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War89: Jealousy and Sin⑩

 事務所の電気は薄暗く千遥のデスクだけ明るく照らされていた。奏と別れた後、事務所に戻って雑務をこなし気付けば午後9時になろうとしている。  「おっ!やっぱり千遥くんだ。正式にマネージャーになって現場ばかりで、最近デスクにいなかったよね。まだ仕事終わらなそう?」  『戸川さん、お疲れです。いえもう終わるところですぐ帰りますよ』  「あー千遥くん、この後予定あったりする?」  『この後ですか?特に予定は無いですけど』  「オッケー。それじゃ、うまいもんでも食べに行こうか!最近一緒に飲む機会もなかったよな」  『まさか……変なお店じゃないですよね!?』    "芸能界事務所はつながりが命"との理由でこの仕事を始めた頃、よく戸川に芸能関係者御用達キャバクラやスナックは数え切れないほど連れていかれた。  酒を覚えたのもこの時で、案の定眠って記憶をなくす失態もたくさん犯した。  「違うさ、今日はそういうんじゃないから!」  『はいっそれなら行きます!終わったら部屋行きますね』  「待ってるぞ」  そして一時間後、二人がタクシーに乗って降りた店は庶民的な中華料理屋。中に入るとざわざわとした店内を仕事帰りのサラリーマンが席を埋めていた。  『へぇ、戸川さんもこういうところ来るんですか?なんか意外ですね』  「俺が選んだ店だよ!」  後ろの座敷席から聞こえた声に振り向くと座っていたのは隼人だった。4人掛けテーブルにあぐらをかいて、完全に一般人に紛れて周りも気にしない顔も隠さず手を挙げた。  『隼斗っ!何で?』  「元々さ、戸川さんと約束してて千遥にも声かけてみようってなったんだよ」  『何?二人は普段からよく会ってんの?』  「まぁ色々と。独立決めた時期に色々と相談に乗ってもらっててさ」  『それじゃ戸川さんも隼斗の事務所の事知ってたんですか?』  「もちろん。俺なんかで役に立てることがあればってね。いやぁ〜本当はうちの事務所に来てくれてよかったんだよ〜隼斗くんなら即ウチの看板俳優だよ!なんてなっ」  芸能界の恩人でもある戸川の背中を押すアドバイスで隼斗の事務所独立は小さいながらも動き始めた。俳優でもあり会社社長として経営のノウハウや芸能事務所界のしきたりなどを戸川から学んだ隼斗。  「ほんと戸川さんのおかげですよ」  「まぁまぁとりあえず話は座って食べながらなっ」    その時、千遥のスマホに奏からのメッセージが届いて一言"了解"とだけ打って送った。戸川と隼人の前でいつもの変な方向に話がいかないように、あえてそっけなく業務連絡のように返信した。  「ん?何?」  『あー…奏くん。いま家に帰ったって連絡。今日収録の後、中崎くんと出掛けるって。二人だし念のため帰宅後に連絡するように伝えたんだ』    「中崎って1 on 1の中崎朔?タイムリーな話題だな。まさに今彼とのドラマ共演決まってて来週からクランクインなんだよ」  『そうなの!?中崎くんまた出るんだ、、』  「今回俺は教師役で彼が生徒。顔合わせと台本読みは済んだけどすごくいい子だったな。あれでまだ19歳だって」  「でも隼斗だってデビューしたの10代だったろ?当時からすでに落ち着いていて周りをよく把握出来ていた大人だったぞ」  当時の二人のデビューを一番近くで支えた戸川が懐かしく思い出にふけるように言った。

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