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War73:Curse of age④
スマホを耳に当てて呼び出し音だけを聞いている奏はエレベーター横の椅子に座って電話を切った。
発信履歴には"千遥さん"の文字が並ぶけれど着信にはその名前が見当たらない。
「毎日連絡するって言ったのに、、嘘つき」
約束通り毎日千遥への連絡は欠かさない奏もこの数日間、電話はおろかメッセージの返信もあまりない千遥にボソッと不満を漏らした。
「奏くんお待たせ。駐車場なかなか空いてなくて遠くに停めちゃった」
エレベーターから小走りで走ってきた那奈は浮かない顔で俯く奏に近づく。
「ん?どうしたの?あっ!もしかして緊張してる?まぁ無理もないよね、初めての単独の仕事だもんね」
「あー…はい」
「でも大丈夫よ!一人じゃないしここもデビュー前に来たことあるでしょ?今日は顔合わせと簡単な打ち合わせだけだから。それじゃ中入ろっか!」
この日二人は所属するレコード会社、KOSレコードに来ていた。初めてグループではなく奏一人に仕事のオファーが来たからだ。それも音楽番組のレギュラーアシスタントという大役と言う事あり那奈もかなり気合いが入っていた。
「失礼します」
ノックをして那奈に続いて奏を頭を下げながら打ち合わせルームに入る。口の字型に並んだ椅子とテーブルがあり、すでに中にいて座っていた男性二人と目が会った。見た事あるその顔に那奈と奏もすぐに誰だか分かった。
「どうも1 on 1の中崎朔です!よろしくお願いします」
一緒にいた男性マネージャーと椅子から立ってその場で挨拶をした。那奈が自己紹介をすると奏も被っていたキャップ脱いだ。
「あー…DeeparZの栗栖奏です。お願いします、、」
二度目とは言えほとんど会話をした事もないし、人気の先輩のアイドルに緊張しない訳はない。オーラに圧倒されて小さく返事をした。
「皆さんお待たせしました。プロデューサーの神田 です」
番組プロデューサーとデレクターの二人が資料を手に部屋に入ってくる。チェックのシャツにジーパンとカジュアルな服装で堅苦しさはなく、40代前半のまだ若い二人だ。
逆にここにいる大人達より同世代のしかも同じアイドル同士の方が意識してしまう奏は、向かいに座ったチラチラと朔の方を見る。
「では6月から一新する"YングMニア "の打ち合わせを始めます。よろしくお願いします」
打ち合わせを進めるプロデューサーの話を頷きながら真剣に聞いている朔は奏の視線には気付いていない。初めて会った日の真面目でアイドルのお手本のようなイメージはそのまま変わらずだった。
番組はすでに若者を中心に人気だ。一年に一度アシスタントを交代し人気MC・YAMATO とアシスタントのアイドル二人が現代の流行りの音楽から、80年代音楽を紹介し時には歌ったり踊ったりするKOSレコードが企画の配信音楽番組。
"ヤンマニ"と略されてグループが違うアイドル同士の絡みが見れるとファンも喜ぶ内容だ。
「そこで!たぶん挨拶はもう終わってると思うけどメインMCのタクヤと一緒にここにいる中崎くんと栗栖くんには、アシスタントMCって形でレギュラーで出てもらおうと思う。えっと、二人は面識はあったのかな?」
「はい!音楽番組で一度。少し話した程度ですが」
ハキハキ返事する朔の言葉に頷くだけの奏。まだ若手な1 on 1だがすでに人気と実力は誰もが知ってる。センターを務める朔はレギュラー番組初めてとは言えトーク力も抜群で業界スタッフからも信頼があった。
「中崎くんの方が年齢もデビューも少し上だと思うから引っ張ってあげてね。勢いある1 on 1とDeeperZの化学反応を是非見せてほしい」
「はい。任せて下さい!」
そう言ってプロデューサーは番組の趣旨や撮影流れなどの説明を始める。そして最後に初回の収録日が伝えられて解散。
部屋を出てお互い下に降りる同じエレベーターの前に並んだ。
「お疲れ様でした!栗栖くん、一緒にアシスタントになれて嬉しいよ。頑張って番組を盛り上げようね」
奏に近づいてニッコリと笑顔で手を出した朔に少し親近感を覚えてゆっくり手を出し握手をした。
「、、はい。頑張ります」
エレベーターで一階について受付スタッフにも丁寧に頭を下げて朔と男性マネージャーはそのまま駐車場に向かって行った。
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