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War88: Jealousy and Sin⑨
スマートにカードを出す朔の横で焦っている奏は鞄の中から財布を出して開いた。
何度数えても千円札が4枚あるだけ、もちろん高校生でクレジットカードなんて持っているわけもなく。
「ねぇ朔!ほんと俺今手持ちなくて、すぐ返せないよ、、」
「別に返す必要はないよ、俺からのプレゼント。ほらっ5月誕生日だったじゃん。だいぶ遅くなったけどね」
「いや、けどこんな高いもの」
「そう?そろそろこれくらいの値段の物を身に付けておかなくちゃ。奏だってもう人気アイドルでしょ。見た目は一番の基本っ!」
そうは言ってもまだ高校生の価値観では15000円は安い金額と言えない。確かに個別の仕事もするようになってもらえる額が増えた。
おしゃれだって気を使うのは当たり前だしいつどこで誰に見られていてもカッコよくいるべき。
アイドルとはそういう職業だと朔は遠回しにそう言ってるようだった。
「ありがとうございました。また伺います」
「こちらこそ来てくれてありがとう。最近若い女性のお客さんも増えたのも中崎くんのおかげだよ。プレゼントで買う子もいるけど、メンズの服をかっこよく着るのがブームみたいで。最後に3人で写真撮っていい?」
服の入ったショッパー二つを手渡しながら店長は朔と奏の間に入って三人並んでパシャパシャっとスマホで写真を撮る。
そして店員全員に見送られながらお店を出た。
「今日は付き合ってくれてありがと。久々にこうゆう普通の事が出来てすごく楽しかった。また誘っていい?」
「もちろん。むしろ奢ってもらってばっかりでプレゼントまでもらって、、」
「遠慮しないで素直に喜べばいいんだよ」
「……そうだけど」
「俺はさこの世界では遠慮したもの負けだと思ってるんだ。強欲でいてなんぼだって。メディアに出てるアイドルはほんの一握りで、有り難くも俺達はそのステージいる。そのステージに長く居続けたいなら、欲は出来るだけ出して相手の言葉には全てYES答える。NOと言えるはかっこいいかもしれないけどそれは地位を確立した人だけ。でも俺達はまだそこにはいないからね」
「んー…なんか深いね」
「奏にはまだ難しいかな。でもさ俺達っていいコンビになる気がしない?奏といると楽しいし、何だか素でいられて落ち着くんだ」
「うん。俺もだよ」
そう言って奏のポケットから覗いたマスクに気づきスッと取ると優しく両耳に触れてかけてあげる朔。
「あっ、マスク」
「忘れてる。ちゃんとつけないと」
「ん、、ごめん」
「じゃ帰ろっか。朔は駅だよね?俺はここからそう遠くないからあっちの大通りでタクシー拾うよ、だからここで。また収録でっ」
「うん。わかった、服ありがと!」
朔は人混みの中に紛れていくと、振り返って大きく手を振って消えて行った。
奏は朔の話を聞いて自分の考えの生温 さを凄く感じて恥ずかしくなった。DepperZは間違いなく上り調子でグループ活動や個々の活動も順調と言える。
奏にとってメンバ一意外で初めて芸能界で友と呼べる朔はなぜか近くにいるのに遠くに感じて、時々怖いくらい冷静な目をする。
中崎朔という人間のまだ一部しか知らないのに興味をかきたてられてしまう不思議な魅力がある。
これこそアイドルになるべくしてなった選ばれた才能なんだろう。入れ替わりも賞味期限も早いアイドルと言う世界に居続ける為にみんな一生懸命なんだ。
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