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 首筋に這わされた、舌先。  だけどそんなの、絶対嫌に決まってる。  だってこんな事になるだなんて思わなかったから、今日はバイトから帰った後も、シャワーを浴びたりしてはいなかったのだから。  あれ?いや、待て。落ち着け、僕。  西園寺さんが来るからって、前もってシャワーを浴びておくとか。  それはそれで、おかしいだろ。  ……脳が完全に、毒されている。  でも彼のいうようにきっと汗だってたくさんかいているし、厨房にも入ったから揚げ物の臭いだってしているかもしれない。 「……お風呂場の方が、まだいいです」  そう……後から考えたらどう考えてもおかしな二択だったというのに、初めての経験に動揺し、完全にパニック状態にあったため僕は恐らく彼が望んでいた方の選択肢を、無意識のうちに選ばされていたのだ。    実質二択などではなく、いわゆるダブルバインド効果ってヤツ。  物腰は柔らかいし、口調も優しいけれどこの男、全く油断ならない。  西園寺さんは、やっぱりズルい。  ……そして大人って、汚い。   ***    上手く口車に乗せられてしまったけれど、やはり諸々納得がいかない。  グズグズとまたしても泣きそうになりながら彼の手を引き、風呂場へと誘導した。  まぁでもそもそもの話、この人は僕のストーカーなのだから、家にあげるべきでは無かったのだが。  そんな事を考えていたら、まるで舞台の早着替えかっていうくらい手際よく全裸に剥かれた。  そしてあれよと言う間に彼も着ていたスーツを脱ぎ捨て、お姫様だっこをされて浴室へ。 「本当に色が白いね、陸斗くんは。  肌もすべすべだし、まさに神様が気紛れに作った、美の最高傑さく……」  風呂場に着くと下ろされ、床に足を付けさせて貰えたから、最後まで彼が大袈裟な称賛の言葉を言い終わるのを待たずに遮った。 「うるさいです、西園寺さん。  ‥‥‥あなた本当に、気持ちが悪いんですよ」  彼の頬に手を伸ばし、背伸びをしてキスで唇を塞いだ。

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