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再会の日に/嘘⑴
世界で一番見られたく無かった場面を
世界で一番見られたく無い人物に見られた。
少し気が緩んでいたと思う。
いくら俺の性が明るみになったとて、流石に制服を着た勤務中の警官が襲ってくることはないと。
だが、周りの目など気にしないで済むほどに
Ωの味方は誰も居ないのだと気付かされれば、恐怖よりも悔しさが先立って頬を濡らした。
故に、あの場を抜け出せた事に対する喜びよりも、汚い身体が綾木に支えられているその申し訳なさの方が、ずっとずっと大きかった。
大袈裟なまでに速まる心拍、痛ましい唇。
綾木の醸し出す全てが、俺をどん底まで落とし込む。
「…も、少しなんで……。すいませ、
匂い、やっぱ…強くて…っ。」
謝るのは俺の方だ。
悪い。
…悪い、綾木。
この身体を、毎日毎日憎たらしいと思ってきたが、ここまで嫌になるのは初めてだ。
すぐ傍に感じる体温と息遣いが。
密着してわかる、俺よりも力強くて締まった身体付きが。
どうしようもなく、欲しくて堪らなくて
薬の効き目などそっちのけで、αを匂いで誘う。
醜くてみっともない。
心以上に綾木を求めるΩの香り。
αとΩの強制的に結びつけられる繋がり。
獣的な欲求。
まともな恋愛すら許してもらえないなんて
反吐が出そうだ。
「…はぁッ。待ってください、今…鍵を……。」
あまり身長も変わらない男の体重を支えて疲弊したのかと思えば、
綾木の下半身へ視線を移して驚愕した。
スラックスをめいっぱい押し上げるそれは、言い逃れできないまでに欲の主張を露わにしている。
綾木が…俺で、興奮してる……っ。
骨の髄をも痺れさす熱が全身を駆け巡り、下着にも湿り気を感じる始末。
胸焼けしそうな甘い空気が辺りに立ち込めている事は自分でもわかった。
綾木の唇は、より一層強く噛み締められる。
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