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変わりない日々に/寒凪⑴

12月10日。木曜日。俺を嘲るかのように、雲ひとつない晴天。 変わらず近くで天気の話をしている輩は、俺の名前で遊んでいる。 はいはい。どうせ俺は淀んでますよ。 そもそも、そういった話は俺じゃなく親に物申してほしい。 俺だって思うさ。こんな自分に澄んだ晴れ空なんか似合わないって。 忙しなくキーボードを叩きつける俺の横でインターネットを見てるお前。 これ、お前の仕事だろうが。 俺に押し付けた時、なんて言ったか知ってるか。 “忙しいから代わりに頼まれてくれ”だぞ。 お前の旅行サイト巡りがこの世界でどれだけ重んじられているのか俺には知る由もないが 控えめに言って『ふざけんな』 言葉を選ばずに言うと『ブッ殺すぞ』だ。 温泉旅行だか何だか知らんが、そういうのは見えないところでやってくれ。 苛立って仕方ない。 鳴り響く電話のコール音に目を向ければ、それは明らかに隣のクソッタレが担当している会社からだ。 2コールは気付かぬふりをしてみたものの、一向に受話器を取る気配のない素振りに落胆し、手を伸ばす。 「お世話になっております。MS商事です」 『あぁどうも。午前中に問い合わせた件なんだけどまだかな?調べて折り返すって言われたまま返事が無かったから…』 「たっ…大変申し訳ございません! 担当が…その、今少し立て込んでおりまして…。代わりにお調べ致します!」 『頼んだよ。それじゃ』 本気で勘弁してくれよな。 熱海や草津に答えが眠っているとでも思っているのだろうか。 「あ、あの…今お得意さんから…」 「あー、忘れてた!頼むわ澄晴!」 「……はぁ」 21時までに会社を出られたら自分を褒めてあげようと心に誓った瞬間だ。 ──就業時刻間際のゴミ集め。 確か各部署ごとの当番制だったはずだが、毎日俺が集めているように思うのは気のせいだろうか。 いつの間にゴミ担当になっていたのだろうか。 …ま、全て仕方ないで片付ける俺がいけないんだ。わかっている。 一度受け入れてしまったのだから、最後まで責任を取らされるんだろう。 もう諦めているからいいさ。 「おっしゃー!明日は休みだー3連休だー!」 「そうか創立記念だ!予定入れたか?」 「おう。ちょっくら彼女と草津にな」 「へぇ〜。羨ましいぜ!」 そうか草津に決定したか。 頼むから向かう途中でタイヤがバーストしてレッカーに運ばれて1日くらい潰れてくれよ。 じゃあな。 一人、また一人と事務所を出ていく中、一向に終わる気配のない山積みの書類が吹き飛ぶほどのため息が零れた。

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