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その発言に驚き、踞 るハラちゃんの事を見下ろした。
するとハラちゃんは立ち上がり、バッと両手の平を合わせ、謝罪の言葉を口にした。
「すまん、陸斗!
それ全部、俺のせいだ!」
彼に聞いた、事の顛末はこうだ。
秘書の二見さんは、俺達の関係にあまりにも進展がないせいで、西園寺さんが寝不足と過労のためそのうち倒れるのではないかとずっと心配をしていたらしい。
そして心配するあまり、西園寺さんが体調を崩すより先に、繊細な二見さんの胃にストレスで潰瘍が出来た。
幸い薬でどうにかなる程度の軽症だったみたいだが、そう言えば数日彼を見ない日があったかもしれない。
そこでこれはどうにかせねばならんと考えたハラちゃんが、例の余計な作戦を二見さんに授けたのだ。
普段の二見さんならあんな阿呆な計画を受け入れたりはしなかっただろうから、相当あの人も参っていたという事だろう。
……そのせいで詳細を知らなかったであろう西園寺さんは僕に責められて、あんな風に困惑したような、悲しそうな顔をしたんだ。
考えてみたら西園寺さんはこれまで、僕の家庭の懐事情にダイレクトに首を突っ込むような真似をした事は一度も無かった。
今日は無駄にゴマ団子を五十人前も買うなどという暴挙に出ようとしたけれど、それに関しては僕に直接金が入るワケじゃないから、彼的には恐らくセーフだったという事なのだろう。
そのマイルールも、いまいちよく分からないが。
「どうしよう。僕、西園寺さんに、酷い事を……」
完全に彼が黒幕だと思い込んでいたから、傷付いたような表情を前にしても僕は罵り続けた。
そして一方的に会話を終了させ、強引に追い返してしまった。
真相を、確認すらしないまま。
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