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#37~#38
#37
まさかだ…
まさかの事態だ…
理久は…てっきり、豪ちゃんが、俺たちと出歩いているものと思っていた…
そして、俺たちは…てっきり、理久が豪ちゃんを家まで迎えに行くものだと思っていた…
蓋を開けてみたら…あの子を連れて来る事を…忘れていたんだ。
そんな事態に、一同が愕然とする中…豪ちゃんは、あろうことか…あの、幸太郎と一緒に、同じ店にやって来ていた。
この前…犯されかけていたよな…?
そんな疑問が頭の中をよぎった俺は、理久を見つめたまま眉を顰めた。
すると、彼は豪ちゃんを自分の膝に座らせて、こう言った。
「…何してるの?」
はぁ…?!
何してるの…?
そんな彼の質問にギョッと顔を歪めた俺は、首を傾げる天使を注視した。
すると、あの子は、悪びれもせずこう言ったんだ。
「…幸太郎が、僕の犬になったんだぁ。だから、夜のお散歩に来たのぉ…」
犬…?!
いいや、そいつは…狼だ!
俺はギョッとした顔をそのままに…今度は理久を見やった。
すると、彼は、顔を歪めながら必死に取り繕って、まるで豪ちゃんを諭す様に…こう言ったんだ。
「豪ちゃん…?先生と、いいや…!ほっくんと、明日でお別れなんだ。今日は…お散歩はやめて。このテーブルで、先生と、いいや。ほっくんと、一緒に夕飯を食べるよね…?」
「…豪は俺と来たんだ。」
そんな幸太郎の言葉を無視して、理久はまん丸の瞳を見つめたまま、ぶりっ子した顔をして…首を傾げた。
すると、豪ちゃんは俺を見つめて、にっこりと笑って…こう言ったんだ。
「僕、ほっくんと、居る~!」
「じゃあ…俺も、ほっくんと居る…」
淡々とそう言った幸太郎は、自分の席に置いたチェロを抱えて…俺たちのテーブルの脇に、置き直した。
こうして…テーブルには、お誕生日席の豪ちゃんから時計回りに、俺…まもちゃん…幸太郎、理久…が着席した。
気まずい…?
気まずいさ。
だって…リミッターの外れた馬鹿の幸太郎と、同席でディナーを食べるなんて、落ち着く訳がないからね…?しかも、理久は、彼にただならぬ怒りを抱いているんだ。
美味しく、ご飯なんて…食べられそうにもない。
「…わ、わぁ…ここは、雰囲気のあるレストランだねえ…?まるで、石造りの豚小屋みたいだ。オオカミがひと吹きしても…飛ばされないぞっ!オオカミなんて、怖くないぞっ!」
まもちゃんが…そう言って、不用意に不発弾を置いた…
目の前の幸太郎は、そんなまもちゃんを見つめてニヤニヤ笑って…理久は冷めた様な瞳で見つめた。
豪ちゃんに至っては、まず、人の話を聞いていない。
俺の手を撫でながら、いつまでもニコニコ笑ってるんだ。
カオスだ…
このテーブルは、カオスだ…
そんな絶望をひた隠しにして澄ました顔を続けていると…ふと、豪ちゃんが言った。
「あぁ~!ほっくん、指輪ぁ!きれいだね?きれいだね?」
さすが、俺のファンだ。
些細な俺の変化に、す~ぐに気が付いたみたいだ…
得意気に左手を掲げて見せた俺は、豪ちゃんに、見せびらかしながらこう言った。
「…貰ったんだぁ…。んふふ。んふふふ!誰にだと思う…?誰から貰ったと思う~?」
すると、あの子は俺の向こう側に座るまもちゃんを覗き見て、ニッコリ笑って、首を傾げながらこう言った。
「…まもるぅ?」
当たりだ…!!
さすが…俺の大ファンなだけある…。洞察力が鋭いんだ。
「はぁ~…、バレちゃった…?バレちゃったよね~?」
俺は、デレデレと鼻の下を伸ばしながらそう言った。なぜか、豪ちゃんは、そんな俺と一緒に、鼻の下を伸ばして…デレデレしながら、もじもじ体を揺らしてこう言った。
「すっごぉい!すっごぉい!」
だろ…?
あの子の羨望の声を耳に聴きながら、俺はまもちゃんを横目に見て、ニヤニヤ笑った…すると、まもちゃんも俺を横目に見つめて…同じ様に、ニヤニヤ笑い返した。
「んふふ、まもちゃぁん!」
「ぐふ、北斗ちゃぁん!」
見つめ合った俺とまもちゃんは、人目も憚らず、軽~く…チュッとキスした。
「…豪ちゃん、先生とも…チュッてする?」
理久は、豪ちゃんに顔を覗かせてそう聞いた。
これだけでも、眉間にしわを寄せる事態さ…でも、このままでは収まらなかった。
あの幸太郎が…あろうことか、理久の肩を叩いてこう言ったんだ。
「あぁ…理久。豪は、さっき、たっくさんキスしたから…もう、しなくても大丈夫だよ。あっはっはっはっは!!」
「店を変えようか…」
注文を済ませたばかりなのに、理久は無表情で席を立った。すると、豪ちゃんが彼の手を握って、こう言ったんだ。
「幸太郎が、家に入って来たんだぁ…!それで、また、エッチな事をされたのぉ…。だから、僕は…包丁で、エイッて、刺してやったんだぁ!」
は…?
豪ちゃんの言葉に…まもちゃんが、俺の膝を…そっと掴んだ。
「へ、へえ…刺したの…」
エキセントリックな内容に驚いて目を丸くした理久は、顔を引きつらせながら、取り繕って…そう言った。
すると、豪ちゃんは、口を尖らせてこう返した…
「うん…でも、全然平気だったんだぁ。だから…いっぱいされちゃったぁ…。でもね?最後の砦は守ったんだよぉ…?」
最後の砦…それはすなわち、そう言う事なんだろう。
「…ねえ、今…刺したって言ってたよね…?」
俺の耳もとで…まもちゃんが震える声でそう聞いて来た。
だから、俺は軽く頷きながら、彼の震える膝を撫でてあげた。
「これ…見て?プツッて…豪にやられた…。血が出た!」
満面の笑顔の幸太郎は、首のケガをまもちゃんに見せて、ケラケラ笑った…
「ヒエッ!」
まもちゃんは、そんな短い悲鳴を上げて…俺の足をむんずと掴んで、怯えた。
狂気だ…
刃物沙汰の事件。
それを笑顔で語る…天使と、馬鹿な犬。
ふたりとも…リミッターが壊れているのか、それとも…同程度の馬鹿なのか…。笑って話すような内容じゃない話を、ケラケラと笑って続けた…
「おちんちん、ぶった切ってやるからな!って言っても…全然止まらないんだよぉ?多分、幸太郎は…お馬鹿さんなんだと思う。」
お前も同じ穴の狢だよ…
そう、思ったのは…多分、俺だけじゃない。
顔をひきつらせたままの理久を見つめて、豪ちゃんはこう続けた。
「ポンポンよりも…ずっと、ずっと…理性の無いワンちゃんなんだぁ。でも、もう、僕の言う事を聞く様になったよぉ…?僕は、幸太郎の…飼い主になったんだぁ…。」
「わんわん!わんわん!」
幸太郎は…豪ちゃんの言葉に嬉しそうに、しっぽを振った。
「…はぁ。そう…」
気の抜けた声で…理久は、そう言うしかなかった。
馬鹿犬の飼い主…それは、もれなく、馬鹿なんだ。
そんな、俺の中の認識を、豪ちゃんは、強めてくれた。
「先生…?見て?」
おもむろにシャツのボタンを外した豪ちゃんは、シャツの襟を開いて、理久に見せながらこう言った。
「…ん、手に持ってた包丁が間違って落っこちて…僕にブスッて刺さったのぉ…。」
「はぁ?!」
慌てた俺は、席を立って、理久が凝視する豪ちゃんの胸元を覗き込んだ。
あの子の胸には、確かに…幾重にも重ねられたガーゼがとめられていた。
俺は、そんなガーゼを指先で剥がして、傷痕を確認した。
長さ、4ミリ程度の傷痕は、まだ赤いけど…血は止まっているみたいだ…
ホッと一安心して、ガーゼを元に戻した。そして、肌触りの良いあの子の肌を指先で撫でながら…こう言ったんだ。
「…その、おっぱい。1回…あとで、揉ませてくれよ。」
すると、あの子は首を傾げてこう答えた。
「良いよぉ?」
良しっ!
「絶対、だからな…」
念を押してそう言った俺は、ガッツポーズを小さくしながら自分の席に戻った。
「なぁんで…こんな、はぁ…怪我しちゃってるじゃないか…はぁ…」
さっき、俺と一緒に確認したんだ。
それなのに、理久は、眼鏡をおでこに掛けて…豪ちゃんの傷痕を、まじまじと確認し続けた。あの子の細い腰を抱き寄せる手に、あの子の素肌を見つめる瞳に、眉を顰めない、大人なんていないだろう…
「…北斗、理久先生は…やっぱり、変態だ…」
まもちゃんがそう言った。だから、俺は彼の膝を撫でてゆっくりと頷いた。
不思議なもんだ…
一時はどうなる事かと心配したこのテーブルは、意外にも、笑い声が絶えない空間となった。
あの幸太郎が、今の所、何の粗相もせずに大人しくしている様子を見ると、天使の制裁が効いたんだと、認めざる負えない。
それを、理久も感じたんだ…
だから、幸太郎の同席を認めた。
「ほっくん?僕の故郷は軽井沢の村なんだぁ…。僕は、湖の傍に住んでたぁ。ぐるっと回った所には”エモい養鶏場“があってね…そこに、江森さんって優しいおじさんが居るんだ。僕は、その人から鶏を貸してもらって…3代まで続く、鶏の群れを作ったんだよ?パリスは…その時、僕が初めて孵化させた…鶏なんだぁ…」
そんな豪ちゃんの話に、俺は、ニッコリと笑ってこう言った。
「…知ってる。森山氏が…この前、フォルテッシモを散歩させに行ったって言ってた。湖の傍か。まもちゃんの店も、湖の傍にあるんだよ。あぁ…だから、豪ちゃんは、俺の”シシリエンヌ“が好きなのかもしれないね。湖の表情を知ってるから、情緒が伝わりやすいんだ。」
すると、あの子は体を揺らして喜んでこう言った。
「せいざぁん!」
…豪ちゃんの恋人…森山惺山。
彼は…豪ちゃんが傍に居ると死んでしまうそうだ。だから、この子と離れて暮らして居て…会いに来る事さえも、憚っている。
交響曲にこの子への思いを込めて…贈った…ロマンチストだ。
「誰なの…?その人…さっきもその人の名前を呼んでたけど…俺はそんな人知らない。」
眉を顰めた幸太郎は、不機嫌そうに口を尖らせてそう言った。すると、豪ちゃんは得意げな顔をしてこう言った。
「僕の…恋人だけどぉ?!」
ぷぷっ!
豪ちゃんのドヤ顔は、可愛かった…
ムリムリと胸を張って得意気な顔をした豪ちゃんは、幸太郎にこう言った。
「僕の惺山は、作曲家なんだぁ!そして…沢山の音色のするピアノを弾いてくれる!そこに、自分の思いを乗せて…僕に、僕に、伝えてくれるんだぁ!素敵だろぉ~?」
すると、幸太郎は首を傾げてこう言った。
「で、その、セイザンは…今、どこに居るの…?」
あちゃ…
嫌な質問に眉を顰めた俺は、横目に豪ちゃんを見つめた。
すると、あの子はにっこりと微笑んでこう答えたんだ。
「えっとぉ…日本の東京の、世田谷区の…三軒茶屋ぁ~!」
俺の実家の…近所じゃねえかっ!!
そんな心の叫びを堪えた俺は、澄ました顔をしながら目の前の料理を口の中に入れた…
「…豪。俺は、そろそろ仕事をする事にするよ。またね…」
そんな言葉と共に席を立った幸太郎は、チェロを片手に持って豪ちゃんの元へと向かった。そして、あの子の頬にキスをして言ったんだ。
「…初めの曲は、豪にあげる。」
「わぁい!」
不思議だな…
この子は、本当に…幸太郎を手懐けた。
…幼い頃からもてはやされて、我儘なまま大人になった…暴君だ。
最近では、理久の様に人材育成なんて言って、自分と同じ境遇の子供に支援していると聞いていた。
でも、結局…幸太郎は、ただの幸太郎でしかない。
指導や、教育なんて、根気のいる作業…出来る訳もない。
…もっぱら、音楽院や音楽に特化した施設に子供を預けて…金銭的な援助をしていると聞いた。
良い意味で自由人、悪い意味で、浮世離れしてる。
そんな彼は、未だに、金持ち層に…熱烈なファンを抱えてる。
オーケストラのソリストで出演すれば…チケットがあっという間に完売する。そんな、金の生る木であり…カリスマなんだ。
それを見せ付けるかの様に…ステージの上に幸太郎が登場すると、店内は空気が揺れる程の拍手で沸いた。
そんな中、頬杖をついて自分の唇を撫でる理久に、豪ちゃんは体を屈めて顔を近付けた。そして、理久の耳に、耳打ちして聞いていたんだ…
「幸太郎は…僕と、似てる…?」
盗み聞きした訳じゃない。俺は…もともと、耳がとっても良いんだ。
だから、こんなプライベートな声色のあの子の声も…そんなあの子に…とっても、優しい声で返す、理久の声も…聴こえてしまうんだ。
「…似てる。でも、違う…。豪には、俺がいるから…」
そう答えた理久の瞳を見つめた豪ちゃんは、いつもの屈託のない笑顔じゃない…微笑を口元に浮かべて、そのまま、理久の肩に頬を乗せてクッタリと甘えた。
どうしてかな…
そんな様子が、幸太郎の弾く“チャルダーシュ”に、ぴったりと合って、天使の豪ちゃんが、一気に妖艶に見えたんだ。
「北斗…?あの人、とっても上手だね…?」
まもちゃんの声に我に帰った俺は、彼を見上げてこう言った。
「幸太郎は…豪ちゃんと同じ、ギフテッドなんだよ。彼のチェロの音色に大枚を払う金持ちがわんさか居る。でも、客寄せパンダと言われない…実力が、確かにあるんだ。」
まもちゃんは、そんな俺の言葉を聴きながら、じっと、瞳の奥を熱く潤ませ始めた。
きっと…この、幸太郎の音色にやられてるんだ…
興奮し始めてる…!!
「あぁ…北斗、お前とずっと一緒に居られるなんて、俺は…なんて幸せ者なんだ…」
うっとりと、瞳を細めてそう言ったまもちゃんは、俺の頬を撫でながら、熱い吐息を口から出して言った。
「可愛すぎて…食べちゃいたいよ…」
音楽って…こう言う効果があるんだ。
聴く人の感情を沈めたり…逆に、興奮させたり…感動させたり…出来る。
それを、情緒を操るなんて表現する人もいれば…共感覚の共有なんて、味気の無い言い方をする人もいる。
俺は、情緒を操る…というか、支配する。という言い方の方がしっくりくる。
自分の音色さえ冴えていれば…情景の中に引きずり込む事だって…出来る。
そう…
豪ちゃんみたいにね…?
あれは、あの子にだけ与えられた特別な物じゃないんだ。
ただ、百発百中出せるかというと…そうでもない。
100回演奏した内の1回でもそんな演奏が出来たら…万々歳なもんだ。
それを…あの子は、壮大で、強烈な情景を叩きつけながらいとも簡単にするんだ。
だから、凄いんだ…
だから、尊いんだ…
だから…恐ろしいんだよ。
「わぁ…幸太郎って、エッチだねぇ…?」
「聴かない方が良いよ…」
絡みつく様な幸太郎の音色に、理久は顔を歪めて…豪ちゃんの耳を塞いだ。
そんな中、すっかり興奮したまもちゃんは、俺の首に顔を埋めてハムハムし始めた。
癪に障るが、きっと、今夜は…激しい夜になる。
だって…俺も、そんな幸太郎の奏でる音色に、うっとりと、色付いてしまったみたいだからね。
--
お店の中だっていうのに…まもるとほっくんは、今にも始まりそうだぁ…
うっとりと見つめ合った二人は、頬ずりするみたいに顔を寄せて…イチャイチャしてる…!!
僕は抱き付いた先生の背中をギュッと掴みながら、ほっくんをじっと見つめた。
綺麗な人は…何をしても綺麗なんだ…
とても、エッチで…僕は…勃起しそうだよぉっ!
「ゴホン…北斗、子供の前だ…」
そんな先生の声に…ほっくんが惚けた瞳で僕を見た…
それが、とっても、綺麗で…僕は思わず言ってしまったんだ。
「ほっくん、僕のおちんちんって、それなりだよぉ…?」
「ブホッ!」
ワインを吹き出した先生は、僕の顔を覗き込んで眉を顰めて言った。
「豪ちゃん…何を言ってるの…止めなさい。」
「先生も知ってるでしょ?僕のイチモツは…それなりだよぉ?」
僕を見て、先生は困った様に眉を下げて…僕の両耳を再び強く塞いだ。
でも…僕は…
目の前のほっくんが、大好き過ぎて…堪らないんだ。
ポンポンみたいに、ほっくんに抱き付いて…腰を振りたい気分だよ…
それくらい…幸太郎のチェロの音色は…とっても、素敵だった。
彼のチェロから紡ぎ出される音色は、低く響いて空気を振動させる。それ以上に…彼自身から放たれる…オーラの様な気迫が音色に乗って…みんなを包み込んで行くんだ。
だからかな…みんな、ポンポンみたいに…発情してる。
きっと、僕もそうなんだ…
だから…ほっくんにキスするまもるを、グーでぶん殴りたくなってくる。
幸太郎は、その後…”愛の挨拶“を弾いて…素敵な曲を他に3曲、弾いた。
僕は、知ってる曲が聴こえる度に、先生の顔を見てにっこり笑った。
先生も、僕を見て…にっこりと笑い返してくれた。
食事を終えた僕たちは、お店を後にして…先生の車へ向かった。
まもると、ほっくんは…今夜は激しくなるかもしれない…
そんな事を考えながら、先生の手を握って彼に聞いた。
「…先生?今日は遅くなる…?」
「…そうだな…もうすぐで終わると思うんだけど…」
僕は知ってる…
先生がこういう時は、大抵…午前様に帰って来るんだ。
つまり…興奮した大人2人と…僕。
そんな構成で…家に居なくちゃいけないんだ。
こんな気まずさ…大ちゃんのお父さんとお母さんのセックスを目撃した時以来だ…!
助手席に座った僕は、後部座席で、始まりそうなまもるとほっくんを見つめながら、口元に手を当てて…あわあわした。
「…なるべく、すぐ帰るよ…」
先生はそう言い残して…僕とさかった大人2人を置いて…車で行ってしまった…
僕は、激しくキスをする2人を見ない様にして、玄関のカギを開いた。
「はぁあ…まもちゃん…!早く!早く来てぇ…!」
ほっくんは、僕のちっぱいを触るって言ったのに…そんな事忘れたみたいに、まもるに興奮しちゃってる…
しょんぼりと背中を丸めた僕は、玄関の鍵を閉めて…階段を駆け上がって行く…大人の笑い声を背中に聞いた。
僕だって…それなりなのに…
ほっくんは、若い肉体より…少し腐ってる体の方が好きみたいだ。
「昔ね…兄ちゃんが、バタリアンって映画見てたんだけど…その中に、タールマンって怪物が出て来てね…言うんだぁ。脳みそくれぇ~!って…。気持ち悪いよねぇ?ねえ、ほっくん?まもるは、タールマンに、少し似てるみたい。」
ベッドに仰向けた裸のほっくんに、僕はそう言って首を傾げた。すると、彼は眉間にしわを寄せてこう言ったんだ。
「…ご、豪ちゃん…向こうに、行ってて…」
僕は、自分の部屋でお布団を直していたんだよ…?そうしたら、聞き耳なんて立ててないのに、ほっくんのエッチな声が壁の向こうから聞こえて来たんだ。
…きっと、ほっくんが誘ってるんだと思って…強引にでも行くべきかなって…思って、彼らの部屋にやって来たんだぁ。
「なぁんでぇ…?僕のちっぱい触るんでしょ…?ほらぁ…」
僕は、ベッドに乗って、ほっくんの中に入ったタールマンのイチモツを顔を歪めて見ながら、シャツを脱いだ。そして、ほっくんに覆い被さって…彼が興味を持った、自分のちっぱいを顔の前に持って行って言ったんだ。
「ほらぁ…見て?僕のおっぱい…可愛い?」
「ぐほっ!」
まもるが嚥下障害を起こしたんだ…だって、僕の後ろで…変な音を立てたもの。
とっても美しいほっくんには、僕みたいな若い男も必要だと思うんだよ…?
だから、僕は…彼の胸に舌を這わせて…素敵な乳首を舌で転がした。
「ほっくん…大好き…」
僕は、うっとりと…そう言った。
そして、そのまま惚けた瞳の美しい彼の口に舌を入れて堪らない甘い舌を吸って絡めた。
「あぁ…豪ちゃん…まもちゃんは、良いのかな…良いのかな…ふたりも相手して、良いのかな…?この行為は、どちらにも、遺恨は残さないかな…?」
そんなまもるの言葉を無視した僕は、ほっくんに頬ずりしながら囁いた。
「ほっくん…僕が、気持ち良くしてあげる…。だから、僕の方に、おいで…?」
「ふふ…!」
ほっくんは、僕を見つめてクスクス笑った。
そして、僕の頬を撫でて、こう言ったんだ…
「豪ちゃん、向こうに行ってなさい…」
僕は、しょんばりと、背中を丸めて座った。
すると、何を思ったのか…まもるが僕のちっぱいをぺろりと舐めたんだ!
バシッ!
僕と、ほっくんに引っ叩かれたまもるは、顔を歪めて面白くない変顔をした。
寒いんだ…
「…ん、も…良いもん…!ほっくんは、若く猛々しい僕よりも、半分死にかけのまもるが好きなんだね!ふんだ!ふんだぁ!」
僕はそう言って、彼らのおっぱじまってる部屋を飛び出して、そのままお風呂に入った。そして、まもるに舐められたちっぱいを綺麗に洗って…気持ちの悪い感触を洗い流した。
部屋着に着替えた僕は、そのまま、先生の書斎へと逃げた。
だって、僕の部屋はゲストルームの隣だから…エッチな声が、ガン聴こえなんだぁ!
枕を抱きしめたまま書斎の椅子に腰かけて…僕は、体を丸めて…眠った。
僕だって…爆イケの男なのに…ほっくんは、目が腐ってる。
#38
信じられない!
豪ちゃんが、俺を誘って来た…!
しかも、超ダイレクトアタックだった…!!
興奮の抑えきれなくなった俺とまもちゃんは、シャワーもそこそこに…部屋に籠って愛し合い始めたんだ。
「あぁ…!北斗ちゃぁん!なぁんて、可愛いんだぁ!!」
まもちゃんは滾った自分のモノを扱きながら、そう言った。だから、俺はベッドに寝転がって…彼を誘う様に腰を動かして言ったんだ。
「まもちゃぁん…!早く、来て!」
ベッドに飛び込んで来たまもちゃんをキャッチして、俺は、彼の大きな背中を両手で抱きしめた。
あぁ…あったかい…大好き…!
前戯は滞りなく行われ…気分が高まったまま…まもちゃんのモノを受け入れた。
その時だった…
唐突に部屋の扉が開いて、いつもの様にフラフラと、豪ちゃんが入って来たんだ。
動きを止めるまもちゃんと同じ様に…俺も一切のエロ神経を止めて、豪ちゃんを注視した。そう、それは、まるで、夫婦の営み中にトイレに起きて来た、子供を見る様な…一気に冷静になる感覚に、きっと、似てるだろう…
すると、あの子は、ベッドに乗りかかりながら、俺の顔を覗き込んでこう言ったんだ。
「ほっくん?僕って…意外と、イケメンで…女の子にモテるんだぁ…」
「へ、へぇ…」
そう言うしかなかった…
まるで、まもちゃんなんて見えない様に、豪ちゃんは俺の顔だけ見つめて話し続けた。
それは…古い、バタリアンなんて映画の話までに至った…
あまりの展開に…俺の中で、まもちゃんがしぼんで行くのが分かって、俺は慌てて豪ちゃんに言ったんだ。
「…ご、豪ちゃん…向こうに、行ってて…」
すると、何を思ったのか…豪ちゃんはベッドに乗ってこう言った。
「なぁんで…?僕のちっぱい触るんでしょ…?ほらぁ…」
そして、自分のシャツを脱いで、細くて、白い体を見せつけて来たんだ。
少しだけ膨らんだ胸を俺の鼻先に付けて腰を揺らしたあの子は、はっきり言って…エロくて、可愛かった。
そんな子が、俺の胸を舐めて乳首を吸って来るんだ…
あぁ…堪んない…!
豪ちゃんの鼻息が肌に触れる度に、ゾクゾクと鳥肌が立って…もっとして欲しくなっちゃう。
そんな時…しぼんだ筈のまもちゃんのモノが、リカバリーを見せた様子に、俺は気が付いた。
何気に彼を見上げた俺は、豪ちゃんの背中を見つめながらデレデレと鼻の下を伸ばすまもちゃんを見つめて…一気に、冷静に、なった。
「ほっくん…大好き…」
豪ちゃんはすっかり我を忘れている…
この子は…俺の事が、大好きな天使なんだ。
そんな乱れた天使の可愛いキスを受け取りながら、俺はあの子のお尻に夢中なまもちゃんを鋭い視線で見つめ続けた。
触ろうっかな…いや、どうしようっかな…
そんな心の声が聞こえて来そうな彼の顔は…最低のどスケベ野郎だった。
「あぁ…豪ちゃん…まもちゃんは、良いのかな…良いのかな…ふたりも相手して、良いのかな…?この行為は、どちらにも、遺恨は残さないかな…?」
言ったな…
俺に夢中な豪ちゃんは、そんな声なんて聞こえないみたいに瞳を潤ませて、熱心にキスを続けて来る。クチュクチュといやらしい音が…あの子の可愛い見た目と合わさって…危うく、理性が吹っ飛んじゃいそうなんだ…
でも、そんな中でも…俺は、一味違うんだ!
両足でまもちゃんを挟んだ俺は、思いきり力を込めて締め付けた。そして、今にも俺の天使にお触りを始めそうな彼を、鋭い目つきでけん制したんだ。
もし、触ったら…ただじゃおかないぞっ!
すると、まもちゃんはヤレヤレと肩をすくめて、両手を上げながら首を横に振った。
やっとキスを外した豪ちゃんは、俺の頬に頬ずりして…甘い吐息を吐きながらこんな言葉を俺に囁いた。
「ほっくん…僕が、気持ち良くしてあげる…。だから、僕の方に、おいで…?」
…エロ天使の、天国へのお誘いだ…!
「ふふ…!」
俺は思わず笑って、豪ちゃんを見つめてこう言った。
「豪ちゃん、向こうに行ってなさい…」
大人は、そう選択するさ。
可愛いけど…堪らないけど…初めてのセックスで3Pなんて、ハードだ。
俺は、ゆっくりと楽しみたいな…
何より、まもちゃんがいるのは…嫌だ。
すると、何を思ったのか…まもちゃんが豪ちゃんのちっぱいをぺろりと舐めたんだ!
バシッ!
思わず彼を引っ叩いた時、凄い剣幕でまもちゃんを引っ叩いた豪ちゃんを見て、気が付いてしまった…
この子は、俺に抱かれたいんじゃなくて…俺を、抱こうとしてたんだ。ってね。
「…ん、も…良いもん…!ほっくんは、若く猛々しい僕よりも、半分死にかけのまもるが好きなんだね!ふんだ!ふんだぁ!」
豪ちゃんはそう言って…部屋を飛び出して行った…
残された俺は、自分が、あんなに可愛い子に…そんな風に見られていた事実に、妙に興奮して来て、まもちゃんを見上げて言った。
「豪ちゃんは、俺を、抱きたかったみたいだ!あ~はっはっは!」
「知らないよっ!」
あり得ないよ…豪ちゃん。
だって、俺だって…お前が欲しいもの。
「はぁ…豪ちゃんは、イケイケドンドンだな!」
ヤレヤレ…と、首を横に振りながらまもちゃんがそう言った…
--
「はぁ…こんな所で寝て…そんなに乱痴気騒ぎだったのか…」
そんな、お疲れの先生の声が聞こえて、僕は体を持ち上げられた…
「先生…?」
「ん…?」
「僕って…魅力無し男なのかなぁ…」
「豪ちゃんは、魅力が具現化した存在だろ…」
傷心の僕をベッドに置いた先生は、そのままシャワーを浴びにお風呂へ行ってしまった。
クッタリとベッドにうつ伏せに寝転がった僕は、そのまま瞳を閉じて眠った。
耳に聴こえるのは、先生のいがらっぽい咳払いと…シャワーが流れる音。
手に触れるシーツを撫でながら、窓から差し込む月明りをぼんやりと眺めて…ここが先生のベッドの上だって、分かった。
お風呂から出た先生が、部屋に戻って来て、ぼんやりと空を眺める僕の顔を覗き込んだ。
「寝てる…?」
「寝てるぅ…」
先生の問いにそう答えた僕は、隣に寝転がる先生のお腹に手を置いて、しがみ付く様に抱き付いた。
すると、先生は…僕に覆い被さって言ったんだ。
「…幸太郎に、何されちゃったの…」
顔にかかる先生の声があったかくて、僕は彼を見つめたまま…こう言ったんだ。
「…お口と、手で、抜かれたぁ…」
「もう…駄目だよ…?他の誰にも、触らせないで…」
先生はそう言って僕を抱きしめて…熱いキスをした。
何度も髪を撫でられて、何度もキスをされて、このまま…抱いて欲しくなるくらい、優しく包み込まれた僕は、彼の腕の中で…うっとりと言った…
「はぁい…」
僕は、先生が…大好き。
彼といると、安心するんだ。
先生の呼吸音を聞きながら…僕はクッタリと彼の体に埋もれて、抱きしめられながら眠りに落ちた。
「コッコッココココ…」
カツ…カツカツカツ……
パリスが、僕を起こしに来た…
彼女は、毎朝、僕の部屋のドアを突いて僕を起こすんだ。
重たい瞼を開いた僕は、脱力して眠る先生の腕を退かして、ベッドから出た。
「…パリス、こっちだよぉ…」
目を擦りながら先生の部屋から出た僕は、パリスと一緒に階段を降りた。
そして、待ち構えるポンポンにハーネスを付けて…朝の散歩へと出かけた。
もうすぐ、8月。
フランスには猛暑日なんて、あるのかな…
「ふふっ!凄い…!」
僕はポンポンの周りをチョロチョロと動き回るパリスを見て、クスクス笑った。
だって、パリスは、ポンポンの背中に上に乗りたがってるんだ。
ポンポンは、赤カブトは倒せないけど…犬であり、タフだから、どこまでだって…君を連れて行ってくれそうだ。
「サリュ!ミミ…」
ゴードンさんは、朝のマラソンをしながら、僕に手を振ってくれた。
「サリュ~!ゴードンさん!」
こんな毎日を…あと、何回過ごしたら…あなたの体の周りのモヤモヤは無くなるかな…?
僕は…それまで、あなたを愛し続けられるでしょ…?
お願いだよ。
そうだって…言ってよ…
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