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War76:Curse of age⑦

 返す言葉が見当たらない。心を打ち抜かれるような最もなセリフだったから。僕だって逆の立場だったら同じことを考えただろう。  『そうだよね、、なんだか余裕ない上に自分でどうにかしないとって頑なに考えてた。でも、それが逆にみんな心配させたんだね』  「まぁでも出会った時から千遥さんはそうでしたよ」  『そういう奏くんこそ、最初は何考えてるのか分かんない理解不明な子だったけどねー』    なんだか少しむずがゆいような会話をしながら離れていた数日間を埋める。お互いやはり心地の良い声に安心しながら"好き"の気持ちを噛み締めていた。  「あーそれで電話の用事は何だったんですか?」  『美織がね、、どうしてもDeeperZに会いたいから合わせろってうるさくて。会うまで家に戻らないって言うもんでさ』  「それなら明後日スタジオ練習があるのでよければ見に行きますか?メンバーみんな集まるし」  『ほんと!?いい?邪魔しないから。すぐ帰るし』  「別にそれぐらいたやすい御用です!まー…正直な話、千遥さんと二人っきりで会えたらもっとよかったけどっ」  『……それじゃあすぐ帰らないでおこうかな』  「じゃぁ俺と千遥さん2人で居残り練習決定で」    きっと今の僕にはこういう時間が必要だったんだ。そして寄り添ってくれる相手が居る。そう思うとすっと気持ちが軽くなった。 電話を終えて隣の部屋から出てきた千遥の口元は緩んでいてわかりやすい変化にすぐさま美織に突っ込まれる。  「それでどうだった?、、ってなんでお兄ちゃんニヤニヤしてんの?」  『え?はっ?別にニヤニヤなんかしてないし。あー!明後日スタジオ練習があるから見に来ればって?』  「えっまじ!?行く行く!」  『その代わりこっちの頼み聞いてもらうから』  「いいけど、何すればいいの?」    美織の気が変わらぬ内に作戦を伝えた。ただ頭の中でぐるぐると考えているだけでは仕方がない。ただ単純に彼女が背負ってきたものを知りたいと思った。   ◆◇◆◇◆  翌日いつものスタジオでドラマ撮影が行われた。少し時間押し気味に終わった撮影。少し撮影現場にも馴染んできたようにも見えるけど相変わらず共演者達との距離は一定のままの彼女。  特に楽しさや疲れの感情も口にせず、表情ひとつ変えない謎多き彼女は今日も大きなカバンを肩から下げていた。  いつも通り撮影スタジオから出て駐車場に行き車に乗ると"近くの駅で降ろしてください"とスマホ触りながら単調な口調で言った。  「あー…いいけどもし行きたい場所あるならそこまで送って行くよ。そのほうが楽で……」  『結構です』  話を最後まで言い終わる前に遮るように言ったるりは早く車を出せと言わんばかりの視線を千遥に向ける。 ちょうど夕方の帰宅ラッシュの時間。サラリーマンや制服姿の学生たちが続々と駅に入っていくのが見える。  「お疲れ様でした」  『あっ、明日は休みだからゆっくり、、』  そそくさと車を降りて群衆の波に紛れていく彼女を見ていたが、今日はこれで終わりじゃない。 ダッシュボードに置いたスマホを手に取って電話をかける。  『もしもし美織!?今どこ!?』  「えっと、今駅の改札前」  『今ターゲットそっちに向かった!緑のコートに茶色のブーツ!黒いカバン持ってマスクしてる』  「緑のコート……茶色のブーツ……あ、いた!」  『見つけた?そのまま後追って!』  探偵のように人や建物の物陰に身を隠しながら、じわじわとるりとの距離を縮めていく美織。ホームで電車を待つ間も絶妙な間隔をとって到着した電車に乗り込んだるりを後に続く。  「てか誰なの!?スタイル良くて若そうだけど。誰かくらい教えてくれたっていいじゃん」  『いやー…今は知らない方がいいと思う』  「なんッ、あ!電車乗る!また後でかける」  『オッケー!絶対に見失ったらダメだからな、頼んだ妹よ!』  

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