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「へ……?」
自然と漏れ出た、まぬけな声。
真っ直ぐ自分に向けられた視線に戸惑い、思わず目をそらした。
だけど西園寺さんは僕の顎先に手をやり、少し強引に視線を合わさせた。
だからそれに動揺しながらも、居たたまれなくなり、反射的にまたしてもぎゅっと目を閉じてしまった。
すると西園寺さんはククッと可笑しそうに笑い、ようやく僕を抱き締める腕の力を緩めてくれた。
「じゃーん!オセロを、持ってきたんだ。
好きだって陸斗くん、この前話してたよね?」
まるで手品みたいに鮮やかに、大きな紙箱を何処からともなく取り出し、満面の笑みで言われた。
なんだよ、それ。
……めちゃくちゃ、焦ったじゃないか。
平静を装いつつ虚勢を張り、ニヤリと笑って答えた。
「あぁ……よく覚えてましたね、そんな事。
好きだし、得意ですよ。
でもただやるだけだとつまらないので、なんか賭けましょうか?」
せっかく危機的状況を脱したというのに、調子に乗って余計な事を言った、僕の馬鹿。
……この時の自分の事を、本気で殴ってやりたい。
***
「はい、また俺の勝ち!
罰ゲーム……今度は何を、して貰おうかな?」
堪えられないとでも言うように、僕に背を向け、クスクスと笑う西園寺さん。
「くっ……!こんなはずじゃ、無かったのに」
まるでひと昔前のラノベの悪役みたいな言葉を口にして、屈辱にうち震える敗者の僕。
「アハハ!言ってなかったっけ?
俺もこういったゲームは、子供の頃から得意だったからね」
よしよしと子供にするみたいに、優しく頭を撫でられた。
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