36 / 111

36

 僕だって本当は、気付いていた。  だけどあちこちにキスをされただけでこんな風(・・・・)になってしまっただなんて、西園寺さんには絶対にばれたく無かったから、気付かないふりをしていたんだ。  なのに本当に、この男だけは!!  ふるふると震えながら顔だけを後ろを向け、ギロリと睨み付けた。  だけど彼は妖艶にフッと小さく笑い、僕の唇に優しく口付けた。 「可愛いなぁ、陸斗くんは。  俺が相手だと、こんなにグズグズになっちゃうとか……」  抵抗したいのに、力が入らない。  その隙に彼の手は、僕の履いているジーンズのボタンを外し、ファスナーを下ろした。 「止めて下さい、西園寺さん。  別にあなたにされているせいじゃ、ないですよ。  ……こんなのただの、生理現象です」  無理矢理言葉を絞り出し、プイと顔をそらした。  なのに何故か彼はますます興奮してしまい、クスクスと楽しそうに笑った。 「そうなの?残念だなぁ。  ……なら陸斗くんは誰にされてもこんな風になっちゃう、悪い子って事になるね」  違う、そんなはずはない。  だけどもし西園寺さんにされているからだ、だなんて認めたら……。  たぶんこれはどう答えても彼にとってはプラスとなる、悪魔の二択だ。  だけどこの人に淫乱みたいに言われるのも、悪い子なんて言われるのも嫌だったから、泣きながらふるふると左右に首を振った。 「あれ?違うの?  ならやっぱり、陸斗くんも俺の事が、大好きなんだね?……嬉しいよ」  満足そうに、西園寺さんが笑う。  それにやっぱり答えられないでいたら、彼は今度は優しい声色で囁いた。 「ごめんね、陸斗くん。  あまりにも君が可愛いから、つい意地悪をしちゃった」

ともだちにシェアしよう!