80 / 81

War79:Curse of age⑩

 「番組の打ち合わせ、カフェですか?」  『う、うん。えっとー…何か飲む?』  「別になんでも」  ドラマ撮影の前に番組の打ち合わせと称してをして彼女とカフェへ来た。本当は彼女と話をしたくて嘘をついて連れ出した。 向かい合わせに座った彼女は窓際に差し込む光を少し眩しそうにしながら来るはずない来客をおとなしく待っている。  「11時でしたよね。もう過ぎてる」  『実はー…番組の打ち合わせっていうのは嘘なんだ』  「は!?なんですかそれ」  『君とゆっくり話がしたいと思って、、嘘ついてごめん』  「話って?そんなコソコソ隠れてするような内容なんですか」  個室ではないが、お客もまばらで落ち着いた照明と観葉植物が目隠しとなって周りの視線や話し声を気にする事もない。 もちろん話とはずっと気になっていたあの事。  『単刀直入に聞くけど、今の仕事好き?』  「何ですかそれ?めんどくさ、、」  『僕は真剣に聞いてる!だから真剣に答えて!』  初めて強い口調で言い返した千遥に仏頂面のるりもさすがに目を見開いた。    「好きって言うか仕事が来たらやるしかないじゃないですか。やりたいとかやりたくないとかで決められる立場じゃないんで」  『だったら辞めてもいいんだよ』  「えっ?」  『君がいま演じてるその役だってやりたい人が山ほどいる。小さな役でもいいから欲しくて頑張ってる役者はいっぱいいる』  「なんでそんなこと言われなきゃー…ただ臨時のマネージャーのくせに変に説教とかしないでもらえます!?」  突然そんな話をする千遥に疑問を感じつつも言われっぱなしで、るりも黙っていられず強く言い返す。  『本当は別にやりたい事あるじゃないの?』  「だから何の話!?」  『デザインの学校!、、行ってるんでしょ』  「……それなんで知って、、」  『ごめん。探るつもりはなかった。オファーは耐えないし来た仕事はちゃんとこなしてる。けど君を見ていてどこか心ここにあらずって感覚がずっと気にかかってたんだ』  気になっていたのは、彼女が追う目線の先だった。ドラマの撮影現場に必ずいるメイクさんやスタイリストさん。メイク道具や衣装を見る顔は演技をしている時より楽しそうで、役に合わせた衣装の着こなしにも自ら提案していた。 "着せ替え人形ではない"彼女の強い主張を感じた。  「どうせいつか言わなきゃと思ってた。だけど言ったら絶対反対されるだろうと思って、、ティーンズ誌でちょっと名前が知られてるだけのガキのくせにって、、雑誌卒業してから自分にできることを模索してたんです」  『…… 10年後までに自分のブランドを立ち上げる』  「それ何で知ってるん、、ですか?」  彼女のティーンズ紙インタビューは全部読んで記憶してある。16歳の彼女の夢はそう書いてあった。周りの子達が夢を歌手や女優と書く中、表紙を飾る彼女だけはファッションを貫いていた。  『昔の雑誌読ませてもらったから。本当にやりたいのはそっちなんだね』  「……仕事には絶対に影響出ないようにします。だから学校続けさせてもらえませんか、、?」  いつも強気な彼女から初めて聞く弱々しい声と懇願の言葉。目を伏せてきっと拒絶されると覚悟しながら言った言葉に聞こえた。  『ねぇ、今受けてる仕事全部終えたら一旦お休みしない?』  「、、どういうことですか?」  『ファッションの勉強本気でやりたいなら今はそれに集中するべきだと思う』  「でも、、いいんですか?」  『前の事務所や環境がどうだったかは知らないけど今は違うよ。ここでは本人のやりたいことを尊重して後押ししている。君のやりたいことを応援したいんだ。間違いなく今、君の転機だと思う』  その時るりの目からこぼれ落ちた涙。きっと今まで多くのことを我慢して戦って夢を持って挑戦してきたんだろう。 その涙と強い意志を僕に見せた彼女を尊敬や誇りにすら思った。    『本気のない人間に魅力を感じない。だから、君はすごく魅力的で素敵な女性だよ』  「、、ありがとうございます」 彼女は涙声でそう言って涙を拭く。泣き顔見られ恥ずかしそうにした彼女は袖で顔を隠しながら笑を浮かべた。  『よし!じゃ撮影まで時間あるしお腹すかない?何か食べようよ!、、でもダイエット中だっけ』  「、、肉。このランチステーキプレートがいいです」  『OK!すいません注文いいですかー?』  同じテーブルに、ジュージューとお肉を焦がす勢いで音をたてる鉄板が二つ。"いただきます"と大きく声を上げて口に運んでいく。本当はとても活発で愛嬌のある可愛らしい女性なんだ。  それは過去の雑誌の表紙見て気付いていた。多くの10代の子が憧れていた彼女はもっともっと高く羽ばたいてまた次の誰かを虜にするだろう。  その時まで僕はそっと見守りながら時々お節介やきのおじさんでいたいと思った。  

ともだちにシェアしよう!