間が経っていた。

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