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再会の日に/嘘⑵

どうして、我慢するんだよ。 噛みたいんだろう。 犯して、侵して、早く解放されればいいのに。 早く、快楽だけを求めて俺を襲えば良いのに。 見るに耐えない痩せ我慢が、また俺の胸をジクリと痛ませた。 そんなに、嫌か? まるで腹を減らした猛獣のような目をしておいて、全身でΩを欲しておいて。 ガタガタ震えて、手の甲に爪を立てて それでも俺に襲いかかってこようとはしないなんて。 …俺はそんなに、綾木さんの中で魅力的ではありませんか? 「綾木さん…コレ、下さいよ」 「ッ、だめ…です……」 何故拒むんだ。 初めて触れた綾木の昂りは、布越しにも関わらずドクドクと脈打つ様がよくわかる。 大きくて、熱くて、…凄く、硬い。 綾木の返事を無視してバックルに手をかければ、くっきりと爪を食い込ませた痕の残るそれに阻まれた。 「ま…、待ってください! いけませ…薬なら、お渡し…します、からッ」 薬…?馬鹿馬鹿しい。 そんなものが今更効くわけ無いだろ。 目の前にαが…綾木というこの世で最も愛おしい存在がいて 抑えられるはずがない。 例え身体が抑制されたとて、理性は既に粉々に砕け散っているのだから。 「さっきの…見たでしょう。 上書きしてくださいよ。…頼みますよ」 薄い絨毯を1枚引かれただけのフローリングに押し倒せば、綾木は一瞬顔を歪めた。 けれどそれ以上抵抗してくる事は無い。 俺はつくづく最低な人間だ。 こんなにも、綾木に想いを寄せておきながら 辿り着いた結論は“利用”。 どうせ届く事のない、叶う事のない恋心ならば いっそ綺麗さっぱり…後腐れも無くなるくらい嫌われた方がいい。 脱力した手を退け、下着の中ではち切れそうに膨らむそれを直に揉んだ。 ビクリと反応を示した綾木に匂いを移すかのように寄り添って、強く噛み付けられて切れたらしい 口元を汚す鉄味を舐める。 あぁ、本当に Ωの自分なんか大嫌いだ。

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