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War72:Curse of age③
6人の男の子が揃えば誰かしら喋っていたり食べていたり騒がしい車内。そんな日々に慣れていたせいか、いつも以上に静かで長く感じる現場までの道。
千遥は運転席からサイドミラーをチラッと見て話す内容とタイミングを測っている。ミラーに映るスマホからひと時も目を離さないるりは20分間この状態だ。
『、、今日の撮影は外もあるから天気良くてよかったね』
困った時は天気の話題を出してしまうのはどうしてだろうか。二人だけの車内で聞こえないはずはないが後ろから返事はない。
よく見ると耳に掛かる茶色の髪からワイヤレスイヤホンが見えて、"なるほどね"と千遥はミラーから目線を外して運転に集中した。
現場に着いて、早速るりはヘアメイクをし衣裳に着替える。ドラマ出演は初めてではないが主役ヒロインの親友役で今までで出番もセリフも格段に多い。
ただ、るりはいつもと何ら変わらないペースで緊張感や高揚感などを感じる事なく相変わらず感情を出さない。そんなるりの演技を初めて千遥は側から見守るように見ていた。
本番が始まれば顔つきも変わってプロの顔になる。昨日見た誌面の中でも色んな表情が出来て同じ人とは思えないくらい様々な表現力があって千遥も関心していた。
「はい!OK!お疲れ様!」
監督からも褒めの声が飛んで撮影も順調に進んでNGなく出番を終えた。広い控え室に同じ生徒役の同世代の子達がお喋りで盛り上っていた。しかし、るりは輪の中に入るでもなくすぐに着替えを終えて出てくる。
『あっ、るりちゃんもう着替えたの?』
「大庭さん今日は仕事これで終わりですよね?」
『うん。思ったより早く終わったから良かったら早いけど晩ご飯でもー…』
「私用事があるので一人で帰ります」
『えっ?あっいや車で送るよ!一人には出来ないし』
「ここからはプライベートなのでほっといて下さい。仕事はもう終わったからいいですよね」
『あっ、、うん』
冷たい視線を向けられて反論のしようもなく何も言えなくなってしまった。少しでも距離を縮めたくて雑誌を見て彼女の事を知ろうとしたけど、歩み寄っても分厚い壁がなかなか破れない。
いつもは小さなバッグ一つを肩から掛けている彼女は何故か今日は大きなトートバッグを持っていて随分と時計を気にしていた。
「それじゃお疲れさまでした」
耳にイヤホンを入れて現場から足早に去った彼女の背中を見ているだけ。仕事上の関係だし3ヶ月の臨時マネージャーにプライベートを覗く権利もないかと千遥一人車に乗って現場を後にした。
行きも帰りも静かな車内に音楽を流す千遥。帰宅ラッシュの渋滞にハマって"はぁ"と大きな溜め息をつく。頭の中は、るりの事でいっぱい。そんな千遥には鞄の中で震えるスマホには気付かずに。
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