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War83: Jealousy and Sin④
暗闇の中に灯された光はゆらゆらと奏に近づく。だんだんとその光は蝋燭 だとわかって、ケーキの徐々にシルエットが現れた。
ケーキを手に持っていたのは千遥。後ろから那奈やメンバー、スタッフ全員がぞろぞろと手叩きながらハッピーバースデーの歌を口ずさんでいる。
スマホを手にした凌太がその様子を動画で撮影しながら奏の驚いた顔を映す。そして"せーの!"と合図をするとみんなで口を揃えた。
「奏〜!誕生日おめでとう〜!!!」
"消して"と目の前にズイッと出された丸い大きなホールケーキ越しに奏と千遥は目を合わせた。二人出会って初めて迎えた誕生日。
今日は会えないと諦めていた奏は、驚きの顔から喜びの顔に変えるとフッ〜と息を吹いて蝋録は煙になり部屋の電気がつく。
「それじゃカメラに18歳の目標をどうぞ!」
「えっ?目標ー…は、DeeperZをもっと大きなグループにしてファンみんなと長く深く繋がっていける様に頑張ります」
カメラの先の大勢のファンに向けた言葉。アイドルとしての夢を叶えた奏の心からのメッセージに、目の前の千遥も嬉しく笑顔になった。
「それじゃレコーディング戻って終わったらパーティーね!その代わり今日の録音終わらなかったら無しだからね」
「えーっ!マジで!?みんな頑張って終わらそうぜ。なっ、奏行こ!!」
那奈が意地悪に言うと旬が奏の肩を組んで部屋を出て行った。
そして本気を出してレコーディングに挑んだ結果、今日の録音分は予定より早く終わり事務所戻り奏の誕生日パーティーで盛り上がった。
カメラを前に置いてメンバー6人はファン向けにこのパーティーを生配信していた。事務所に届いた、大量のプレゼントを開けたりファンからの生のコメントを読んで答えたり。時間が経つにつれ一気に観覧数も上がっていった。
そんなメンバーの姿を口をモグモグさせながら見ていた千遥。
『サプライズ成功して良かったですね。んっ、それにしても美味しいこのケーキ』
「私のイチオシのケーキ屋なんです!みんなで食べられるような大きなサイズオーダーしたんですよ」
「わざわさありがとうございます。けど事務所でケーキを食べるこの感じ、、何だか懐かしくないですか?」
『ん?、、あぁ!クリスマスのデビュー日も確かイベント終わりの打ち上げでここでこんな風に食べましたよね』
まだ記憶に新しいデビューイベント。その後、まさに、この場所で同じ様にケーキと料理を囲んでお祝いした事を思い出して懐かしい気持ちになっていた。
「騒がしいと思ったら何かやってるな」
戸川がふらっと部屋に入ってきて二人の横に並ぶと、あの日と同じ顔ぶれが揃った。ワイワイと誕生日配信している動画をモニター越しに画面を見ている三人。
「ほぉ〜SNSのフォロワー数が随分増えたな」
『本当ですね。急激に』
「最近は個人の仕事も増えてきてますしね!千遥さんが倉持るりに付いてる間、こっちもバタバタだったんですよ」
『そうなんですか?本当みんな着実にアイドルとしての道を歩みつつありますね』
奏の"YングMニア"のレギュラー決定以降、他のメンバーも同じ様に個人での雑誌やバラエティーへのオファーがあった。
「そこでだ、千遥くん!」
『あっ、はい?』
「最近、日高くんとも話したんだけど正式にDeeperZのマネージャーをやって欲しいと思ってるんだがどうかな?」
戸川からの突然の言葉に様々な思いが駆け巡った。もちろんDeeperZの近くで見届け彼らのやりたい活動ができるように全力を尽くすマネージャーと言う立場には魅力を感じる。
けれど奏との距離が近過ぎる事に多少の不安があった。今まで恋人とは言え一定の距離で仕事をしていた。四六時中一緒にいる関係はお互いにとって良い方向に進むのかわからない。
「私からもお願いします。千遥さんなら私も安心だし6人もそうなると絶対喜ぶと思います!」
「やってくれるかな!?」
『…えぇ。もちろん大丈夫ですけど』
「じゃ決まりだな!この後少し残ってくれるか?今後の打ち合わせするから」
『あっ、はい。わかりました』
パーティー配信が終わりメンバーは明日朝早い仕事の為すぐに帰宅。奏は大量のプレゼントを持ち帰る為、社用車乗って送っていく事に。運転手と一緒に手分けしてファンの想いが詰まったプレゼント達を後ろの座席に丁寧に乗せていく千遥。すると後ろに奏の姿が見えた。
「ありがとうございます!」
「オッケイ。何とか全部乗せられたからこのまま自宅まで行くよ」
そう言って運転手が運転席に乗り込む。ドアが閉まって運転席に声が聴こえていないのを見計らって千遥に顔を近づけた奏。
「千遥さん、嘘ついたんですね!」
『えっ!?あぁ、泊まりの仕事の事?、、まぁね。静岡ロケは本当だけど泊りは嘘。昨日の夜には戻ってたから』
「、、もう。俺ほんとに忘れられてると思って悲しかったんですからっ」
『ごめん。このサプライズ計画があったからそう言うしかなかったんだよ』
「でも結果的には一緒にいられたからよかったですけど。…今日はもう帰らなきゃダメですか?俺はまだ一緒にい、、」
"おーい!栗栖くん行くよー"と運転席の窓が開いて顔出していうと名残惜しそうに小さく"はい"と返事をした。
『ほらっ早く行って!待たせちゃ悪いよ。明日早いんだから。今日はもう帰ってゆっくり休んで』
「はいー…わかりました。連絡しますね」
『うん。奏くん!今日は心からおめでとう!』
「じゃ、おやすみなさい」
後ろ髪を引かれように奏は車に乗り走り去った。サイドミラーに映る千遥の姿を見えなくなるまで見ていた奏は残り数時間で終わる誕生日を噛み締めて18歳の少し大人へのスタートを切った。
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