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#15
#15
「理久先生の所に?豪ちゃんが行ってるの…?はぁ~~。世の中、分からないね…。はぁ~。いやね、俺もびっくりしたんだよ?あんなバイオリン、聴いた事ないってね…。はぁ~…!まさか、あの子が…はぁ~…」
まもちゃんはそう言いながら、俺の足をモミモミとマッサージしてくれた。
「あの子は…所謂、ギフテッドだった…」
俺はうつ伏せに寝転がったまま…ポツリとそう言った。
すると、まもちゃんの手がピタリと止まって…すぐに、また、モミモミと動き始めた。
きっと…俺が、ギフテッドを毛嫌いしている事を知っているから…驚いたんだろうな。
豪ちゃんに対して、俺は、自分でも驚く程に…好意的な発言を繰り返してるからね…
「…北斗は、嫌いだったじゃないの。豪ちゃんは良いの…?」
ほら…やっぱりね…
クスクス笑った俺は、まもちゃんの足を足の裏でスリスリしながら言った。
「あぁ…そうだね。嫌いだよ。特別扱いされて当然って顔をする奴が嫌いだし、それを手離しで迎合する奴も嫌いだ。でもね…まもちゃん、あの子の演奏は…特別扱いを受けるべき音色を出すんだ。分かるかい?そうでないものと、そうであるものの堺があるとしたら、あの子は振り切って、価値あるものだ。」
頑なになった俺の心の中に、無理やりにでも沁み込んでくる…暴君の音色。
それは、そんな強引さを感じさせない程に、優しくて、温かくて、柔らかくて…心地良かった。
理久が心酔する理由が分かった。
森山惺山が、第三楽章のソロに…あの子の音源を使い続ける理由も分かった。
豪ちゃんのバイオリンは、ただの奏者に留まらない未知の影響力を持っている…
特別な音色なんだ。
俺の言葉に大げさに体を揺らしたまもちゃんは、顔を覗き込んでこう言って来た。
「へぇ~~!意外だぁ~!」
ふん。俺はね、違いの分かる男なんだ。
いっしょくたに否定したりしない…
「それに…」
クスクス笑うまもちゃんの笑い声に乗せて…俺は、はにかんで笑ってこう言った。
「あの子には、弱い…」
「えぇ~~~~~?!」
驚き過ぎじゃないか…?酷くないか…?
眉を顰めてまもちゃんを振り返ると、彼は嬉しそうに瞳を細めてこう言った。
「北斗も、大人になったんだなぁ…」
そんな彼の膝を叩いた俺は、顔を真っ赤にしてこう言った。
「だぁって!あの子は、俺の大ファンなんだ!無碍にする訳に行かないだろっ?ファンサービスだよ?ファンサービス!」
「はぁ~!お兄ちゃんになったんだね~?ふふっ!良いじゃないかぁ!」
顔を真っ赤にしてモゴモゴと口ごもる俺を、まもちゃんはいつまでも茶化し続けた。
まぁ、良いさ…
あの子に弱い事は事実だし、あの子が天使な事も事実。
そして…今、俺が、まもちゃんの隣に居る事も…事実なんだ。
「湖へ行こう…?」
服を着替えた俺は、まもちゃんにそう言った。すると、彼は嬉しそうに瞳を細めてこう言った。
「“シシリエンヌ”を聴かせてくれる…?」
「ふふ…もちろん!」
朝霧の中で…誰かを待つような…“シシリエンヌ”。
あの子は俺のCDを聴いて…そう感じたんだ…
さすが、俺のファンだよね。
着眼点が違うんだ…!
あの子は、ギフテッド…
音色から情緒を読む事が出来るから…音色に乗せた情景を感じる事が出来るから…カルダン氏のパーティーで、躍起になる少年のバイオリンをあんなに怖がったんだ…
だから、俺の音色の変化に、気が付いて…
だから、あんなに泣いて…あんなに怒って、あんなに…まもちゃんの話をした。
豪ちゃん…
お前は…馬鹿に見えるのに、なかなかどうして…いい仕事をしたな。
まもちゃんと一緒に歩き慣れた道を進んで、歩の別荘の前へとやって来た。
目の前に見える湖も畔に佇む別荘も、何も変わらないままの光景に、俺は瞳を細めてこう言った。
「あぁ…懐かしいね…?」
「ふふ、そうだね…。俺には近所だけどね。」
まもちゃんはケラケラ笑ってそう言った。
「でも…」
ふと、視線を落としながら言葉を濁すと…俺を見上げて続けてこう言った。
「北斗と離れてからは…ここに来ることが出来なかった…。どうしても、お前と過ごした日々を思い出してしまって…堪らなくなるから。来れなかったんだ。」
あぁ…
悲しみを思い出す様な、思いつめた様な彼の表情を見つめた俺は、おもむろにケースから、まもちゃんのバイオリンを取り出して…姿勢を美しく正した。
俺は、バイオリンを弾く事が怖くなっていた…
弾く度に…自分を傷つける様な鋭い音色に、怯えていたんだ。
でも…もう、怖くない…
首に挟んだバイオリンをじっと見つめた俺は、右手に持った弓を美しく構えると、目の前のまもちゃんに視線を移した。
そして、頭の中を流れ始める”シシリエンヌ“のピアノの伴奏に合わせて…そっと、弓を弦に乗せて、弾き始めたんだ。
豪ちゃん…
君の元にも…届くと良いな。
これが…俺の、本当の”シシリエンヌ“だよ…
細くて、繊細なメロディの糸を…撫でる様に、手繰り寄せる様に…奏でて行こう…
まもちゃんのバイオリンは、久しぶりの俺を…すんなりと受け入れてくれた。
そして…美しく響く音色を立てて…まるで、俺を奮い立たせる様に、体の奥を響かせたんだ。
あぁ…だから、このバイオリンが好きなんだ…!!
俺の相棒であり…俺の味方であり…いつも、俺の傍で、こうして…励ましてくれていた…
そんなお前に、触れる事が怖くなった俺を…見捨てないでくれて、ありがとう…
まもちゃん…俺を見捨てないでくれて…ありがとう。
涙を落として俺をじっと見つめるまもちゃんを見つめて、俺は胸の中でそう言った。
そして、伏し目がちに視線を落とすと、ピチカートで弾むような音色を付けて、少しだけ口元を緩めて微笑んだ。
良い音色だ…
とっても、良い音色だ…
弓に感じる確かな手ごたえに、俺は体中を震わせながら美しい音色を奏でた。
そして、朝霧の中で彼を待つ…そんな情景と、恋しがる気持ちを込めた”シシリエンヌ”を弾き終えた…
…情緒なんて、意識せずとも…音色に自然と乗るものなんだ。
自分が…音楽を、音を楽しんでいれば…自然と出て来るものなんだ…
音楽を楽しむ為に必要な物…それがあれば、順繰りに巡って…結果的に、良い音色が出せる…
そう言う事なんだ。
「まもちゃん…!!」
俺はずっとそうして来た様に…彼の胸に抱き付いて、頬ずりして…鼻をスンスンさせて言った。
「まもちゃん…あなたを愛してる…!」
「俺も…北斗を愛してる。もう、離れたくない…お願いだ、どこにも行かないで…」
そうだね…
俺も、あなたと離れるのは…もう、こりごりだ…
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「言ってごらん…?」
「…ん、やぁだぁ!」
「なぁんで…」
「…うるっさいのぉ!」
先生は僕の手を離してくれない。
そして、ずっと、ベッドに座って向かい合ったまま…同じ事を聞いて来るんだ。
どうして、僕が…怒っているのか?
僕は、先生の手を自分の腕から外そうと、もがいて噛みついて、散々した。
それでも、先生は…僕の手を離さなかった。
だから…僕は、先生を見つめて…こう言ったんだ。
「先生はぁ…僕と、仲良しじゃないのぉ?!僕が…ギフテッドってやつだからぁ…だから、一緒に住んでるのぉ…?僕と、仲良しだから…優しくしてくれるんじゃなくって…うっうう…!僕が…僕がぁ…!!」
「はぁ…?!」
顔を歪めた先生は…そんな気の抜けたような声を上げて…首を傾げた。だから、僕は…もっと、もっと…怒って言った。
「だからぁ!もし、僕が…バイオリンなんて弾かなくなったらぁ…!先生は僕の事を無視して、ふん!ってして…!知らん顔するんでしょ?!うっうう…うわぁあん!」
「…はぁ…」
先生は相変わらず、ぼんやりと、そう言った…。だから、僕は…もっと、もっと、もっと怒って言った。
「先生は…僕の事なんて、実験動物みたいにしか、思って無いんだぁ…!僕は、馬鹿みたいに…わがままな先生に尽くしてあげてるのに!先生は、僕を使って…実験してるぅ!随時更新なんてさせてやんない!言う通りなんて…してやんないからなっ!」
「あぁ…あれを、見たのか…」
先生は…僕の言葉から原因を特定した様だ…
ぐったりと体から力を抜いて、ため息を吐きながら項垂れた。
だから、僕は先生の頭を引っ叩きながら怒って言ったんだ。
「も、もう!ご飯なんて作ってあげない!もう…お布団も、干してあげない!好きだからしてた事、全部…!もう…してあげない!ばかぁ!ばっかぁん!!」
ギフテッド…そんな呼び方。大嫌いだ…
「豪ちゃん…」
「も、もう…!知らなぁい!出てってぇん…!!」
僕は全身を使って…先生をベッドから立たせて、部屋の入口へと追いやった。そして、立て掛けられた椅子を退かして…追い出した。
全身を使わなくても…先生はすんなり、出て行ってくれた…
でも、僕は肩で息をしながら…全力で追い出した。
「うっうう…せいざぁん…!!」
そして、ひとり…部屋の中、僕はベッドに突っ伏して泣いた。
僕の価値を決めるのは、ギフテッドかどうかだけ。
バイオリンが上手に弾けて、音楽を聴く能力が長けている…
だから、偉い先生に…目を掛けられた。
それが無かったら、僕は…今も、あの村に居たのかな。
そして…みんなが高校に通う中、兄ちゃんのお世話になっている美容室で…一緒に働いていたのかな。
それとも…住み込みで、健康ランドで働いていたのかな。
僕は…どうしようもなくイライラして、髪の毛をワシワシと乱暴にかき混ぜた。そして、悔しくてたまらない胸をそのままに…ベッドに顔を埋めて、大声で泣いた。
惺山…
あなたも、僕がギフテッドじゃなかったら…こんなに、僕を愛してくれなかったの。
僕は他の人と違う。
どうでも良い事ばかり上手に出来て、見なくても良い物が見えて、感じなくても良い物を感じて、察したくない事ばかり察して、傷付かなくても良い事で傷付く。
だから、必死に…装った。
同じ様に出来る様に“普通”を見て真似て、見なくても良い物が見えても黙って、何かを感じても知らない振りをして、何かを察してもトボけて…傷付いても、平気な振りをした。
それは…とても、しんどかった。
惺山が…彼が、そんな僕を助けてくれた。
音楽で、自由にしてくれた。
そう。音楽の中で、僕は…自由になれたんだ。
それだけで良かった…
彼に、聴かせるだけで良かったんだ…
それ以上なんて、僕は、どうでも良いんだ。
ギフテッドなんてカテゴリーも、結局は誰かの主観で決められた物じゃないか…
そんな物…僕は要らない。
要らない…
僕が、ひと先ず考えに着地点を見つけた頃…下の階から、綺麗なピアノの音色が聴こえて来た。
でも、いつもと…音色が違う。
先生じゃない誰かが弾いてるみたいだ…
“幻想即興曲”…
美しい音色だな…でも、惺山の弾いた”幻想即興曲“の方が、僕は好き…
彼のピアノは普通じゃない。
沢山の音色が聴こえる…彼の思いが音色に乗って聴こえる…そんな、不思議なピアノだもの。
だから…大好きなんだ…
コンコン…
「豪ちゃん…?森山君から、お電話だよ…?」
え…
「…惺山…?」
僕は体をムクリと起こして…先生から電話を受け取った。そして、耳に当てて、震える唇で、彼の名前を小さく呟いたんだ。
「…惺山…」
「あぁ…豪ちゃん、どうしたの…?そんなに声を落として…」
電話の向こうの彼は、とても心配そうにそう言った…。
でも、僕は…彼の声を聞いた瞬間から、涙が止まらなくなって…話せなくなってしまった。
だって…とっても久しぶりに、彼の声を聞いたんだ…
遊覧船、五郎丸に乗った次の日…彼は、パリスの卵を持って早朝に家を出た…
僕は気が付いていた。でも…何も言わずに、見送ったんだ。
ピアノの部屋に掃除機をかけていた時…彼の指輪を見つけた。だから、兄ちゃんに…お願いして、彼に電話を掛けて貰ったんだ…
「もしもし…?」
そう言って電話に出た彼の声は…少しだけ不機嫌そうだった。
「…せいざぁん…」
ホロホロと零れてくる涙を乱暴に拭いながら、僕は平気な顔をして…電話の向こうの彼に言った。
「ん…指輪ぁ、見つかったよぉ…?ピアノの部屋に落っこちてたぁ…」
すると、電話口の彼は…何も言わないで、ただ…泣きじゃくる声だけ、僕の耳に聴かせた。
「…ぐすっ…ぐすっ…ご、豪ちゃん…豪ちゃん。」
「…なぁに…?」
鼻を啜りながら、僕は泣き声混じりの彼の声に、耳を傾けた…すると、彼は、クスクス笑ってこう言ったんだ。
「…寂しい…会いたいよ。」
「ばっかぁん!」
両目から涙がボロボロ溢れて来るのに…
僕も、彼に会いたいのに…
僕は、そう言って怒った。
そして、電話を両手で持って…彼に思いが届く様に…必死にこう言ったんだ。
「…お手紙をすれば良いでしょ…?たまに、電話もすれば良いでしょ…?僕だって…僕だって…今すぐにでも、会いたいよぉ…?」
離れたばかりだと言うのに…僕も、彼も、すっかり弱気になっていた…
そんな気持ちを払拭させる様に、僕は…気合を入れて、こう言ったんだ。
「大丈夫…!また、すぐに…会えるよ?そうでしょ…?あなたの体から…モヤモヤが消えた時、また一緒に過ごそうね…?僕は、それまでに…バイオリンをもっと上手になるから…待ってて…。待っててよ…!」
すると、彼は…泣きじゃくって、こう答えた。
「…わ、わ、分かったぁ!」
結局…指輪の話もろくに出来ずに…そのまま、通話を切ったんだ。
そして、彼の指輪を持ったまま…僕は、フランスへ来てしまった…
その日以来、惺山に電話を掛ける事は無かった…
彼からかかって来る事も…無かった。
きっと…余計に寂しくなるって分かったから、お互い…そうしなかったんだ。
そんな彼の声を久しぶりに聴いて…僕は、予想通り…泣き崩れた。
電話を持ったまま泣きじゃくる僕の声に…彼は鼻を啜りながらこう言ったんだ。
「…嫌になっちゃった?」
「ち…ち、ち…ちがぁあうっ!」
「…寂しくなっちゃった?」
「んぁあん!ち…ち、ち…ちがぁうのぉ!」
耳に聴こえて来る惺山の声が…どんどん、悲しそうに、色付いて行くのが分かった。
でも…僕は、泣き止む事が出来なかった。
だから…必死に深呼吸を何度もして、気持ちを抑えようと努力した。
そして…何とか落ち着いてきた頃…目の前で心配そうに僕を伺い見る先生を睨みつけて、こう言ったんだ。
「先生が…大っ嫌いになったぁ…!」
「…そう。じゃあ…もう、帰っておいで…?」
え…
僕は、正直…驚いた。
だって、惺山の声が…突然、厳しくなったから…驚いたんだ。
続けて、彼は淡々と僕にこう言った。
「…豪ちゃん、君は才能のある子だ。だから…木原先生の元に居られる。それは、賢い君なら、理解している筈だよね?遊びに行ってる訳じゃないんだ。仲良く同居生活を楽しんで過ごす為にそこに行ってる訳でもない。君の、計り知れない可能性を、先生が、模索しながら見つけてくれているんだ。その事を…忘れて。“動物実験されている”なんて、そんな風に言うのなら…もう、帰って来なさい。」
先生が…惺山に…チクった…
僕が、手に負えないからって…惺山にチクったぁ!!
でも、先生に怒りは向かなかった…
ただ、惺山の厳しい声色に、眉を下げて…項垂れた。
「…惺山、怒ってるのぉ…?」
僕は、肩を落として…電話の向こうの彼にそう尋ねた。
…帰って来なさいなんて、言うと思わなかったんだ。
怒られるなんて…思ってもみなかったんだ。
「…怒ってはいない。でも、がっかりしてる。」
そんな彼の言葉に、僕は唇を尖らせて…項垂れた。
「聞いたよ。畑を作って貰ったんだって…?大きなキッチンをこさえて貰ったんだって…?でも、聞かせてよ…。豪ちゃんは、何の為に、先生の元へ行ったの?甘やかされて、わがままになって、自分の本来の目的を忘れて、ただただ、無駄に日々を消費してるんじゃないの…?」
本来の…目的…
僕は電話を両手で持ち直して、項垂れたまま、惺山に言った。
「…忘れてなぁい…!」
「だったら…しっかりしろよ。何してんだよ…!」
久しぶりに惺山の声を聴けたというのに…僕は、彼に…怒られた。
甘い時間なんて流れる事もないまま、僕は彼に大きなため息を吐かれた。
だから、おずおずと先生に受話器を返して、そのままベッドにふて寝したんだ。
「…もしもし?いや…それは、甘やかしてるつもりはない。しっかりやる事はやってる。…いや、だから…それは…あぁ、あぁ…そうだけども…いや、我儘なんて言ってないだろ?…えぇ?…あぁ…うん。」
きっと…先生も惺山に怒られてるんだ。
そんな、狼狽えながら話し込む先生の声が、僕の部屋から出て行って…階段を降りて行った…
僕は、窓の外を眺めながら…惺山の怒った理由を頭の中で繰り返した。
本来の目的…
それは、僕がもっと上手にバイオリンを弾ける様になる事。そして、いつか…モヤモヤの無くなった彼と一緒に、あの交響曲のバイオリンを弾く事…
そして、彼の願いを受けて…唯一無二のバイオリニストになる事だ。
なのに、先生に…甘ったれて、わがままを言って…駄々をこねてる僕に、彼はガッカリして、愛想をつかしそうになった…
「はぁ…しっかりしろよ。豪…」
気の合う先生と居ると、僕は、際限なく甘えてしまうのかもしれない。
きちんとしないと…ちゃんとしないと…僕は惺山に、嫌われちゃう。
呆れた様にため息を吐いた彼の声を思い出しながら、僕は、肩を落として、項垂れて、首を横に振った。
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